トラブル修理-BMW 116i(E87)エンジンがかからない-これだから整備士はやめられない | フリークのブログ

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「それって幾らになるの??」にも、明確にお答えします(^^)

ある朝突然エンジンがかからなくなったBMWが

今治市からレッカーで運ばれての入庫です。

 

 

クランキングはしますが、初爆は全く無し。

 

火花は??

プラグを外して点検。スパークは問題無し。

 

燃料は??

スパークプラグに湿りは殆ど見られないけど、

診断機を繋いでのアクティブテストではポンプ動作確認。

 

圧縮は??

 

 

 

 

 

あらら・・・

 

N43B16エンジンの圧縮比は11.7。

基準圧縮圧力は全シリンダー10bar以上で正常値とされています。

10bar=1000kpa。

メーター読みで280kpa。

プラスマイナス10%程度で読んだとしても、

基準値の3分の1以下の圧縮という事になります。

 

 

 

 

 

これはもう、

よくあるチェーンテンショナー不良によるタイミングずれでしょう。

早速リフトに上げてヘッドカバーを取り外しに掛かります。

 

 

 

 

 

 

チェーンは既にこのたるみ(^^;

しかも、チェーンガイドが割れています。

破片は右側カムシャフトスプロケットの下に転がっていますが、

現状では取り除けませんので、

VANOSを外した後除去します。

 

 

 

 

 

 

 

ヘッドカバーを取り外した全貌。

ここからタイミングを順次合わせて行く訳ですが。

 

 

「タイミングテンショナー不良によるタイミング調整」に関する問い合わせが時々ありまして、クランク位置合わせの方法(ホール)が一体どこなのか??と質問されます。

 

なので、一歩引いた写真を撮りました。

 

 

 

 

 

エンジンオイルのオイルパンから見上げた状態です。

ここにSSTの端が見えます。

既に刺した状態です。

 

 

 

 

 

 

ここです。

 

オイルパンの上。

エンジンブロックの一部に穴が開いています。

 

 

 

 

 

SSTを貫いて刺さる穴はこちら。

フライホイールの一部にクランクシャフト位置決めの穴が開いています。

 

 

 

 

 

クランクシャフトが正位置となったところで、

リフトを下げてカムシャフトの位置が合っているのか、

ずれているならどれ位ずれているのかを確認します。

 

 

 

 

 

 

インテーク側カムシャフトから位置合わせを行っていくのですが・・・

 

下の方に出て来ますが、SSTを使って位置決めしている写真を見て頂くと、ずれている事が容易に分かって頂けると思います。

 

 

 

 

 

チェーンが落ち込まない様に、針金を使って吊り上げておきます。

 

 

 

 

 

チェーンテンショナーを取り外します。

 

 

 

 

 

 

割れていたチェーンガイドも交換しますので、

まずはソレノイドバルブを取り外し。

 

 

 

 

 

サービスプラグを取り外し。

 

 

 

 

 

1/4サイズの極細サイズでしたら、サービスホールからボルトを緩める事が出来ます。

 

 

 

 

 

チェーンガイド取り外し。

 

 

 

 

 

 

パルスホイールを取り外して、割れていた破片を取り出し。

 

 

 

 

ここから、カムシャフト側の位置調整をしながら折り返しです。

 

 

 

 

 

新品のチェーンガイドを装着。

左右のチェーンガイドも気になるけど、目視範囲では問題無いので今回交換は見送りに。

(本当は同時交換が望ましいのですが、左右ガイドの交換となるとオイルパン脱着その他諸々となり、工賃がどんどん上がってしまいます)

 

 

 

 

 

 

 

まずはIN側のカムシャフトを正位置に調整。

 

 

 

 

 

そしてロック。

この状態で、EX側のカムシャフトのロック部位は真上を向いていないといけませんが、

写真の通り、(時計で言うと)55分位の向きになっています。

 

 

 

 

 

 

EX側も正位置に調整をしてロック。

これで、クランクとカム、全ての位置が正位置となりました。

 

 

 

 

 

カムシャフトが正位置に調整出来ますと、

真上からヘッドボルトの脱着が出来る様になります(しませんけど)。

写真で分かる様に、ヘッドボルトにアクセス出来る様一部切り欠きがあるんです。

カムシャフトのロック部位の上下が分からない場合は、

この切り欠きが写真の様になっている向きが正解です。

 

 

 

 

 

チェーンガイドを装着して、

 

 

 

 

 

カムシャフトスプロケを軽く装着。

 

 

 

 

 

テンショナーを装着。

 

 

 

 

 

スプロケは軽く固定しているだけなので、パルスホイールはクルクル回ります。

SSTを使ってパルスホイールを正位置に固定。

 

 

 

 

 

既定トルクにて締付ます。

 

 

 

 

 

SSTを全て取り外して、クランクシャフトを回転させ、

再びSSTを装着して、全てが正位置でズレが無いかを確認します。

 

 

 

 

 

スパークプラグも点検。

 

 

 

 

 

交換します。

 

 

 

 

 

新品がこちら。

 

 

 

 

 

ヘッドカバーガスケットも新品に。

 

 

 

 

元に戻してエンジンを始動!!

 

イグニッションボタンを押すと軽快にクランキング。

そして、一発始動!!!!!

 

 

 

 

 

・・・しない。

 

エンジンがかからない。

 

 

なんで???

