1950年以前のロングセラー作品① | ポップ・ミュージックのトリコ

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流行音楽を聴きながら、人生を音楽で豊かにしたいと願う、私的でミーハーなブログです。

米国版、英国版、日本版とやってきた歴代ロングセラーヒット企画ですが、どれも、歴史的には、ポピュラーミュージックの歴史全体を俯瞰するものではありませんでした。大きな理由に、チャートという物は、業界向けに、バイヤーズガイドとして誕生した歴史が有り、それを売り物にするぐらい、市場が大きくならないと成立しえないものだったからです。

それでも、米国では音楽産業黎明期からのチャートを架空でつくる研究がなされています。
このあたり、歴史が浅い米国なりの、自国発祥文化へのこだわりを強く感じさせます。

ある意味”神話”に近いチャート記録ですが、その時々に収集できる素材を可能な限り集めて作成するという、非常に、愛と熱意のこもった代物である事が感じられます。

このチャートは史上初めて、商業目的の音楽録音がされた、1890年を出発点としています。蓄音機がエディソンによって発明されたのが1871年ですから、発明から20年の間に、産業としての可能性が試されるようになっていったのでした。
1865年が南北戦争終結ですから、この時期の米国は、本当に目まぐるしいほどの発展を遂げていますね。

このころの蓄音機、というか、超巨大オルゴールについては、神戸の六甲山に博物館があるので、興味のある人は見てきてください(笑)。
もちろんその巨大さからたいていは、盛り場のホールに置かれ、コインを入れて動く仕掛けで人々に愛されたようです。
当時は、オルゴールのくるくる回る部分(もちろん巨大)を交換して曲を換えていたようですが、それが次第に円盤(もちろん巨大)になり、大掛かりな仕掛けを持つ巨大ジュークボックスに進化していきました。

よって、家庭ではまだもっぱら、ピアノで弾くための楽譜が愛されている時代でした。ピアノの量産はアメリカで始まりましたが、それでも当時は中流以上の家庭にしか普及せず、愛された楽曲も、英国産の”サロン・ミュージック”という、いかにも上品なものが主流で、米国の民族音楽を表題にしたフォスター(”わが心のケンタッキー”)らが、数少ない、米国音楽家としての最初の成功者でした。

1894年に、家庭用の蓄音機が40ドルでコロンビアから発売され、1898年には、エディソンから20ドルの蓄音機が発売され、家庭にも普及の兆しが見え始めました。このタイミングでラグタイムの全盛期が始まるわけです。

1921年にラジオの誕生と爆発的な普及が起こるまでは、ジューク・ボックスと、レコード販売が、米国の音楽産業の柱でした。

では伝説上(ジョエル・ホイットバーンという研究者の解釈上)9週連続1位となる作品を、1890年からカウントします。

①"The Laughing Song"George Washington Johnson(1891.4.4)10週
http://www.archive.org/details/GeorgeWJohnson
恐らく1890年代もっとも売れた”シリンダー”です。ヴァージニアの奴隷出身の黒人ですが、米国で最もはじめに有名になったシンガーです。
スタッテン島のフェリーで、エディソンが直接スカウトしたという伝説もあります。発売はコロンビアから。まあ、このころは、本体を売る目的で、機器メーカーがレーベルも兼ねていました。
この頃の作品は既にパブリック・ドメイン化していて、人類共有の宝となっています。

②"After the Ball"George J. Gaskin(1893.4.29)10週
"Silver-Voiced Irish Tenor"という肩書きを持つアイルランドはベルファスト出身の移民のシンガーです。発売はニュー・ジャージーというレーベル。
この曲は現存が確認できていないらしいのですが、ブロードウェイ・ミュージカルの『A Trip to Chinatown』という作品中の曲でした。

