2022年お気に入り洋画の総括① | ポップ・ミュージックのトリコ

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流行音楽を聴きながら、人生を音楽で豊かにしたいと願う、私的でミーハーなブログです。

2024年になって2022年の洋画ベストです。

 

これは2022年に公開された作品というくくりでやると、どうしても日本公開が遅れたらその分、視聴がスレこむからです。

 

今回で言うと『aftersun/アフターサン』のリリース待ちでした。

よっぽど映画館で観ようかと思ったのですが、グッとこらえて今年の1月12日の配信開始まで待ちました。

まあその間に吟味もできますし、日本の媒体のベスト10が出てもそれは「日本公開」のくくりなので、実はそれほど内容が被りません。

理由はいくつかありますが、まずは未公開作品の扱いが難しくなること。

あとは「日本公開」のタイミングでアーカイブすると、例えば「バーベンハイマ―」のような現象が日本では年の区切りで分断されるということもあります。

 

ベストランキングは2種類あって、ヘッドホンしながらでも繰り返し何度も見るべき映画と、デカい画面と大音量で聴いて体験すべき映画に大きく分けています。

まずはヘッドホンで繰り返し観るべき映画。

 

①『イニシェリン島の精霊』(Disney)

奇跡に近い美しい風景は絶対見ておくべき。その圧倒的に美しい風景をバックに二人のオッサンのケンカが主軸のストーリーというのがまた・・・、
ただ、このオッサンのケンカの背景にはグレーゾーンの人物を誰がケアしてゆくのか?という深い話もあって・・・。英語で『ドンキ―』というと本来は”ロバ”ですが、”のろま””間抜け”の意味でも用いられます。『ドンキーコング』は”ロバっぽい大猿”ではなく”間抜けな大猿”ですよね。劇中で主人公は『ロバ』の世話をして生計を立てているのですが町の人間から”ドンキ―”と呼ばれて”俺はドンキ―じゃない”と答えます。このドンキーはロバのことを指していると主人公は思ってるのですが町の人は”間抜け”という意味で言っているのがわからないのです。

ここが日本語訳だと字幕でも吹き替えでもうまくいってなくて、主人公の知能指数の問題に作中で触れることが出来ていないので、”彼の話し相手を今まで町で唯一引き受けてくれていた初老の男の苦悩”というものが見えてこず、なんのこっちゃわからない”友達の突然の絶縁宣言とそれにはじまったケンカ”ということになってしまっています。

もっと絶縁にいたるまでの毎日の老人の厚情や、毎日まったく同じ話をする男との退屈なシークエンスがあればもっとわかりやすいのですが、この作品はあえてその場面は描かずに主人公視点から見た身勝手な老人の言動に映るように作劇しています。これにより観客は老人側に寄り添って映画をみることができなくなります。それでは拒絶される主人公が一方的に気の毒に見えるのですが、主人公の設定をキチンと踏まえると、この老人の”思いやり”に依存してコミュニティが見て見ぬふりをして放置している問題に一人向き合う、いわゆるケアラーの苦悩が浮かび上がります。「おまえの話はいつも同じでつまらない」と言って突き放し、音楽の師として大学生たちに師事しバーで彼ら相手に高尚な音楽談義をして楽しむ老人。本当はこんな意義ある交流ができる才がある人間が、それを我慢して毎日バーでこの男との毎日全く同じ内容の話を何度も繰り返し聴いていたとすれば、老人のことを誰が責められよう。それでも老人は自分の身勝手な行動の罪の意識にとらわれて、会話をしかけてくる彼を拒絶するたびに1本指を落とします。『イニシェリン島の妖精』とはかくも恐ろしく悲しい物語なのです。

ホントはもうちょっと書きたいけどネタバレ手前でいえることはそこまで。

 

②『ザ・メニュー』(Disney)

高名なシェフの出す格別のお任せコース料理を食べる超豪華なディナー会場が舞台。ここの料理がもうそりゃ怖い訳ですよ。そして皮肉のスパイスがこれまたもう致死量ぐらい入っているわけで・・・。

舞台がオシャレでそこでアニャ・テイラー・ジョイ様が活躍するからもうそれは大人のためのチャリチョコみたいな映画。

 

