新紙幣:紙幣改札についての思い出など | 断酒てへ日常

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 7月3日に新しい紙幣が流通し始めました。日本銀行の方針として20年ごとに改刷、されています。

 この紙幣が変更される時には、色々と準備が必要なのです。ATMとか自動販売機とか、最近ではスーパーなどの無人精算機など、紙幣を分別しはたまた紙幣以外(偽札)を排除するための鑑札機能が付いた機械が多いです。その機械にあらかじめ新紙幣を含めた特徴データを仕込む必要があります。

 

 40年前の改札の時私は自動販売機の開発をしていて、その改刷のための仕事をしたことがあったのです。日本銀行はあらかじめ、その業界:ATMのメーカー、自動販売機のメーカーに新紙幣のサンプルを見せてくれるのです。これは確か「見本券閲覧」と言ったと思います。閲覧と言っても、ただしげしげとこれが新紙幣かと眺めるわけもなく、数百枚の見本券を機械に通して、センサーが感知した紙幣のデータパターンを記録し、パターンの真偽判定閾値を決めるのです。

 このため各社自分のところの機械を会場に運び込み、読み込む準備をします。各社が入場した時点で会場の出入りを禁じて、それから各社に見本券を配ります。それから缶詰めになった各社は見本券のデータをひたすら取ります。昼食も運び込まれた弁当を食べます。そして夕方になると、作業終了の指示が出て、各社は日銀係員に見本券を返却します。そして全社の見本券が回収されたことを確認して、缶詰めになっていた関係者は各員は解放されるのです。

 これを何日も繰り返します。現場の閉そく感もあって、かなり辛い仕事でした。ただその時は、私自身下請けの業者にデータ取りをやらさせるだけで、仕事としては朝夕の見本券の受け渡ししかやらなかったのです。

 そしてさらに、何か所かある紙幣印刷工場それぞれでの見本ができると、その違いも検査対象となります。それが3回ぐらい繰り返された後、ようやく各社は自社製品にそのデータを組み込み、新紙幣が発行になるのでした。

 

 見本とはいえ(見本券は本来シリアル番号が印刷されるところが”みほんみほんみほんみほん”となっています)本物の紙幣ですから、そのセキュリティ管理は大変なものでした。

 改刷ではなかったのですが、また紙幣に関連した仕事をしたことがあります。先にいくつか紙幣の印刷工場があると書きましたが、その一つに印刷装置を納入した会社に勤めていて、そのオーバーホールに駆り出されたのです。行ってみると幅2メートルほどの紙のロールがあります(日本の紙幣固有の和紙のロールです)。そこから流れ出した紙が続々と表面に印刷されていき流れの先の方では切断・裁断されて、紙幣になっていくようです。ロールから紙がほどきだされるところの高速の紙の流れ制御にかかわる修正だったようで、私には何をやったかわからないままにオーバーホールは終わりました。ただ大きな紙のロールが高速で流れていって、印刷されていくのは圧巻でした。それが紙幣になると思えばことさらです。

 機械のちょっと先の方を覗こうとしたら、係員にそっちに入ってはいけないと制止されたのも当然でしょう。

 

 普段およそ縁のないことを見聞きできたのは、素晴らしい経験ではありました。しかし、そこで新しい技術的知見を得たかと言うと何もなかったのです。これは私の技術者としての技量が酒で、ぼけつつあった結果だったように思います。


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