トラブル修理-BMW M5(E60)まさかこんな事が原因でこんな症状が!? | フリークのブログ

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「それって幾らになるの??」にも、明確にお答えします(^^)

今回紹介するM5は、そもそもは、

 

・走行中にトランスミッションの警告灯が点灯する

・ABSの警告灯が点灯する

 

という症状でした。

 

 

試運転をしてみると、

暫くするとミッション警告灯とABS警告灯が点灯。

 

警告灯点灯後からは変速点に異常が出ます。

変速フィーリングが極端に悪化し、

500PS以上を誇るV10エンジンが、SMGの悪化でとっ散らかるって感じで、強烈なギクシャク感を伴ってとんでもない状態になります。

 

一旦停止し再びスタートする際なんて「ドカンッ!!!」と繋がって思いっ切り飛び出すもんだから、タイヤはキュキュ!!なんて言うし、下手すりゃむち打ちになりそう。

 

 

 

 

SMGのトラブルという事でのお預かりでしたが、診断結果は予想通りスピードセンサー関連。

 

診断機を接続してエラーを読み取ると、出るわ出るわで合計26個のエラーを検出。

 

全部を書き出してもキリがないので、関係の有りそうなものだけを抽出すると、

 

・CDC1/2/3 DME SMG CANメッセージエラー

・CD98 DME ダイナミックスタビリティコントロール トルク要求異常

・CDBB DME ホイール速度異常

・CD9C DME 速度 0x1A0異常

・4FA0 SMGクラッチ制御/ポジションのずれ

・5101 SMG油圧センサー

・5201 SMG左リアホイールスピード信号異常

・5202 SMG右リアホイールスピード信号異常

・520A SMG舵角信号異常

・D35D DSCメッセージ無し/LDM

・D357 DSCメッセージ無し/EGS・SMG・DKG

・5DA6 DSCホイールスピードセンサー回転方向異常

・5E43 DSCステアリング舵角センサー同期不良

・5FF1 EDC左フロントホイールスピード異常

・5FF2 EDC右フロントホイールスピード異常

・5FF3 EDC DSCからのCAN異常/左フロントホイールスピード

・5FF4 EDC DSCからのCAN異常/右フロントホイールスピード

・A3EC JNAVホイール回転信号が無い

 

とまぁ、こんな感じです。

ここから様々なデータを取りながら原因を絞って行く訳ですが、

結局の原因は、フロント右のスピードセンサーが、何かのタイミングで急に発生パルスが半分の数値になるというトラブル。

 

 

フロント左右のスピードセンサーを交換させて頂き症状は治まりましたが、ここからが泥沼の始まり・・・

 

 

このM5、実は複合的に幾つかのトラブルを抱えていて、スピードセンサーの交換で直ったのは、「走行中にエラーが出なくなった」という事だけ。

そもそもご依頼頂いた症状は直ったので・・・と納車出来るなら、修理業は辞めた方がいい。

相手が車にせよ、人にせよ、「診る」という事は、そういう事では無い。

 

 

現状気になっている所は、

・やはり変速フィーリングがおかしい

・バッテリーは純正でまだ1年半しか使っていないのに、常に電圧低下。

・アイドリング回転数が上下にハンチングしている

 

 

そこで次に調べ始めるのが、走行に関する以外のエラー内容。

そして非常に疑わしいオルタネータやバッテリーなどの電流マネージメント関連。

 

 

 

 

オルタネータの波形を確認。

定期周期でノイズが入っているような足が出ている。

 

 

発生電圧を測定してみると、調子のいいときは14V台で安定するけど、これが11Vまで下がったり、時には15Vまで上がったりする事もあり。

 

じゃぁオルタネータじゃない!?

