『カムフロムアウェイ』@日生劇場 | Capricious Bookshelf

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MyFavoraite/浦井健治・赤楚衛二・上川隆也・STING・ALESSIACARA・特撮(戦隊シリーズ&仮面ライダービルド)/編み物





【STORY】

 9月11日 あの日、世界が停止した。

 9月12日 ある小さな町で起きた奇跡の物語。
 この物語は私たちに、世界に希望を与えた。

 2001年9月11日、ニューヨークで同時多発テロ事件の発生、アメリカの領空が急遽閉鎖された。

 目的地を失った38機の飛行機と7,000人の乗客・乗員たちを乗せた行き場のない38機の飛行機は、カナダのニューファンドランド島のガンダー国際空港に降り立つ。
 カナダの小さな町。わずか1万人の人口は一夜にして約2倍となった。人種も出身も様々な人々はこの地でどんな5日間を過ごし、飛びたつのか―(公式HPより)

【CAST】

 安蘭けい 石川禅 浦井健治 加藤和樹 咲妃みゆ シルビア・クラブ

 田代万里生 橋本さとし 濱田めぐみ 森公美子 柚木礼音 吉原光夫(五十音順)

 〈スタンバイキャスト〉上条毅 栗山絵美 湊陽奈 安福毅

【感想】

 3月28日、お昼の回に搭乗して来ました。

 悩んで、悩んで、ギリギリで取ったチケットなので後方しか空いていませんでしたが、今回はそれで良かったと思える内容でした。

 「ミュージカル界のアベンジャーズが集結」と言われているように、とにかくキャスト陣が豪華!

 もちろん、メインで観たいのは浦井君なのですが、とはいえ、みなさんもちゃんと見たいわけです。

 

 まず言えるのは、この作品に出会えて良かったということです。

 9.11のあの日の衝撃は今でも忘れられません.

 自室でなんのけなしにTVをつけて、流れている映像を見た私は「何かのパニック映画を放送してるんだな」と判断、一度スイッチを切りました。

 その直後です。携帯から聞き慣れないアラームが鳴り響き、驚いて画面を見てみると、そこにテロの速報が。

 こんなことが現実に起こるなんて、と愕然としたことを今でもはっきりと思い出すことができます。

 米国の領空が閉鎖されたというニュースも聞いていたはずですが、当時の私は領空が閉鎖されるということが具体的にはどういうことなのか、まったく想像しようとしていませんでした。

 この作品はテロを描いているのではなく、行き先を失った38機もの飛行機に乗っていた乗員と乗客の物語でもあり、彼らを受け入れたニューファンドランド島の小さな町ガンダーの人々の物語にもなっています。

 登場人物は100名以上、それを12名の俳優 ———それも、主役級の!——— で演じ分けるという、今までにないスタイルの作品。

 雑誌のインタビューやラジオ等で、お稽古がいかに大変かという話を見聞きしていましたが、舞台上では物凄いことが起こっていました。主役級の俳優さんたちが、自分のためだけでなく、仲間のためにも椅子や小道具を動かしたり、コーラスやハモりを担当したりしているんです。その、誰かのために動く姿が、劇中の登場人物たちと重なるんですね。

 登場人物たちは大きく2つ、何が起きたかも知らされないまま狭い機内に28時間も閉じ込められていた乗客たちと、彼らを受け入れるために町中を駆けずり回って必要と思われるものを掻き集める島の住民たちとに分けることが出来ます。

 乗客の中には、国籍も違えば、信仰している宗教も異なる人もいて、それぞれ言語が違い、それぞれの価値観がある。物理的だけでなく心理的にもかけ離れた距離感があるわけです。

 そんな人々の距離が島で過ごすうちに近付いていく。その一方で恋人同士だった2人がこの経験を通して、別れを選ぶことになったりもする。たった100分の中に、色取り取りで濃密な人間ドラマがたっくさん、詰まっている作品なんです。

 

