アカデミー賞、『ANORA アノーラ』が作品賞を含む5部門受賞でした。
いや、昨日ちょうど映画観たばっかりだったので、なんだか親近感を感じました。
『ANORA アノーラ』6部門ノミネートでの5部門受賞ですから、ほぼ全勝です。
唯一逃したのは助演男優賞部門。
対象はロシア人のボディガードのイゴール役を演じるロシア人俳優ユーリー・ボリソフ。
なんでボディガードの地味な役の彼が助演男優なんだろう?と映画を観る前なら盛大なネタバレとなるノミネートであるのだが、その映画でのたたずまいと同じく、アノーラが作品賞受賞を受けてその関係者が壇上に上がる中、ほぼ最後尾で壇上に上り、ひっそりとステージにたたずんでいる彼は映画のイゴールそのものでとてもチャーミングでした。対照的に途中までは助演男優賞級の存在だったあの金持ちのボンボン役のマーク・エイデルシュテインが壇上でちゃっかりめっちゃうれしそうに真ん中の方で浮かれていい笑顔してたのがもう可愛すぎた・・・。
ショーン・ベイカー監督作は『フロリダ・プロジェクト』が初体験で、確かにその年のベストムーヴィーのひとつに選んでいます。その次の作品『レッド・ロケット』もいい作品でした。
彼の作品の何が好きかって、映画の奔流のようなテンポ感ですね。それが『フロリダ・プロジェクト』では『じゃりン子チエ』みたいなシャープな切れ味になっていたのですが、そこにだんだんと緩急のついた円熟味や映像表現自体の豊潤さも作品を追うごとに加わってきて、本作が私はショーン・ベイカーの一番の大傑作だと思います。
彼はスピーチで映画館へ人が足を運ぶことの大切さを語っていました。やっぱりそういうことを感じている人だからこその作品であると思います。「映画」ということにあぐらをかいていないし、必死で限界まで表現の領域を広げて絶対に出演してくれたスタッフにも映画館に観に来た観客にも損はさせないという強い意志を感じ取れます。
日本だと井筒和幸監督とかに自分としては近い印象があるかな。
さて、イゴール君役で受賞を逃したユーリー・ボリソフに代わって助演男優賞を獲得したのはキーラン・カルキン。
そのキーラン・カルキンが助演男優賞を獲得した作品は『リアル・ペイン 心の旅』。
この作品は『ANORA アノーラ』のショーン・ベイカーが脚本も編集もこなしたように、ジェシー・アイゼンバーグが監督・脚本、そして主演までやった映画。俳優であるジェシー・アイゼンバーグの監督挑戦作2本目でここまで来たか・・・と天才ぶりを見せつけられた作品です。
こうしたインディーズ魂溢れる「俺」作品が今年のアカデミー賞の主役となりました。
まあ、そのせいで、主演女優賞まで『ANORA アノーラ』のマイキー・マディソンが獲ってしまって、デミ・ムーアが獲れなかったのはちょっと残念。
主演男優賞は昨週観た『ブルータリスト』が獲得。
自分としてはこっちが作品賞獲ってほしかったんだけどなぁ。
ちなみに『ブルータリスト』もA24プロデュースのインディーズ魂溢れる作品。
でもメジャー作品でもユニヴァーサルの『ウィキッド』の主演二人のデュエットで授賞式がスタートし、ワーナーの『デューン』のサンドウォームがたびたび会場に登場し、なんだかんだこういうとこにはいないソニーとスカイダンスと合併中でそれどころじゃないパラマウントの作品は特におよびじゃない感じでした。まあディズニーは買収したサーチライトさまさまでジェシー・アイゼンバーグの『リアル・ペイン 心の旅』が獲れたから満足でしょう。そもそもアカデミーに縁がないファミリー向けのエンタメ作が主軸のかいしゃでしたからね。
で、『ウィキッド』の二人が最初にかました歌が”オーヴァー・ザ・レインボウ”。そう、ちゃんと原作の『オズの魔法使い』へのリスペクトを忘れてないのですが、あれ、そういえばあの作品はMGM作品だったよな。で、唐突に途中にMGM最強コンテンツの『007』トリビュートコーナーあったよな・・・。MGMって今はアマゾンMGMだよなってことで紐解くと、授賞式の司会者コナン・オブライエンがいじっていたジェフ・ベゾスネタまでつながってがっつり見えるてくるアマゾンの存在ですね。
アマゾンといえば、ティモシー・シャラメ君のフィアンセであるゼンデイヤが主演していた『チャレンジャーズ』もアマゾンMGM作品。で『デューン』では共演。受賞は無かったものの作品賞ノミネートではアマゾンプライム配信の『ニッケルボーイ』があって、受賞作からは見えてこないアマゾン帝国の存在感がヒシヒシと伝わってくる授賞式でした。
まあ、授賞式に実際いくら出したかわからないにしてもアマゾンのジェフ・ベゾスがオスカーをだれかが獲得するたびに「カモーーーーン!!!」
と叫んでいたに違いないでしょう。いずれインディー映画ならたいていはアマゾンPRIMEで配信されるわけですから。
そもそも米国のアカデミー賞はもうすでに公開が終わっているか終わりかけの作品がほとんどになるので、再上映する劇場か配信会社がアカデミーの旨味を一番吸い取れる業者であるのは間違いないですからね。