というのは余りにも安直過ぎるし、思い付きで高価な部品を交換する訳には行きません。

 

 

 

 

 

 

色んな資料を基に、現状のデータと照らし合わせながら、何が原因なのか、それは一つなのか二つ以上複合なのかを診ていきます。

 

 

 

昨年末頃にカイセの方が訪問・紹介してくれたのが、様々な診断機器。

浅田先生からの紹介という事もあり良いと言われる診断ツールなら買わないという選択肢は無い。

(「浅田先生」は今年6月フリークにて行うオシロ勉強会の講師です)

 

車両の前から後ろから車内から、様々な診断機器を接続してのデータモニター。

それはまるでICUであるかの様な状態。

 

 

 

 

 

 

 

色々&色々診て行きますが、

診れば診る程、どう考えてもオルタネータがダメという判断に至り、

オルタネータを交換させて頂く事になりました。

 

 

 

取り外した純正のオルタネータ。

発電もおかしかったけど、ブラシも殆ど残っていませんでした。

 

 

 

 

適合確認の取れているHELLAのオルタネータ。

 

インテリジェントバッテリーセンサーの交換も同時に行い、キーロック放置3時間以上にて、新しいバッテリーステイタスの特定させます。

 

そしてエンジンを始動。

するとたちまち、

 

・279B DME オルタネータ通信エラー

 

を検出。

その後ユニットをリプロするとエラーは消えるが・・・

 

その後何度かエンジンをかけたり切ったり、そして試運転したりしていると、

 

 

 

今度はエンジンチェックランプが点灯し、調べてみると、

 

・278F DME インテリジェントバッテリーセンサーコミュニケーション

・278E DME オイルレベルクオリティセンサー

 

を検出。

 

 

 

上記2点のフォルトを検出するとアイドリングが非常にラフになり、めちゃくちゃ調子が悪い。

そしてエラー内容が示す通り、オイルレベルゲージが作動を止めてしまいます。

 

再びリプロをし直すと、またまた1日だけ調子が良くて、その後試運転したりエンジンのかける切るを何度か繰り返すと、何かのタイミングで再びこのエラー。

そしてエンジン不調・・・

 

これは一体何なんだ???

今度は配線図と各種テスターを引っ張り出して来て、またまたICU状態で、車両のあちらこちらから様々な情報を取り出しながらのにらめっこ。

 

 

そして、様々な回り道を繰り返しながら、ゆっくりと原因に辿り着いていきます。

(実際、、、何度ECU故障を疑ったことか・・・)

 

 

インテリジェントバッテリーセンサーとオイルレベルクオリティセンサーは、どうやらビットシリアルデータインターフェース接続らしく、これら2点に更にオルタネータ情報までシリアルで情報送受信している様です。

 

簡単に言うと、上記3点が芋づる式に繋がっていて、

一番上のお芋は大きくて太いけど栄養価は普通で水分少な目だよ!

二番目のお芋は細くて小さいけど水を沢山欲しがってるよ!

三番目のお芋は大きさは普通だけど栄養価が高くて水分豊富だよ!

的な感じでしょうか・・・??(笑)

(説明しようとしている事で余計にややこしくなっていたらすみません)

 

今回この芋づる三兄弟の何番目かの誰かがダメになってしまったと考えるのが正解で、

たった1本のケーブル(BCD)でのみ情報がやり取りされているので、誰かが悪くなってしまうと、そもそもその情報のやり取り自体がプツンッと根こそぎ断絶してしまうといった状態です。

 

ならば、悪いのは誰だ!?

 

オイルレベルクオリティセンサー?

彼は完全に誰かに引っ張られている!

 

インテリジェントバッテリーセンサー?

当初よりエラーは入っていたけど、だからこそバッテリーとオルタ交換を機に、ここは新品に、しかも複雑な構造に進化した対策品に変わっているから、恐らく大丈夫!

 

となると、残るはオルタネータ。

再度適合確認の為に取り寄せた阿部商会に問い合わせ。

しかし、担当者に確認するも、

適合確認は取れている!HELLA自体が適合していると言っているし、

E60系を含むその他車両でその様なエラーは出た事が無い!

という事。

 

まぁ、阿部さんはBMWディーラーも運営している位だから、その辺りの情報は色々お持ちなのだろうから・・・

 

となると、やっぱりECU???

 

 

仕方がないから、限りなくクロに近いと睨んでいるオルタネータを、元々付いていた純正の不調オルタと再び入れ替え。

 

すると・・・

 

あれだけ出ていたエラーが嘘のように消失!!

リプロなんてする必要も無い!!

