I cannot forget what he said.
「君は自分の魅力に気付いていない」
昔、あの人は私に言った。
薄暗い倉庫の中で
私の目を見つめて言った。
まだ幼い私と、随分大人だったあの人。
私にとって、最初はゲームみたいだった。
そのうちに、本気になっていった。
あの人は、いつだって私を子供扱い。
だから私も、キスされるまで実感なかった。
いつから変わったんだろう?
私たち、許されない恋なのに
お互いに何かを感じていた。
それから何年も
すれ違い。
今じゃそれぞれ別の相手と暮らしてる。
あの人はもう、私を何とも思っていないことも分かってる。
でも、私は今でも
あの人の夢をよく見るの。
いつも忘れられない。
「君は自分の魅力に気付いていない」
その言葉、シチュエーション。
今日ドラマで、同じ台詞を聞いた。
歯の浮くような、そんな言葉。
実際に言われたあの日、
私は多分あの人を本気で好きになってた。
「笑顔が可愛い」
そんな風に、不意にいつも私を可愛いって言ってくれた。
あの人は、ズルい。
追えば去り、
去れば追われた。
彼女がいても、
私を求めた。
階段に座って、寒い冬の日
あの人を待っている彼女を見た。
愛されてるのに
私を求めた。
そのくせ
彼女を手放しはしなかった。
そしてそれから数年後
「あの時イエスと言えば良かった」
そう言った。
あの日
「彼女と別れるなら、抱いてもいいよ」
そう言った私に
あの人は
イエスと言えず、私たちは終わった。
「あの時、イエスと言えば良かった」
もう遅かった。
私には恋人がいた。
でも
あの人は私を待っていた
彼と別れて
あの人を選べば良かったのかもしれない。
でもできなかった。
「女心と秋の空だな」
笑って、あの人が言った。
その言葉も、忘れられない。
結局、私たちはいつもすれ違い。
何年も、結局付き合うこともなく
付かず離れずのまんま
でもね、
お互いに恋人がいても
手を繋いで歩いたりしなくても
明け方まで長電話したり
何でも言い合えて、弱音も聞かせてくれて
あの人はいつも悪者役で
嫌われ役をやっていた。
怖いイメージと裏腹に優しい面もあって、
私にはそれを見せてくれてた。
特別な存在に思えた。
恋人にも話せないこと、
あの人には話せた。
結婚したいと言ってくれた。
付き合ってもいないのにね。
私たち、
付き合ってもいないのに
2人の未来の話をしていた。
現実になんかならない、未来の2人。
楽しかった。
あの人は、私の逃げ場みたいだった。
自信満々、
自意識過剰、
上から目線、
性格いいとは言えない人。
でも、可愛いところ沢山あって
年上で頼り甲斐もあって
たまに見せる弱さが愛しく思えた。
あの人と、付き合っていたら
どんな2人になっていたかな。
今でも、たまに連絡を取り合う関係。
でも、もう昔の関係じゃない。
あの不思議な感覚を、忘れられない。
恋人じゃないし、恋愛じゃない。
でも、友達ではなかった。
いつまでも忘れられない。
忘れたくない。
君は自分の魅力に気付いていない。
こんなこと言ってくれる人は
きっともういない。
あんな言葉、
あの人が最初で最後。
今でも好きだよ。
きっといつまでも好きだよ。
ありがとう。
私に自信をくれた人。
そう。あの人はいつも私に自信をくれた。
上司として私の仕事を認めてくれた。
恋愛対象として見てくれて、いつだって可愛いって言ってくれた。
いつも私の自信を育ててくれたし、
この人のために頑張りたいと思えた。
必要とされてる、認めてもらえてる、
努力を評価してくれてる。
そう思えたから、私はこんな自分を好きになれた。
私に厳しいことも容赦なく言うあの人だったからこそ、褒めてくれたり認めてもらえることが嬉しかった。
今の私は
毎日自信を奪われるばかりで
自尊心を奪われるばかりで、
女性としても、人としても、存在価値のない、必要のない人間として扱われている。
生きていていいのかすら分からないから、
生きる価値も見出せないから。
毎日消えてくれと罵られながら生きているから、
だからそんな時に
私の支えになっているんだ。
あの人からの、あの言葉が。
君は自分の魅力に気付いていない。
忘れられない言葉。
忘れられない人。
今でも、きっとこれからも。
It was not from the beginning.