 どこに感情移入出来るかは、人ぞれぞれでもあるし、そのときの自分の状況によっても違ってくるだろうと思います。

 舞台を観ているときは「なんでこのガンダーの人たちはこんなにあっけらかんとしているんだろう」と思いつつ、ノンストップの100分間、ついていくのに必死で深く考える余裕はありませんでした。

 とにかくいろいろなことが詰まっているので、帰宅途中も頭の中はまだいっぱいいっぱい。帰宅して少し経ってからやっと気持ちが落ち着いてきて、そこからパンフレットに書かれた島の歴史や文化、気候を読むことで、自分の中でいろいろと整理されてきて、なるほど、と唸らされました。

 今回、観た中で深く印象に残ったシーンを挙げるとすると、機内から地上に降り立った人たちが一番必要としたものが電話であったということを伝えるシーンと、言葉が通じずに不安がるバスの乗客に運転手が彼らの持つ聖書を使って「汝、案ずることなかれ」と伝える方法を取ったこと。

 実際に起こったことを基に描かれた物語だと思いつつも、舞台を観ているとやはり、フィクションだと思ってしまう自分がいて、この2つのシーンで「これはノンフィクションだ」と頭を何かで殴られたような感覚を味わったんです。

 私はここでそう感じたというだけであって、人それぞれにこういう思いを味わう場所がきっとある作品なのだと思います。

 

 この作品を観たことで知ることが出来たたくさんのことにまず感謝しましたし、これから少しでもちゃんと知っていきたいという思いも芽生えました。

 戦争や天災が増えている今のこの時代だからこそ、この作品が世界中で上演される意味があると思いますし、日本でもこれからも再演されていってほしい作品だと思います。ただ、同じキャストでの再演は難しいだろうなぁ。

 

【Actor‘s Check!】

 今回のキャスト、みなさんが主役級の方ばかり!という、奇跡のような布陣。

 実力も華も個性もある12名の素敵な方ばかりなので、これって、個性のぶつかり合いがあるのではないか、という危惧もありましたが、まったくの杞憂でしたね、要らぬ心配でした💦

 それぞれの音域を考えて、オリジナルキャストとはパートを変えている部分もあるそうで、みなさんの個性を潰すことなく、調和させたハーモニーが、ときに美しく、ときに悲しく、ときに陽気に、とても心地よく、耳に心に響いて来ました。

 歌だけでなく、動きもセリフも、その合間に行う小道具類の動かし方までもがカウントで決められているという厳しい制約の中、そこはベテランの俳優さんたちですね、それぞれの持ち味をちゃんと活かして、笑いもあっての素晴らしい群衆劇を見せていただきました。

 みんなを見たい!と思って選んだ座席はかなり後方列の通路側だったので、ちゃんと全体が見渡せる席だったので、とにかく目が忙しかったです。

 歌あり、ダンスあり、小道具のセッティングあり、と集中力を途切れさせられない舞台上で、みなさんが輝いていて、本当に素敵でした。

 

 そんな中で、個人的にどうしても注目したいのは、浦井君、濱めぐさん、さとしさん。みなさん、好きだし、素敵でしたけど、このお三方は別格で、本当に大好きなんです。

 濱めぐさんの歌にいつも泣かされて来ましたが今回も例外ではなく、沁みましたし、さとしさんのあの包容力とチャーミングさが最高です。

 

 浦井君はですね、ベテラン勢の中で若手になってしまうという珍しい立ち位置で、楽しそうにのびのびと演じているのがとにかく新鮮で印象的でした。

 あの、地味な衣装でも華を感じさせる佇まいと、万里生君演じる現実主義のケビンJとの対比が見事に活きる天真爛漫さと順応力を本当にのびのびと演じていて、癒しでした。

 そして、まさかのブッシュ大統領の演説!これはかなりレアですし、私的にサービスシーン💕

 

 チケットを取った数日後に公式さんから配信を含めた映像化の予定がないというアナウンスがありましたが、とにかく今回、この舞台に出会えたことに感謝です。