③"Daisy Bell"Dann Quinn(1893.9.16)9週
詳細わかりません。発売は、②同様ニュー・ジャージーより。

④"The Sidewalks of New York"Dann Quinn(1895.4.13)9週
詳細わかりません。発売はコロンビア。

⑤"The Band Played on"Dan Quinn(1895.8.24)10週
詳細わかりません。発売はコロンビア。

⑥"On the Banks of Wabash"George J. Gaskin(1897.11.6)10週
http://www.archive.org/details/GeorgeJGaskin
発売はコロンビア。インディアナ州の州歌となっています。
黒人歌手による、南部を取り上げた米国音楽というのは、”ミンストレル・ショー”という当時の一般的な娯楽演劇が大きく影響しています。黒人か、もしくは、顔を黒く塗った白人が、ちょっとドン臭いお人よしを演じる喜劇が当時は大流行しており(ポールとマイケルの”セイ・セイ・セイ”のPVで雰囲気が分かります。)、そこで、ミュージカル仕立てで、黒人訛りでこれらの歌が歌われ、それが流行したのでした。吉幾三の「おら、こんな村いやだ~」みたいなのり、もしくは、関西弁ばりばりの「やっぱ好きやねん」のようなものですね。

⑦"My Old New Hampshire Home"George J. Gaskin(1898.12.10)10週
上記の流れを汲む、ニュー・ハンプシャー版ですね。
発売はコロンビア。

⑧"Arkansaw Traveler"Len Spencer(1902.3.1)11週
http://www.archive.org/details/LenSpencerwithCharlesDAlmaine
ワシントンDC出身。上記からの流れを汲む、ミンストレル・ショー関連のヒット作です。発売はビクター。

⑨"Meet Me in St. Louis, Louis"Billy Murray(1904.7.23)10週
アイルランド移民系でフィラデルフィア出身。元祖フィリー系(笑)。やはり、ミンストレル・ショー界隈のヒット。発売はエディソン。

⑩"Sweet Adeline(you're the Flower of My Heart"Haydn Quartet(1904.10.29)10週
コーラス・グループのパイオニア。ビリー・マーレイのリード・ヴォーカルによるヒットが多い。発売はビクター。

⑪"The Preacher and the Bear"Arthur Collins(1905.6.10)11週
http://www.archive.org/details/ArthurCollins_part2
最初に200万枚を売り上げたレコードです。だんだん市場が拡大しています。彼はミンストレル・ショーの俳優。発売はエディソン。

⑫"Wait Till the Sun Shines, Nellie"Byron G. Harlan(1906.2.10)9週
アーサー・コリンズと組んでの、ミンストレル・ショーでのヒットも多いが、ソロではセンチメンタルなバラードを歌い、多才振りを発揮。エディソンとは旧知の親友であり、隣人であった。発売はコロンビア。

⑬"The Grand Old Rag"Billy Murray(1906.5.12)10週
http://www.archive.org/details/BillyMurray_part4
発売はビクターから。ブロードウェイ・ミュージカルの『ジョージ・ワシントン・ジュニア』からの1曲。

⑭"Nobody"Bert Williams(1906.7.21)9週
黒人初のブロードウェイ・ミュージカルのヘッドライナーを勤めた人物。発売はコロンビア。

⑮"My Gal Sal"Byron G. Harlan(1907.2.12)10週
http://www.archive.org/details/ByronGHarlan
発売はビクター。

⑯"School Days(When We are a Couple of Kids)"Byron G. Harlan(1907.5.18)11週
http://www.archive.org/details/ByronGHarlan
発売はビクター。

⑰"Harrigan"Billy Murray(1907.9.21)9週
発売はビクター。

⑱"Shine on, Harvest Moon"Harry MacDonough & "Miss Walton"(Elise Stevenson)(1909.4.10)9週
http://www.archive.org/details/HarryMacDonoughMissWaltonEliseStevenson
カナダはオンタリオ出身のテノール・シンガー。この時期を代表するバラード・シンガー。発売はビクター。

⑲"Put on Your Old Gray Bonnet"Haydn Quartet(1909.12.18)11週
発売はビクター。

⑳"By the Light of the Silvery Moon"Billy Murray & Haydn Quartet(1910.4.23)9週
http://www.archive.org/details/HaydnQuartetwithBillyMurray
発売はビクター。

21"Casey Jones"Billy Murray & American Quartet(1910.7.2)11週
http://www.archive.org/details/AmericanQuartetWithBillyMurray
発売はビクター。

思ったより多いので、今日はこれで終わり。続きはまた今度。