昨年まで、洋楽ポップスは、限りなくデジタル化に向かい、シンセの多用、ジャンルのクロスオーヴァー化、反動としてのレトロヌーヴォー、インターネットによる動画配信の本格化と、限りなく、80年代に近いトレンドとなっています。流行のサイクル20年周期を信じる私としては、今から20年前の、1988年、さらに20年前の1968年を振り返って、今年の流行を占ってみたいと思います。
1968年
A:横軸(流行の拡がり)
"I Heard It Through the Grapevine "Marvin Gaye
ロックの世界に広がりつつあったサイケデリックの波は、前年のアレサ・フランクリンのヒットのような、サザン・ソウル回帰のようなルーツバックの流れとは別に、レコーディング技術の向上も手伝って、ソウル・ミュージックに新たな波を吹き込みました。このノーマン・ホイットフィールドのプロデュース作品は、もはやモータウンサウンドではない作家性に高い作品になっています。モータウンは新しい時代に対応することで、業界で最も新しい存在であろうとしましたが、それは、自らが作り上げた、ヒットソング量産工場の夢を壊していく作業にもつながりました。
B:縦軸(芸術性の高さ)
"All Along the Watchtower "Jimi Hendrix
このインスピレーションに基づく斬新な発想。エレキギターの表現できるものに、より大きな可能性がある事を世に知らしめました。
C:奥行き(流行音楽の深さ)
"Everyday People "Sly & the Family Stone
ヒッピー文化の盛り上がりとともに、その聖地として全国から若者が集まってきたいた、当時のサンフランシスコの空気を感じさせる、ポジティブなパワーに満ちています。
1988年
A:横軸(流行の拡がり)
"My Prerogative "Bobby Brown
当時広がりつつあったヒップホップの波は前年のガンズ・アンド・ローゼスのヒットのような、ハード・ロック礼賛の波に影を落としつつありました。怒れる若者の表現する、ある意味”ワル”の象徴が、NWAのようなグループの登場と共に、徐々に政権交代を成し遂げつつあったのです。これは、黒人音楽界にとっても衝撃で、それまで、プリンスの編み出した、ミネアポリス・ファンクかクワイエット・ストーム系かと、マンネリに陥りそうだったブラック・ミュージックにも構造改革を促しました。テディ・ライリーの制作するサウンド、ニュー・ジャック・スウィング、そのゴスペルのようなコーラスワークと、強靭なビート、はやがて、逆にヒップホップ界にも広がって行くほどの衝撃でした。しかし、バンド演奏が主であるミネアポリス・ファンクとは違い、この打ち込み主体の音楽は、ますます楽器演奏のバンドスタイルを、ブラック・ミュージックから排除してゆく流れに拍車をかけるのでした。
B:縦軸(芸術性の高さ)
"Fast Car "Tracy Chapman
当時広がりつつあったワールド・ミュージックの感触も伝わる、珠玉の傑作。女性アーティスト大躍進の時代であった90年代の予感を感じる曲のひとつです。
C:奥行き(流行音楽の深さ)
"I Want Her "Keith Sweat
これもテディ・ライリー仕事の一つではあるのですが、キース・スウェットならではの味付けもあって、既にニュー・ジャック・スウィングが一つのほぼ完成された様式であることがよくわかります。
20年前、40年前の流れから見ると、若者文化の新しい潮流が顕在化し、そのうねりが、音楽の新しい発展を促すような年である事、そのため、ここ数年で培われたヒット量産体制に終止符が打たれる年であることが考えられますね。
音楽としては、極端にビートを強調した強靭なビートがもてはやされる傾向になると予測します。
さて、実際にはどうなることやら?