デザイン経営者フォーラム3 モンベル
こんばんは。本日3度目の更新です。
少し他のテーマで間があきましたが、先日の神戸市主催のデザイン経営者フォーラムで興味深かったモンベルの辰野勇会長のお話をします。
実は恥ずかしながらぼくはこれまでモンベルって欧米のアウトドアブランドだと思っていたのですが、日本で創業されたんですね。
辰野会長は、少年時代、登山家ハインリッヒ・ハラーがアルプスのアイガー北壁を登頂した冒険記『白い蜘蛛』に感銘を受け、登山にのめりこみ、21歳で当時日本で登頂を成功した者はいなかったアイガー北壁の登頂と、28歳で起業するという目標をもっていたそうです。
そして目標通り21歳で、アイガー北壁登頂を果たします。
その後も数々の困難な登山をしていくのですが、仲間が相次いで山で事故死したことで、山よりも安全なカヌーを始めます。
とは言え、カヌーも途中十数メートルの滝をいくつも落下する黒部川の源流から日本海までの川下りなどは、危険なスポーツであることは変わりません。
そしてやはり目標どおり28歳で、大阪にモンベルを設立します。
登山スクールや登山ショップなど、登山愛好家の若者が考えがちな仕事も考えたそうですが、一時期勤めた繊維商社で宇宙服や消防隊が使うケプラーなどの新素材を知り、それで登山服や登山具を作れば、より安全な登山ができると考えたのです。
最初は従業員ゼロ、ミシン一台からのスタート、
その後信頼できる仲間が加わり、何とかこの仲間が定年するまでの30年は会社を存続させたい、
そのためには、今の仲間だけで固定して年々熟年化していくわけにもいかないので、定期的に若い従業員を入れなければならない、
と、仲間の定年までの雇用を前提条件にして事業計画を考え、当時の登山市場が500億円ぐらいだったので、そのうち20%のシェアをとるという皮算用で30年後に100億円の会社にすると考えたそうです。
その成長プロセスで、最初は登山具の卸商に販売していたのを、中抜きして小売商に販売するようにし、直営店を出して小売を行なうという具合に業態変化していきました。
特に直営1号店となった大阪店はそれまで得意先だった石井スポーツの真横でした。
ここで辰野会長は会場に「それまで世話になったところを抜いていって、ぼくのことをさぞかし義理人情に欠けるやつと思っておられるでしょう」と投げかけて、持論を話されました。
それを簡単にいうと、義理というのは実際にはギブ&テイクになのに、権力をもっている側が支配されている側に対して裏切られないようにするために強調しているものであり、ギブ&テイクを超えた結びつきが人情なんだと。それが義理人情と1つの言葉になってあいまいにしている。だから、辰野会長は一緒に働く仲間への人情を利害で結びついた販売先より優先するということです。
実際、モンベルが直営店を出す以前は、登山ショップは入り口が狭い「素人お断り」のマニア用ショップばかりだったのですが、モンベルは誰もが入りやすい店作りをした先駆けで、そうした成果で、登山市場そのものが大きくなっていきました。
と、これがモンベルの起業~成長のプロセスなのですが、辰野会長はエネルギッシュにホンネを語る、まさにスポーツマンが経営者になったような魅力的な方でした。
これからはアウトドア用品を買うときはモンベルを第一候補にさせていただきます。
さて、肝心のモンベルのデザインですが、以下の2つのテーマをもっているそうです。
”Fanction is beauty.”
登山では装飾は不要で、機能の追求にこそ美がある
”Light & Fast”
命と向き合うこともある時に、必要なのは軽快で素早い行動がとれること
それと「モンベルクラブ」という年会費1500円の会員システムの中でさまざまな社会貢献を行なっていてこれもいい話なのですが、長くなりそうなので、それはまた別の機会にいたします。
この話の中でいいなと思ったのは、従業員を起点に事業が考えていることです。
このところ、アメリカ型の悪いスタイルが浸透して、従業員=コストという考え方が蔓延している中、創業時の仲間の生涯から事業を考えたことを、公の席で堂々と話すのはとても魅力的に感じました。