③『長ぐつをはいたネコと9つの命』

『スパイダーマン:イントゥ・ザ・スパイダース』以降のアニメ。というジャンルの作品。まあグランジのあとのポスト・グランジみたいなもんでこのアニメの破壊力で世界のアニメはリアル重視の3Dアニメの方向性からグッと振り子が振れて、わざと3Dアニメを2D風味にしてコミカルな世界を描く方向に切り替わりました。この作品はその流れにあって、しかもシュレックのシリーズのリブートの先頭バッター。それが素晴らしいクオリティですよ。よりコミカルによりカワイく。とにかくワンちゃんの可愛さは反則でアイツに泣かされます。つまりハンカチ・ティッシュは必須です。

 

④『プレデター:ザ・プレイ』(Disney)

プレデターの設定を使ってアメリカ先住民の話を作るという「どういうことなの?」という変化球です。これはよく考えついたものだと途中で気づかされたころには今まで見たことが無いアメリカ先住民VSプレデターのバトルシーンにどんどん引き込まれてしまっています。そうプレデターっていつも物語を進める装置に使われて気づけばもはや脇役なんですよね。

そういうところもいつものプレデター。とはいえ今回のプレデターさん、カッコイイですよ!歴代で一番好きかも。

 

⑤『バーバリアン』(Disney)

コメディ映画やラブコメなどがほぼ死滅した今、ジャンルものとしてはほぼ一人勝ちのホラー。

昔からここから新しい才能が世に出てきたわけですが、もう毎年くさるほどホラー映画は作られているのにまたその上をいく発想の新しいアイデアで攻めてきます。

本作はエアーB&Bを題材にした作品で自分の知らない間にだれかが家に入っている恐怖で見せていくのですが、そこは2020年代のホラー、きちんと取り組むべき課題にも光を当てます。シカゴといえば貧しい黒人が新興住宅地に一斉に住み始めて町がスラム化したという歴史や80年代には基幹産業である車の工場が廃れて町が荒廃したとか、黒人がものすごくたくさん住んでいる町ということで人種差別問題を多く抱えている場所で冤罪率の多いことで知られています。

そういう見方をすればこの映画の切り取るシカゴの問題が見えてきます。

 

⑥『ギレルモ・デル・トロのピノキオ』(Netflix)

ピノキオの舞台設定を第2次世界大戦直前のイタリアを出発点に変えるだけでここまで意味を持たせられるものかと感嘆。その筋書きだけでもすごいのに、この時代にストップ・モーション・アニメで撮影するという大技。

こんな贅沢なアニメ作品はもうしばらくは出てこないし、出せないでしょう。

 

⑦『パール』

『X』のスピンオフのような作品ですが、製作にも名を連ねるミア・ゴスの”金払ってんだからマジでやる”とでもいうような快演が凄い。全部通して観終わった後のエンドロールも忘れず鑑賞しましょう。なんなら本編より怖いかも。

 

⑧『マッシブ・タレント』

”あーいむ にっく ふぁっきーん けーいじ”こと我々のニコラス・ケイジがニコラス・ケイジ役で出演して巻き起こすバカ・アクション・コメディ。

なんだろう、彼の映画界での愛されかたって唯一無二のものですよね。この映画ではニコラス・ケイジの出演作をコスッた小ネタ満載。何よりコメディが氷河期どころか絶滅とさえいえる状況で本人ネタでそこそこの規模のドタバタ・アクションを1本作ってしまえるというキャラ立ち感が凄い。

 

⑨『aftersun/アフターサン』

最近この映画はレビューしたので割愛。夜泣きの子供に毎日翻弄されている子育てど真ん中の人には特に刺さる作品でしょう。まあその当事者は映画観るひまがあったら寝たいのが本音だと思いますけど。

 

⑩『X』

史上最高齢の殺人鬼が出てくる映画、として有名な本作。そんなことバラしていいの?と思って観たら、そう、”誰”が問題なのではなく”どうやって”が一番のキーポイント。怖かったマジで。舞台設定が70年代ということもあって、70年代映画へのオマージュ色が強く適度に安っぽいお色気シーンやバカっぽい下ネタシーンもあってエモい。

 

上記映画がヘッドホンで、と言っても、そりゃできれば大画面と大音量で聴くに越したことはありません。

ただ、手軽に気軽に低コストで映画を観ることは、長くこの趣味を続けるためにも必要だろうと思うのです。

まずホラーはできれば映画館で観ないことに決めています。理由は怖すぎて内容が楽しめないから!

ですのでこのリストでは家でみるべきリストということでホラーが多めになってます。