https://rejichoice.jp/post-1151/

 

どうも!
今週はいろいろな事件が多発して、情報のアップデートが全然追いつきません(笑)

最もヤバい事件が、働き方改革法案の裁量労働制の取り下げ
これは日本国民が一定の勝利を収めたこととなるのですが、安倍さんらは撤回したわけではなく、先延ばしという判断をしただけであり、スーパー裁量労働制と言われる「高度プロフェッショナル制度」は以前として抱き合わせで残っていますので、予断を許さない状況が続きます。

次に特筆すべき大事件が「森友学園の土地取引に関わる決済の公文書が、財務省により偽造されていた」というスクープ(笑)
昨年2月の森友事件発覚後に、土地取引に関わる決済文書から『特例』『価格提示を行う』『本件の特殊性』などの文字を消す改竄が行われたということなのですが、担当者は有印公文書偽造で懲役10年以下の罪に問われる可能性が高いということです。
この当時は佐川元理財局長が「価格交渉してない」と言い張っていたので、それが完全にウソであったことが確定する証拠ともなります。
財務省側もよほどヤバイと思ったのか、「検察の捜査に影響するので、この件については答えられない」の一点張り。
しかし同じように捜査対象になっているはずの「森友からの法律相談」に関する文書はしっかりと国会で明示し、答弁もしているので、容疑者のヘタな言い訳にしか聞こえないという状況です。
こちらも野党議員による捜査の進展が楽しみな限りです。

それにしても安倍さん、よほど状況がヤバいと悟ったのか、報道に圧力をかけるべく切ったカードが「電波オークション」(笑)
私は電波オークション自体には反対しませんが、なぜこの時期に大声で主張してきたなのかまったく謎です。
加計学園をごり押しした国家戦略特区諮問会議、裁量労働制をごり押しした産業競争力会議(現未来投資会議)の両方に議員として名を連ねる竹中平蔵の入れ知恵ですかね。
官邸の議事録にしっかりと未来投資会議が電波オークションをゴリ押ししている証拠が残っていますよ。




さて、そんな幾多の事件のなかで、私が今回注目したいのが、民進党大塚代表の「労働生産性」に関する論議

さすが元日銀マンの大塚代表、マクロ経済のプロです。
本当に素晴らしい質疑を行いました。

▼ 参院予算委員会基本的質疑 民進党・新緑風会 大塚耕平議員 2018年3月1日
https://www.youtube.com/watch?v=AnBHvJooSYI


前置きがかなり長いですが、問題の箇所は31分くらいから。
こちら長尺で聞かないと大塚代表の理論の積み上げを見失い、論旨を見誤るので、ぜひ1時間くらい聞いてほしいと思います。


大塚代表がこの日の定例記者会見で語っている点が今回の質疑の論点になるのですが、
「安倍首相と黒田日銀総裁は”二年間でマネタリーベースを二倍にすれば物価上昇率が2%になって、デフレ脱却し経済も好循環になる”と言っていたが、5年経ってマネタリーベースを4倍にしてもまったくその兆候が見られない。そんな中で根拠なく”労働生産性の上昇率を2%にする”と言っている。悪夢だ」ということです。

当該質疑で、まず大塚議員は、「日本人の労働生産性が低いとの根拠なき都市伝説が蔓延している」と、就業者数も労働時間も把握できてないとして統計の根本的な不備も指摘したうえで、「労働生産性が低いから裁量労働制導入」とする政府の方針には、論拠はない、と主張しています。

「日本人の労働生産性が低いという話は、根拠なき都市伝説」だといっているのです。
というかむしろ日本人の労働生産性はガンガン伸びている


出典:日経新聞

労働生産性が伸びているのに、賃下げ(実質)しているのだから、ムチャクチャな話です(笑)



出典:日経新聞

つまりこれは、「労働分配率」がダダ下がりということになります。
企業は儲かっているのに、労働者に賃金を払っていないばかりか、「労働生産性が低い」として、賃金が低い/企業業績が悪いのを労働者のせいにしている(笑)


出典:日経新聞


さてここで問題になるのが「労働生産性」。

今回の質疑で、宇予くんたちがもっとも発狂したポイントになります。

上記ビデオの1:時間15分あたりの部分を抜粋します。
 

民進大塚代表 「スーパーのレジ係が2倍速で仕事したら、スーパーとしての労働生産性はどうなりますか?上がると思いますか?

加藤厚労相 「GDPを分子とする定義とは変わるかと思いますが、この場合は上がります」

安倍 「生産性は上がるというふうに考えます

大塚 「総理、これは一緒になって考えてもらいたいのですが、この場合レジが倍速になってもスーパーの売上は増えないんですよ」

日銀黒田総裁 「実質賃金ギャップについては、労働生産性の上昇率と実質賃金の上昇率を比較して、労働生産性の上昇率のほうが実質賃金上昇率より高い場合は負のギャップができている。逆に労働生産性の上昇率を上回って実質賃金が上がっているときは、ギャップが縮んでいるということであります。現在は労働生産性の上昇率に実質賃金が追いついていないので、実質賃金ギャップが大きい」

大塚 「総裁がおっしゃったように”労働生産性の上昇率に実質賃金が追いついていない”。そのことによって国民の購買力が伸びていない。客の購買力が増えなければスーパーの売上も増えないんですよ。こういう認識を共有していただかないと、この労働生産性の議論がかみ合わないのです
 


おわかりいただけましたでしょうか?
不思議ですよね。

我々一般人が普通の感覚で考えたら、「売上が伸びるに決まってんだろ!バカか大塚!」となります。

しかし、事実は、「倍速レジ係がいても、労働生産制も売上もあがらない」のです(笑)

なんだか数学におけるモンティ・ホール問題みたいな不思議な感覚になりませんか?