それは遠い昔、
愛していたし、愛されていた。
信じていた
優しい人だと思っていた
幸せに近づけると思った
ひらひら、はらはらと
花びらが舞う中
私たちは祝福され
笑ってた
そして誓った。
支え合い、励まし合い、思い合い、
どんな時も全てを分かち合えると
そう思った。
どうして?
こんな未来が待っているなんて
どうしたら知り得たの?
私たちは、愛を壊したんじゃない。
私たちは、初めからなかったものに
気付かなかった。
あなたは、初めから私を愛していなかった。
ただ、一時の高揚感を
愛だと勘違いしていただけ。
あなたには、
私を受け入れる気も、受け止める気も、
供に乗り越える気も、苦しみを半分こする気も、なんにもなかった。
そんなこと、する気もなかった。
楽しい時だけ分かち合い、
苦しい時には逃げ出した。
一緒に背負うでもなく、
側で励ますでもなく、
あなたは、
私を疫病神のように罵り
存在を否定し
私のせいで人生は台無しだと
毎朝、毎晩、毎日
私に怒鳴り散らした。
毎日、毎日、毎日、毎日、毎日
来る日も、来る日も、
何度も、何回でも、
私が死にたくなるまで、ずっとずっと。
昨日も、今日も、きっと明日も、
これから先もずっとずっと。
やめて、もうやめて。
私は泣きながら、叫びながら
思った。
ひらひら、はらはらと
舞い散る花びらの中で2人
笑ってた。
幸せそうに。
あの日を思った。
I felt as if I were dreaming
あの日、あなたは私をからかっているのかと思った。
あなたは私とは別世界の人。
みんなが憧れる人。
選ばれるはずのない私に、
どうしてあなたは笑いかけてくれたの?
あなたに興味なんかなかった。
ちゃんと名前さえ知らなかった。
そんな私に、あなたは笑った。
無邪気な笑顔だな、と思った。
冗談かと思って、信じられなかった。
キスされて、これは本当なんだと思えた。
私もあなたも、孤独だったよね。
華やかな場所にいても、いつも1人な気がしてた。
過去の恋に、傷ついてたよね。
だから2人、話してると落ち着けた。
それからあなたとは
メールで毎日話をした。
実際に会うのは難しかった。
あなたはいつも、誰かに見られている。
だから、私たちは秘密を守っていた。
恋人じゃないし、付き合おうとも言われてないけど、2人は特別な気がした。
私のひとりよがりかもね。
でも、あなたに救われたよ。
誕生日。
私の誕生日に、
「おめでとう。1番乗りだといいな」
そうメールをくれた。
あの時は、ほんとに嬉しかった。
本気で好きになっちゃいそうだった。
でも、
すぐに私たちは引き離され、
何もなかったみたいに、あなたは消えた。
何もなかったよ。
実際。
1度のキスと、繰り返したメールだけ。
それだけだけど。
それでも、
2人には何かがあったと感じてる。
ひとりよがりかもね。
だけど
今も応援しているよ。
最後の電話で、何度もごめんねって
あなたは言ってくれた。
誠実さが伝わってたよ。
私たちの事は絶対秘密。
今までも、ちゃんと守ってたよ。
これからも、あなたを目にする機会は沢山沢山あるけれど
その瞳に私を映した日があったこと、
私の胸の中、大切に隠しておくよ。
あなたは私をもう忘れたかな?
