*この記事はシリーズ「全体主義からの脱獄」の一部となる。他の記事はこちらから。

 

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かつてイラク戦争を始める時にアメリカがついたウソは「サダム・フセインはアルカイダと通じ、大量破壊兵器を隠し持っている」だった。
このウソによって、アメリカは、アフガ二スタンに始まりイラク、リビア、シリア、イエメンと連なる侵略戦争によって100万人以上を殺戮した。

イラク戦争勃発から何年も経ったあと、米英政府は「大量破壊兵器」説を、CIAと創作した誤情報であったと認めた
https://www.govinfo.gov/app/details/GPO-DUELFERREPORT/
https://www.theguardian.com/world/2013/mar/18/panorama-iraq-fresh-wmd-claims


そればかりか、現在ではアフガン戦争の発端となった9/11のハイジャック犯も、CIAのリクルートしたサウジアラビア王家の関係者だったことがFBIの告発で明らかになりつつある。
https://www.spytalk.co/p/exclusive-fbi-agents-accuse-cia-of?utm_campaign=post&utm_medium=email
https://thegrayzone.com/2023/04/18/9-11-hijackers-cia-recruits/


イラク戦争開戦当初の2003年、メディアの扇動の成果もあってアメリカ国民の約80%が戦争に賛成していたが、2004年、開戦から1年経っても大量破壊兵器が見つからない事実に、アメリカ人の43%が「ブッシュは故意に”大量破壊兵器”のウソをついた」と答えるまでになった。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaes/28/1/28_72/_pdf/-char/ja

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ウクライナ戦争勃発から約1年半が経ち、ゆっくりとだがアメリカと西側同盟国、そしてその大本営メディアのウソが共有されようとしている。

そこには、ミア・シャイマ― やノーム・チョムスキー、ジェフリー・サックス、スコット・リッター、クリスタル・ボール、キム・アイヴァ―セン、ケイティ・ハルパー、マット・タイッビ、マックス・ブルメンタール、ラッセル・ブランド、そしてRFK Jrの頑張りがあったのかもしれない。

ミア・シャイマー教授は相変わらずウ露戦争は米英のNATO拡大が原因だと発し(https://www.youtube.com/watch?v=vJD4ub85-so)ているし、国連サステナブル開発センター所長のジェフリー・サックス教授も同じような話を重ね、さらにヒートアップしている。


グレイゾーンのマックス・ブルメンタールは国連安保理のブリーフィングにも呼ばれ、米国が戦争の原因になったことや、私も頻繁に扱うOSCEによる「2022年6月16日以降にウ軍がドンバスを先制砲撃した」とする報告(https://www.moonofalabama.org/2022/02/ukraine-who-is-firing-at-whom-and-who-is-lying-about-it.html)なども披露したほか、米国からウ国に送られた支援金が、なぜかカナダやポーランドに送られていたことも報告した。

 


このような状況のなかでこのたび、大手メディアでも「全体主義から脱獄」する者が現れた。
ジャーナリストのレフ・ゴリンキン(Lev Golinkin)だ。

ゴリンキンは、ソ連時代のウクライナ生まれで、1989年までハリコフで育ったユダヤ人だ。ソ連崩壊後の91年にアメリカに移住した。



9歳で家族と共にウクライナから脱出したが、その当時のことを回想録「バックパック、クマのぬいぐるみ、そして8箱のウォッカ」で綴っている。
彼が持ち出すことを許されたのは必需品の入ったバックパックと、彼が「Tovarisch(同志)」と呼ぶクマのぬいぐるみだけだった。ウォッカは検問などで賄賂として差し出すためのものだ。

ゴリンキンの家族がソ連崩壊直前にウクライナを脱出した理由は、「情勢が悪化するとロシア人やウクライナ人がポグロム(ユダヤ人虐殺)を起こすから」だったそうだ。
https://jewishstandard.timesofisrael.com/escaping-with-comrade-bear/

彼は、ナチスやネオナチを批判すると同時にソ連・共産党も批判している。
NYタイムスやCNN、ワシントンポスト、フォーリンポリシー、The Nation、ポリティコなどの大メディアに寄稿する有名ジャーナリストだ。

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そのゴリンキンが2週間ほど前に、ケイティ・ハルパーのYoutube番組に出演した。
その一部を抄訳する。

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▼Ukrainian Journalist EXPOSES The Naz*s We’re Arming
2023/06/24 Katie Halper

 