これは一体どういうことなのでしょうか?


まず、宇予くん達が発狂したのは、ミクロとマクロを混同したからだと思われます。

 ミクロの労働生産性 = 労働成果(利益額)/労働投入量(従業員数 or 労働量)

・ マクロの労働生産性(国民経済生産性) = GDP/労働投入量(就業者数×労働時間)

最初に、この点を押さえる必要があると思います。
ミクロで考えると、労働生産性を上げるには、分母である労働量を少なくし分子である利益を上げればいい、つまり倍速で働けば労働生産性が上がることは間違いないように思えます。
しかしこれは、大塚議員の質問の仕方も若干わかりづらい部分があったので、頭の良い加藤厚労相も逆にひっかかってしまいますが(笑)、実はミクロ的に考えても、倍速レジ係が効率を上げても、労働生産性向上には繋がらない。

なぜか?

どんなにレジ係の効率を上げても、買い手が増えるわけではないので、売上を増やせるわけがないのです。
現実的に考えたとして、「あそこのスーパーはレジが倍速だから買い物に行こう!」なんていう人がいて、客足が伸びることがありますか??(笑)

そして倍速レジ係りの労働時間は同じなので、分母も変わらない。
ミクロの労働生産性を上げるには、商品の付加価値を高めることで分子の成果を上げたり、分母の労働量を少なくしたりするほかありませんよね。


マクロ的にも、現在の日本経済においてはそもそも需要がない(客の購買力がない)ので、売上が増えないのは当たり前でしょ?ということなんです。

この点は、経団連をはじめとする経営者の皆さんも勘違いしているポイントとなるのではないでしょうか。
だから生産効率を上げるべく裁量労働制にしても労働時間が長くなるだけなのだから労働生産制は上がらないので、経団連の論理は完全に間違っているということになります。


そもそも大塚議員が証明したように、「日本人の労働生産率は伸びているのだから、業績不振を労働者の効率のせいにせず、ちゃんと給料を払いなさい(資本投資しなさい)」ということです。
事実誤認を続けるのなら「この経営者は経済学も理解できないアホなんだな」という烙印が押されるだけですよね。


この件は、経営コンサルの清水泰志さんのこちらの説明も参考になるのでぜひ参照ください。


民進大塚代表の論理は、

「労働生産性向上 → 賃金上昇 → GDP増加」
この考えが間違い


「賃金上昇(需要増加) → 労働生産性向上 → GDP増加」
これが正しい


ということになるのでしょうね。


労働生産性の伸びに実質賃金が追い付いていないから購買力が伸びない。

購買力、つまり消費が伸びないので、所得も増えない。

だからGDPも上がらない。

の購買力(需要)を呼び起こすために、もっと投資しましょうねという結論にいきつくことになると思います。



まるで「卵が先か、ニワトリが先か」論のように感じるかもしれませんが、ヒヨコに卵を産ませようとしても無理な話です。

ヒヨコがニワトリに成長しなければ卵は産みませんよ。

 

 

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以上が、大塚代表の理論となるはずで....、僕も大変評価しているのですが.....、実は大塚代表はこの後に致命的な間違いを発してしまいます。
少なくとも僕は、大塚代表の以降の論理は間違いであると思いますが、長くなってきたのでこの続きは、また次回のブログポストにでも。



さて、上述したように尊師や経団連は、「サプライサイド経済学」を推進し歪曲した結果、需要の喚起を軽視し「労働生産性上げればGDP上がる!その為には裁量労働制やぁ!!」というような頓珍漢な論理に行き着きました。

何度も言いますが、需要がないのに供給量を増やしても無意味であります。

消費する人がいなけりゃ過剰生産になり、無意味であるばかりか在庫抱えて頭も抱える結果になるということです。
 

結論として、生産者=消費者の賃金を上げ需要を生むしかないのですが、経団連や安倍一味は賃金を上げたくないので「労働生産性」を悪者にしたのでしょうね。

「安倍さんは経団連に賃上げをお願いしてるじゃないか」と言う方もおられると思いますが、安倍政権は財政出動額を削ったうえで、口先のみで「賃上げよろしく」と言ってるだけなので、本末転倒なのです。


ちなみに上記質疑において、加藤厚生労働大臣が「名目賃金も実質賃金も上がってきている」と答弁していますが、これは真っ赤なウソです。

 実質賃金推移
08年 101.9
09年 99.5
10年 100.8
11年 100.9
12年 100.0 ←第二次安倍政権スタート
13年 99.1
14年 96.4
15年 95.4
16年 96.1
17年 95.9 ←NEW!
http://www.nippon-num.com/economy/actual-income.html


政府側の答弁には、他にもウソは多いですが、特に尊師の言う「総雇用者所得が上がっている」に関しては、実質では民主党政権下より年間増加率は下がっていますので、このウソにも注意が必要ですね。


最後に本国会で大問題になっている裁量労働制/高度プロフェッショナル制度について一言。

新・年次改革要望書といわれる米日経済協議会の提言書”アベノミクスの中心転換 ~経済成長に不可欠な新しい構造・規制課企画”の7ページで「ホワイトカラーエグゼンプション(高プロ/裁量労働制)の拡大」をやれと命令されていることからわかるように、扱いやすい奴隷を作ると米グローバル資本が喜ぶということです。
要するにずっと前から宗主国がご所望だったわけですね。

その宗主国・グローバル資本から命を受けて工作していた人たちがいる。

 

 


ということで、本日は大塚議員の質疑から「経営者が陥る労働生産性の罠」の説明をしました。

次回は大塚議員の至らない点を、立命館大学・松尾匡教授が生み出した最強のパダワン山本太郎議員のビデオを例に、私なりに説明してみたいと思います。


最後までご覧いただきありがとうございました。

また次回。

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