広島の整備工場さんから修理のご依頼です。
症状としては、
・エンジンが始動できない
・ギアが入らない
・ギアが1速に入ったのでアクセルを踏むと後退する
などです。
実はこの症状が発症してから、広島のBMWディーラーさんに修理で入庫したそうですが、
「ミッションASSY載せ替え」という結論が出て、飛んでもない金額を提示されたそうです。
余りに高額で、短絡的に出された結論だったという事もあり、直すのか処分するのかを含め一旦考えさせて欲しいという事で、一先ず調整などの診断のみ行って貰ってから引き取りに行ったそうですが・・・
なんと、ディーラーさんの駐車場に案内されたその場所で早速エンジンがかからないという状態。
家にも帰れない状態なので、以前よりお付き合いのある整備工場さんにご自身でレッカーを手配。
その整備工場さんが、今回フリークに修理を依頼してきてくれました。
運ばれてきた際の症状ですが、
伺っていた通り、早速エンジンがかかりません。
どうやらニュートラル検出が出来ていない様子。
しかし、メーターパネル内のシフトインジケーターはニュートラルを示してはいます。
何度かキーを回していると、ふと電子音がしてシフトチェンジが可能になり、エンジンが難なく始動！
その後も色々やってみましたが、殆どの場合でエンジン始動不良。
ようやくエンジンがかかりギアを1速に入れて前進しようとアクセルを踏むとバックするという症状も確認。
診断機を接続してチェックすると、
・299A DME CAN故障管理EGS
・279C サーモスタット冷却特性マップエレメント制御
・4EF5 セレクターアングルセンサー
・51B6 engine intervention implausible
・4F75 Transmission gear selection not possible
・E5C7 Communication IBUS transmit fault
等を検出。
これが原因かな？と思うものには行き当たっても、本当にそれが原因なのかの確証が無い・・・
なので、事前に確認出来る事は一通り行います。
PAD-Ⅴ接続。
クイックテストでトランスミッションコントロールモジュールチェック。
ここでも
・4F75
・4EF5
・51B6
を検出。
PAD-Ⅴの方が、少し優しく訳してくれている様です。
続いてクラッチのリセットを実施。
クラッチ学習やリセットなど、一連の作業をコンプリート。
でも、症状に変化なし・・・
続いて、SMGを含むコントロールユニットのリプロを行いましたが、リプロ実施後もやはり変化なし。
いよいよ、ミッションに取り付けられているセンサーが怪しい感じになって来ました。
BMW純正機を接続して、センサーに関しての情報を引いてきます。
SMGのシフト制御をしているセンサーはこの2つ。
センサーはミッションのこの位置に付いているそうですが・・・
しかしミッション側面を確認しても何も見えない。
しかも、このセンサーは国内在庫無し。
本国には在庫があるが、注文当時は納期が最低1ヶ月以上、
出来れば2ヶ月は余裕を持って欲しいと。
センサー自体の確認もロクに出来ない状態で、本当にこれを疑って交換をしてもいいのか。
色々悩みましたが、出来る事を他にも色々やってみたけど、もう次のステップはこのセンサーを交換するしかないという所まで来てしまった。
「最悪返品しますので、交換させて下さい」とお客様にお断りをして部品を手配。
ちなみに、本当は返品なんて出来ません。
一度装着したら返品は不可。
仮に、未使用・未装着パーツなら3日以内なら返品を受け付けてはくれますが、返品手数料がそれなりにかかります。
そりゃ、いつ出るか分からない部品を在庫しておくリスクって、例え輸入車専門の部品商といえども高過ぎますものね。
ご依頼頂いた業者さんも凄く良い方で、フリークに運んで来てくれた際にはオーナー様も一緒にご来店。
お二人から共に信用して頂いているし、もう、ここでこの部品を変えて直らなければ、本当に高額修理になります。
最後の砦。
この部品を交換しないと次に進めない。
直らなければ、部品代はうちで被る覚悟で部品を手配。
手配した部品は、今回一番疑わしい「セレクターアングルセンサー」と、そしてその隣で、非常に似た構造で同じ様な働きをしており、共に交換が困難であろう「シフトストロークセンサー」も、この先いつトラブルを発症するか分からないので、一緒に注文（共に本国在庫のみ）。
部品代は2点で合計7万円を余裕で超える価格。
頼むから直って～！
部品が届いたのでミッション取り外し。
顔が切れているけど、100％「ドヤ顔」！！(笑)
青色の矢印がセレクターアングルセンサー、
赤色の矢印がシフトストロークセンサーです。
外したついでにクラッチも点検。
レリーズベアリングからちょっと音が出ています。
レリーズベアリングの片側のみ、少し摩耗が見られます。
摩耗しているのは片面だけ。
シャラシャラと音も出ているから出来たら交換したいので、早速にベアリングの価格を調べるも、やっぱりか・・・という落胆と共に突き付けられる「国内在庫無し」の文字。
ちなみに、クラッチディスク・カバー・ベアリングの3点セットで68,000円程。
このベアリングは上下関係無く同形状なので、今回はひっくり返して再装着。
だって、今回のミッション脱着の目的は「センサー交換で直るのか！？」なので。
両方新品に交換。
マレリーさんが作っています。
今度は純正機を接続してセンサーと適合させる為の学習を実施。
一通り学習が完了。
そしてエンジン始動！！！
全く問題無く素直にかかってくれました！！
以後、念には念を入れて毎日数回エンジンを始動。
そして長距離試運転なども繰り返しましたが、いずれも全く問題無し！
再学習などのおかげか、ミッションフィーリングもメチャクチャGOOD!!
更に数日確認を続け、全く問題無い事から「完治」とさせて頂きました。
今回のSMGトラブル修理では、
・トランスミッションASSY脱着
・SMGセレクションセンサー交換
・SMGシフトセンサー交換
・ミッションオイル(ROYAL PURPLE MAX-GEAR)交換
・クラッチシステムキャリブレーション
以上の作業を行っております。
今回の修理ご請求額は、 ￥ 162,000－ となっております。
（別途、ガソリン代として3,000円頂きました）
ご用命、ありがとうございました<(_ _)>
＜参考データ：車両走行距離 133,500km＞
※同じ内容の故障事例でも、作業内容や手順、個体差や経年劣化、部品価格の変動等により必ずしも同一価格・同一修理とはなりません。上記価格や修理内容を他の整備工場さんに強要する様な行為はお控え下さい。
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