翌日までキーロックで置いて、その後も試運転したりエンジンのかける切るを繰り返すも問題無し。

(ただ、発電が不安定なので調子は悪いですけどね)

 

 

ここまでの経過を阿部商会の担当者に説明し、

そして、このBCDは、どうやらオルタのメーカーまで読んでいる可能性が高いという事も説明。

今回はHELLAではなく、Valeoを使用してみます!という事を伝えましたが、

そりゃ向こうもプライドがありますから、

「初期不良の可能性もあります!代替品を送りますので試して下さい!」との事。

そして翌日届いたHELLAの新しいオルタネータ。

しぶしぶ交換するのは丸山君!(笑)

複雑で極端に狭いV10エンジンの奥の奥にあるオルタネータ・・・

「今の僕、M5のオルタ替えさせたら、多分日本で一番早いですよ!」って。

そう言えば同じ事を何度もこのブログで私自身も書いた事がある。

R53ミニやW176のバルブボディ脱着は、何度日本一に輝いた事か(笑)

やっぱりみんな、そう考えるんだよね。

そうでも思わなきゃ、こんな、付けたり外したりを何度も何度も繰り返す事なんて出来ません。

いやぁ~、整備士って本当に忍耐強い!!!

ダンナにするなら整備士ですね!!(笑)

 

 

だいぶ逸れました・・・

 

 

で、結局。

再び送られてきた新品のHELLA製オルタネータを装着!!

 

エンジン始動して診断機にてエラーチェック。

 

 「279B DME オルタネータ通信エラー」 を検出!!!

 

はい。やっぱりーーー!!!

 

もう、原因は絶対HELLA製オルタネータですやん!!

 

 

 

返品は効きませんとか何とか言われたけど、

もうここまで来たらそんな事無視してValeoのオルタを取り寄せるしかない!!

 

 

 

別の部品商経由で取り寄せたValeoのオルタネータ(左)、

そして右は今回問題のHELLAのオルタネータ。

 

 

 

 

ポーランド製とは書いているけど、

中身は実は・・・何てことは多々あったし、実際海外でこの手の印象操作は目の当たりにして来たから信じていません。

 

中国製だって、本当に良い品は沢山ある訳だし、ヨーロッパ諸国の製品で名だたる粗悪品メーカーだってある。

 

結局私たちの求めるところは、「正しいのか、正しくないのか」。

 

 

 

 

Valeoのオルタネータを装着後エンジン始動!

 

「現在エラー」だった項目は全て「過去エラー」へと勝手に移行。

エンジンの調子もすこぶる良いし、

オルタネータ通信異常も出なければ、芋づる3兄弟関連全て正常復帰・正常動作!!!

 

 

 

 

 

 

各種数値も問題無し!!!

 

やっぱりHELLAのオルタは適合していなかったという事です。

阿部商会の担当者さんにこの事を説明。

担当者さんサイドでの判断で、

「一先ず両方持ち帰って調べてみます」という事。

一番矢面に立たされているのは何処の会社も「営業マン」。

間に挟まれてかわいそう・・・

 

「やっぱり買取して下さい!」って連絡、入りません様に・・・

 

 

 

 

オルタネータ問題も解決し、続いては、

追加でご依頼頂いた、フロントガラスの周辺モール。

写真ではちょっと分かり難いけれど、色あせて古臭く見えます。

 

 

 

 

新品に交換。

目立つ場所ですし、この辺りを一新すると生まれ変わりますね!

 

 

 

そして、一番気になっているヘッドライトの曇り。

BMWの場合、ここから更に劣化すると、表層がぺりぺりと剥がれて来ます。

 

 

 

特殊加工にて美しく生まれ変わりました!!!

おっとこまえ~!!!

 

 

あ!そうだ!

ラジエータのドレンから冷却水が漏れていたのでそちらの修理と、

あと、全ユニットのリプログラミングも行っておきました。

 


本日もたくさん学ばせて頂きました!

 

ご用命、ありがとうございました<(_ _)>

 

 

修理に協力して頂いた青森の化け物(いい意味でね!)、

須藤ヂャイアントの須藤さん、資料ありがとうございました!!




 <参考データ:車両走行距離  66,000km>




※同じ内容の故障事例でも、作業内容や手順、個体差や経年劣化、部品価格の変動等により必ずしも同一価格・同一修理とはなりません。上記価格や修理内容を他の整備工場さんに強要する様な行為はお控え下さい。



 

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愛媛新聞社の「マイベストプロ」に掲載されました