もう忘れたよね。
大勢の中の1人だったと思う。
単なる暇潰しだったのかもしれない。
それでも、
私だけのように感じさせてくれた。
それが演技でも、
私をちゃんと騙してくれた。
ありがとう。
ずっと、遠くから応援しているよ。
Your mark
もう何年も前
遠く昔
あなたの跡を早く消したくて
彼に抱かれた
焦るように。
そして
私は誰にも知られず涙を流した。
それから
またあなたに再会した夏に
私たちは、そこに愛がなくても
抱き合い眠った
そして
悲しみはより深く深く
私は抜け出せずに、沈んでいった。
あなたは、私を別の誰かの名前で呼んだ。
私は、おどけて笑ってみせた。
あなたに笑顔を向けるほどに、
他では全て泣いて過ごした。
あなたには笑顔を見せ続けた。
あなたを失いたくなくて
心は隠した。
私の心は壊れていった。
大切なものを沢山傷つけた。
多くのものを捨てた。
それでも、あなたといたかった。
愛されていないと知っていても
繋がっていたかった。
心が繋がれないなら
せめて身体だけでも。
あなたにとって
私は過去の亡霊でしかなく
夏は去り、秋が訪れ
2人最後の海。
キラキラ輝く夕陽を眺めた。
これで終わる。
愛しくて悲しくて、恋しくて憎くて、
切なくて苦しくて、こんなに愛してる。
そんな全てが、終わる。
2人で、夜に包まれるまで抱き合った。
キラキラ輝く夜景を眺めた。
約束の日が来るまで、
さようなら。
私たちはまた会えるから。
必ず会えるから。
2人、最後のキス。
いつもみたいに、バス停でバイバイ。
それから
季節は巡り
長い冬を越え、春が訪れた。
私は、あなたの跡を消したくなくて
ずっと、ずっと、手放せなかった。
あなたが完全に私から消えてくみたいで
怖かった。
そんな想いと別れるために
あなたをもう、私の中から消すために
私は彼に抱かれた。
さよなら。
あなたの跡を、
私は消し去って
誰にも知られずに、涙を流した。
magic word.
いつも、どこかで思ってる。
だけど、口にはしないでいる。
I want to die.
秘密の言葉。
誰にも言わない。
私だけの魔法の言葉。
だって私は幸せで
だって私は恵まれていて
だって私は母親で
だって私には家族がいて
だって私は健康で
だから、口にしてはいけないの。
少しでも言葉にして放てば
たちまち私は悪者で
最低の妻で、母で、子供で、友人なる。
だから、この言葉はお守り。
この世界から消えてなくなりたい時に
私はそっと呟く。
誰にも聞こえないように
ベッドにくるまって。
I want to die.
私には希望の言葉。
何よりも救いになる言葉。
どこにも逃げ場所のない毎日の中
最後の砦みたいに輝いてる。
どうしても、どうしても辛くなったら、
もしそうなったら、いいんだよ。
来てもいいんだよ。
逃げていいんだよ。
何もかも捨てて、最低の人間になって、
自分のことだけを考えて、
自分勝手な選択をしたっていいんだよ。
だから、今はまだ頑張りなよ。
もう少し、頑張ってみてよ。
どうしても無理なら諦めていいから。
だから、今日は踏ん張りなよ。
いつだってすぐ側で待ってる。
いつだって受け入れてあげる。
君の最後の道になってあげるから。
「死」は、私にそう語りかけている。
いつの日も、私の側で。
あなたがいるから、私は生きられる。
どうしても、どうしても苦しい時は、
あなたが私を救い出してくれると知ってる。
この世界から、この現実から、
逃げ場のない毎日から、
あなたが助けてくれるから。
だから、私は今も生きている。
あなたを心の支えにしてる。
拠り所にしてる。
みんなが怖がるもの。
避けたがるもの。
だけど私にとってあなたは
安らぎで、希望で、拠り所で、逃げ場で、毎日のように夢見てる。
あなたを想うと安心できる。
どこにも行けない私にも、行ける場所がある。
泣いてばかりの毎日を、ちゃんと終わらせることだって出来る。
そんな風に思っていると、
まだ生きていたいとも気付かされる。
いつだって行ける安らぎの場所がある。
だから今じゃなくてもいいや。
そう思って、今日も生きられる。
I want to die.
私は消えてなくなりたい。
今日も
誰にも聞こえないように呟く。
生きていくための、魔法の言葉。





