【社会】 (追記あり) 『疾風の勇人』 ~ 必読!占領からの独立・交渉過程 | 2025 中学受験に向けて

2025 中学受験に向けて

2024年1月現在・小学5年生の娘の中学受験までの学習、活動などを綴っていきたいと思います。SAPIX には新2年生から通塾中。

池田勇人が主役の漫画、

疾風の勇人」を読んでみました。




こちらも「角栄に花束を」同様、

超絶面白かった・・・。

昨日、今朝で1−7巻一気読みです・・。

コンんはずでは・・


戦前、戦時中、戦後の昭和の流れを理解しながら政治の動きを見ていけるという点では「角栄に花束を」がおすすめです。

最初にそちらを読んでもいいでしょう。


一方、GHQの占領下における国づくりは、幕末、明治維新などに並ぶ新たな国づくりとしての熱さがあります。

その中心となっていた池田勇人視点の、インフレからの経済立て直し、独立を果たすまでの交渉物語も、日本人必読、胸熱です・・‼️



社会の教科書では、1951年サンフランシスコ講和会議で吉田茂がサインし、アメリカの占領が終了、日本は国際社会に復帰、という1行程度で片付けられる内容です。

しかし、そんな単純な話ではありません。


大蔵省の官僚だった池田勇人が政治に関わるきっかけとなったのは、将来の吉田政権の中核を担う人材が求められたから。

公職追放された鳩山一郎のピンチヒッターとして、仕方なく党代表を請け負った吉田茂の一次政権では実務遂行を担う人材が欠けていました。

その反省を生かし、その後の芦田内閣の頃に実務に強い官僚出身の池田勇人、佐藤栄作に白羽の矢が立てられます。

彼らは吉田学校に入り、政権交代に向けた準備をして、その後の吉田茂政権を支える基盤が整えられ、政権交代につなげていきます。


占領下の経済政策では、ジョゼフ・ドッジの厳しい要求を池田勇人が元官僚の強みを発揮して粛々と実行していきます。

厳しい歳出カット、国民からの税金の徴収を行い、インフレを収束させていく・・・。

赤字会社を立て直す厳しい経理、財布の硬いお母さんそのもの。

一切の妥協を許さないドッジ爺さんのとのハードな交渉。

対して、税収を減らさずに税率を下げて国民の士気を少しでも高めようと奮闘する池田。

税務出身で、財務畑に身を投じた数字のプロだからこそ為せる、銀行の親分(ドッジ)とのロジカルで知性的なバトルが面白く描かれます。


戦車を動かすために必要な石油の量、費用を算出から現実的に日本が配備可能な戦力を見極めるなど・・・、経済、数字に通じ、ロジカルな会話ができる池田だからこそ務まる役割。

朝鮮戦争遂行可能なアメリカの限界を見極めるコメントも出ていますが・・・、こういう軍師、戦略家を軽視するトンチンカンが組織を滅亡に導くのだと思います。

(精神論に走る軍人など)

数値目標から政策を具体化し、国を建て直すために実行していくこと、緻密な計算で実現可能性を見極める視点などは、寝技で政局を動かすだけの政治家にはできません。



サンフランシスコ講和会議に先立つ独立交渉の下地作りでは、

国防総省(United States Department of Defense、The pentagon)

国務省(United States Department of State)との交渉も行います。


ソ連に対する防衛ラインとしての日本の軍備を譲れない国防総省。

当時は朝鮮戦争が勃発して間も無く、日本に駐在していた主力が投入されようとしていたタイミング。

日本からの撤退はスターリンの前に無防備な餌を差し出すようなものだ(*)と言って、独立に対しては非常に後ろ向きでした。

世界戦略、対ソ連戦略、地政学的視点でどうすべきかということがよくわかります。

反GHQ、反軍備(or再軍備)など、内向き視点ではわからないものの見方が垣間みえます。


*終戦の宣言を出した直後ソ連は北海道への侵攻を開始しています。

占守島(しゅむしゅとう)の戦いで時間稼ぎをし、南下、北海道への上陸を防いでいますが、あそこで防衛できていなかったら・・、今頃は北海道までロシア領土で、どこかが不凍港になっていたのではないでしょうか。 

当時は今ほど平和ボケしていない時代だったと思いますから、その危機はあったと思いますが・・・。わずか数年前に終戦後の日本はソ連に侵攻され、実効支配されたことで北方領土が奪われています。



一方で、国務省。

費用面でこれ以上の統治負担を看過できない、さっさと日本に返済させるべきだから早期講和すべきというスタンス。

同じ国にして見ている世界が全然違うが、どちらも正しい。


これに対する秘策が、吉田茂からの提案。

日本は独立を果たす。そして、日本からの・・・・」であり、これがその後の安全保障条約につながる提案でした。

こういった交渉カードを出せるのは、ステークホルダー全体の強み・弱みや望むものを見極める視野、戦略脳、構想力ですね。



幕末・明治時代と、GHQ占領下における日本は、有事における外交ゼロからの戦略的な国づくりなど、共通するものがあると思います。


そういう目線を持って2つの時代を比較してみるのも良いでしょう。


池田勇人は税務署、大蔵省での経験がいきました。

官僚、公務員ってなんなの?政治家との違いって何?

という疑問については、立法、行政の仕組みを説明する良い機会にもなると思います。




【追記】

全権委員に囲まれ、吉田茂が条約に署名する有名なシーンは漫画でも描かれています。

しかし、この場面がどれだけ感動的なものだったかは、この漫画でここに至るまでのドラマを知って初めて理解できましたおねがい

このクライマックスと、その後の池田、白洲次郎の涙には強い感動を覚えました😭

アメリカ、東南アジア、アフリカの各国が独立を果たした時の達成感と、日本が占領を終わらせた達成感は同じようなものだったのでしょう。


↑こちらはwikipedia 掲載写真


署名の重さ、歴史的意義を感じます・・・。

時の日銀総裁 一万田、野党代表も全権委員として参加していますが、歴史に名を残す名誉ですね。


https://www.mofa.go.jp/mofaj/annai/honsho/shiryo/archive.html


移転で今は外務省の展示室も公開されていないようですが、原本もいつか見てみたいものです。












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