カムもクランクもパルスホイールもズレは無く、

テンショナーも新品。

 

えーーー!!!???

なんでかからないの???

 

 

燃料来てる??

アクティブテストでは動作確認したけど、

クランキング時本当に燃料ポンプ動いてる??

 

後席シートを取り外して燃料ポンプ確認。

N45用燃料ポンプは在庫しているので、早速交換。

 

でも、

やっぱりエンジンはかからない・・・

 

・・・

 

 

・・・

 

 

・・・

 

 

 

そして時間は夜の11時。

 

 

 

 

 

 

 

こんな時は、このまま考え込んでも深みにはまって行くだけ。

家に帰って、ゆっくりお風呂に入って、

しっかり寝て、

そしてもう一度基本から考え直す!!

 

 

・・・・・

 

 

整備士としてまだまだ若かった頃、

ダイハツ車のクランクリヤシールを交換する為エンジンとATをセットで取り外し。

リヤシール交換後エンジンにATを組み付けて車両に戻し、

無事にエンジン始動したのが朝の5時(^^;

 

が、しかし・・・

エンジンが快調なのにも関わらず、ATのシフトが全く入らない・・・

悔しいけど・・・・・・・、  完全に組み付けミス。

トルクコンバータがもう一段奥に入るのに、

一歩手前の所で入り切ったと思って組み付けたのが原因。

 

 

気を取り直して、再びエンジン取り外し。

トルクコンバーター装着をやり直して再び組みあがったのが朝の8時。

 

 

寝ずの朝の5時に、今からエンジン降ろし直しという事から比べると、

今回の事なんて(笑)

 

 

 

 

 

翌朝、気を取り直して再び基本からチェック。

 

 

 

 

1番シリンダー。

 

 

 

 

2番シリンダー。

 

 

 

 

3番シリンダー。

 

 

 

 

4番シリンダー。

 

この圧縮じゃ、ダメだ・・・

バルブクラッシュも疑ったけど、初爆も無い事から、

やはりタイミングずれが原因か??

 

ヘッドカバーを取り外してチェック。

 

 

 

 

 

 

狂ってる(笑)

 

おいおい・・・

 

チェーンの遊びをテンショナー側にしたつもりだったが、

寄せ方が甘かったのか???

 

 

 

圧縮測って、原因の推測がすぐにたって、

「あぁ、はい!はい!よくある、例のやつね!!」

なんて気持ちで取り組んだから・・・

 

 

 

 

なぁ、なぁ、おまえさぁ・・・

 

「整備」、・・・なめてるんじゃねーぞ!!!

 

って、鉄槌を食らった、、、、気がして。

 

 

 

調子に乗ってたら失敗する。

 

定期的に反省させられる。

 

本当に、奥が深いし、いつまで経ってもまだまだの一兵卒。

 

これだから、整備士はやめられない。

 

 

 

 

くそぉ・・・、本当に・・・まだまだ、だなぁ。

 

 

 

 

 

 

インテーク側のカムシャフトを回していくと、途中で回らなくなる。

恐らくバルブがピストンの頭に接触している。

バルブクラッシュを避ける為、インテーク側カムシャフトを取り外し。

 

 

 

 

 

スプロケも外してチェーンを釣り上げ。

クランクシャフトを正位置に合わせてロック。

 

 

 

 

 

続いてカムシャフトを正位置にロック。

 

 

 

 

 

エキゾースト側も少しずれていたが、こちらはそのまま回転させても接触無し。

SSTを使ってこちらもロックします。

 

 

 

 

 

カムシャフトキャップを既定トルクにて締付。

M6なので10Nです。

 

 

 

 

 

続いてパルスホイールをロックします。

 

 

 

 

 

クランキング出来る段階まで復帰させて、

 

一度全ての工具を片付けて、手を綺麗に洗ってからクランキング!

(いつも行う、儀式みたいなものです(笑) )

 

キュルキュルキュル ブー―――ン!!!!

 

今度は気持ち良くエンジンが始動!

いやー、本当に良かった(^^)

 

 

その後、再び圧縮比を計測。

全てのシリンダーで正常値、

吹け上りも問題無し、

試運転後のコンピュータ診断もエラー立たず。

 

最後に、

タイヤ空気圧やエンジンオイルレベル、冷却水量やウォッシャー液量、バッテリーの充電状態チェックと念の為満充電を行い、

全ての作業が終了です。

 

 

 

 

今回のエンジン始動不良では、

上記内容も含め以下の作業を行っております。


 ・エンジンタイミングずれ修正

 ・タイミングチェーンスライドレール交換

 ・タイミングチェーンテンショナー交換

 ・ヘッドカバーガスケット交換

 ・スパークプラグ交換

 ・コンピュータ診断機接続チェック他


今回の修理ご請求額は、 ¥99,660- となっております。


ご用命、ありがとうございました<(_ _)>


 
 <参考データ:車両走行距離  109,040km>

 

※同じ内容の故障事例でも、作業内容や手順、個体差や経年劣化、部品価格の変動等により必ずしも同一価格・同一修理とはなりません。上記価格や修理内容を他の整備工場さんに強要する様な行為はご遠慮下さい。

※「エラーコードが〇〇ですが、原因は何ですか?」という問い合わせを同業者さんから頂く事がありますが、仮に同じコードであっても、原因が必ずしも同じとは限りませんし、診ていないお車の故障診断をコードだけで行う事は無理ですので、ご理解下さい。

 

 

 

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