ゴリンキン:
西側のメディアはそれまで7年間、ウクライナのネオナチ、アゾフのことについて記事にしてきたのに、2022年の2月24日を境に、突如として真逆の報道をしだした

この日を境に「アゾフや他のネオナチは、ネオナチではなくなった」と事実とは程遠いことを喧伝するようになった。
この全世界的なプロパガンダの成功によって、西側のメディは余計に精神病的になってしまった

White Fragility (白人の心の脆さ)とは、白人たちが人種問題に向き合えないその脆さを表現する言葉だが、主流メディアは自分達の白人至上主義的な感覚を覆い隠してしまっている。

2月22日以前はアゾフをネオナチとして禁止していたFacebookはこの日を境に突然、ユーザーが賞賛することを許可した。



かつてはTIMEなど各誌が、アゾフらネオナチの民兵が、世界中で白人至上主義者をリクルートしているという批判的文脈で扱っていた。ところが今では西側メディアはホワイトウォッシュしている。

ロシアにもワグネルなどのネオナチがいて、プーチンは彼らを利用しているが、アゾフのように米国議会で賞賛されたりMSNBCに呼ばれたりしない。
(*筆者注:ワグネルは隊員にネオナチがいることは確かだが、部隊全体がネオナチというわけではない。ウクライナのネオナチ系軍事組織と比べるとあまりにも規模と影響力が小さい)

アメリカはビン・ラーディンだろうとアルカイーダだろうと、敵に対して死をも恐れない者は利用する。
ウクライナの場合はアゾフだった。
いまやアゾフは、たった一つのバタリオン(大隊=300人規模)から2つのブリゲード(旅団=3000人規模)にまで拡大した。

主流メディアは、「アゾフが2014年にネオナチの退役軍人を解雇することで自らを非ナチ化した」というが、嘘である。

例えばアゾフ初期の2014年から現在まで在籍する分隊「ボロダッチ師団」のリーダー、プロコペンコらは「黒い太陽」や「トーテンコップ」をエンブレムとしていた。

「黒い太陽」は世界中のネオナチが好むナチスのシンボルで、アゾフ自身もエンブレムとして採用した。「トーテンコップ」はナチスの親衛隊SSの紋章だ。
(*筆者注:黒い太陽やトーテンコップは、アゾフをはじめNY州バッファローの無差別テロ犯、ニュージーランドのクライストチャーチ襲撃犯、アルゼンチンの副首相暗殺未遂犯、そしてゼレンスキーのボディガードなどの世界中のネオナチに愛用される 参考 https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12778613939.html )

アゾフの報道官ドミトロ・コザツキーもアゾフが設立される以前から隊長のビレツキーとつるんでいたが、恐るべきことに米国の上院議員とも会合したうえ、MSNBCにも出演した。


米上院議員と懇談するコザツキー


MSNBCに出演するコザツキー


ツイッターでコザツキーがシェアした「White Boys 88」のグラフィック。
*筆者注:「88」は「ハイル・ヒットラー(Heil Hitler)」のイニシャルを意味する隠語。「H」はアルファベットの8番目であることから「88」とした。
https://www.adl.org/resources/hate-symbol/88


ウ国の国章「三叉槍」をあしらった「14-88」のTシャツを着るコザツキー https://archive.ph/oB7oL
*筆者注:「14」は、白人至上主義の標語「我々は、我々の種族の存続と白人の子どもたちの未来を確かなものにしなくてはならない」に由来する。ウクライナのネオナチ部隊「C14」(スヴォボーダの青年部)の名称の元になった。https://ameblo.jp/cargoofficial/entry-12733980149.html

アゾフはネオナチを解雇などしておらず、現在も重用している。

ところがこのようなアゾフらネオナチのナチス・エンブレムの使用や活動は、ADL(ユダヤ名誉毀損防止連盟、Anti-Defamation League)などからの苦情もなかった。
英労働党も元党首コービンやピンクフロイドのロジャー・ウォーターズがナチスを批判する文脈でナチズムに近寄っただけで、ADLは大声で批判するのに、なぜかアメリカ政府がウクライナのネオナチに武器を与え、公然とナチスを賛美しているのに、批判さえしない。
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動画でのゴリンキンの報告は、自身が寄稿した主流メディアの「The Nation」の記事が元ネタになっている。


この「全体主義体制からの脱獄者」ゴリンキンはだいぶ興味深いので、次回も彼の話題を続けようと思う。

今日はここまで。

cargo