No.15「想いさえ持ち続けていれば、始められるタイミングがきっと来る」挑戦内容:フラダンス | 挑戦記インタビュープロジェクト

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キャンサーペアレンツ会員たちの挑戦記をご紹介していきます。



名前:桜林 芙美 さん
年齢:40歳
仕事:AYA GENERATION + group(アヤジェネレーションプラスグループ 愛称:アグタス)代表、フラダンスアシスタント
家族構成:10歳の双子、8歳の3女とご両親
疾病:乳がんステージ4
罹患時年齢:35歳

概要:2015年、乳がん(HER2陽性)と診断され、2016年に術前抗がん剤治療後、左胸の全摘出とリンパ節の切除を行う。術後、抗がん剤、分子標的薬、放射線の治療を開始。2017年11月に肺への転移が確認され、ステージ4と診断。抗がん剤治療、分子標的薬2剤の治療を開始し、2ヶ月後に抗がん剤を終了。現在は3週間に1度の分子標的薬2剤の点滴治療を継続中。


◆がん宣告前後◆
Q・がん宣告前後の状況を聞かせてください。
待機児童だった3女が入園し、仕事にも就き、ようやく生活が整いそうという時期のこと。それ以前から体調不良になることが増えていました。でも、「疲れやすいのは自分が甘えているからだ!」と気持ちを奮い立たせては、また体調を壊す、その繰り返しをしていました。

そんな時、乳頭が痛み、ただれるようになってきたんですよね。 完全母乳の授乳後だから、デリケートになったのかなと思っていたものの、あっという間にしこりが現れ、どんどん拡大してきた。そこで、乳がんを疑い、乳腺外科クリニックを受診しました。結果は、その日のうちに、ほぼ乳がんと確定。 検査後、若年性乳がん・ステージ2b・リンパ節転移あり・HER2タイプと判りました。


Q・そのときの心境はいかがでしたか?
仕事にも就き、「さあ、これから!」という時期でしたから、がんに罹患したショックよりも、そのタイミングの悪さが今でも思い出されますね。ひとり親である私は「子どもたちのこと、どうしよう…」 と、そのことばかり考えていました。


Q・そこからどのように頭を切り替えていったのですか?
以前勤めていた会社は、ピンクリボン運動をしていました。 そのため、20代でマンモグラフィー経験もあり、乳がん経験者と接する機会もありました。出会った方々の多くは明るく前向きで、中には全摘した後の傷を見せてくれる方もいらっしゃいました。

そのような経験から、乳がんだからといってそれほど大きな恐怖心はありませんでした。「せっかくならこの病気を価値あるものにしたい!」とそんな気持ちでした。

その後、若年性乳がんの患者さんがいるコミュニティや、イベントに積極的に参加して、たくさんの同志や友だちに出会い、悩みを共有したりしました。 もっと乳がんのこと学ぶために、BEC(乳がん体験者コーディネーター)にもなりました。


◆挑戦について◆
Q・現在、どんな挑戦をされているのですか?
フラダンスです。最近は、コロナウィルス感染の影響もあり、なかなか思うように活動できていないのですが、がんに罹患してから始めたので、早5年近くになりますね。


Q・なぜその挑戦を始めようと思ったのですか?
私の母はフラダンスの講師で、いろいろなところへ教えに行ったりしているんですよね。そんな母の姿を15年以上前から見ていたものの、私自身正直フラダンスには一切興味がなかったんです(笑)。

一方で、がん告知の少し前から、フラダンスと同じと思われることもあり、また激しい踊りが特徴の「タヒチアンダンス」に惹かれて、学び始めていました。もしかしたら、その頃から、「フラダンス」にも少しずつ興味が芽生え始めていたのかもしれません。

がん告知後は、今後、家族や子どもたちとどうやってかかわっていこうかと真剣に考えるようになりました。

これまでのように、公園や子ども向けの催事などに連れて行き、3人の子どもたちを抱えて動き回るといったハードなことはできそうになかったですし、子どもたちの面倒を見てくれる両親にも何か恩返しがしたかった。そんな考えから、母が講師を務める「フラダンス」なら子どもたちとも一緒にできるし、家族の時間ももっと作れるんじゃないか、と思い立ちました。



Q・その挑戦は桜林さんにとってどんな意味を持っていますか?
私、大人になってからフラダンス以外で号泣した記憶がないんです。がん告知されたときでさえ涙は出なかった。感情表現がうまくないんでしょうね。その分、無意識のうちに、自分の中にさまざまな感情を抱えていたんだと思います。

でも、フラダンスでとある舞台に立ったとき、終わった後に、ドバーッと涙があふれてきてしまって。そのとき、なんだか自分のこれまで抱えてきたさまざまな感情が浄化されたような感覚があったんです。これは恐らく、踊りを通じて感情表現ができるようになったからこそ味わえた感覚なのかなと思いました。

口下手で感情を表に出すのがあまり得意ではない私にとって、フラダンスは感情表現を後押ししてくれる、今の私にとってかけがえのない存在。まさに、「Hula is Life」です。

ちなみに、フラダンスは、リンパ郭清をした際、浮腫がひどかった腕のリハビリにもなりました。生きがいにもなり、あたたかく見守って応援してくださる方々との出会いにも繋がる。そんな素晴らしい機会をもらえたことに感謝したいですね。



◆皆様へメッセージ◆
Q・これから何かに挑戦しようとしている方に、挑戦することの重要性を伝えてください。
こんな私に母はよく冗談でこう言うんですよ。「でしょー、だからずっと前から『やればいいのに』って言ってきたじゃない!」って。

まあ今ではその通りだと思うんですけど、ただ、私の場合、がん罹患後に、家族とのかかわり方を真剣に考えていたタイミングで始めたことが良かったのかなと思っているんです。

何か新しいことに誘われたり、やろうと思ったりしたとしても、少しでも自分の中に迷いがあるときは、私はあえて待ってみてもいいんじゃないかなと考えています。

いつかやろう、やりたい、という想いさえ持ち続けていれば、きっと自然に始められるタイミングが来るんじゃないかと。

特に、がん告知後は、なかなか気持ちが上向いていかないこともあるじゃないですか。そんな中で、頑張って、無理に新しいことを始めても気持ちがついてこないこともあると経験上感じています。

どうか、皆さんのお気持ちとタイミングを大切にしてほしいです。そして、「今ならできそう」という状況がやってきたときにこそ、一歩踏み出してもらいたいですね。



……桜林さん、本日はありがとうございました!

(了)

【取材日:2020年11月18日】


【ご案内】
桜林さんが代表を務めるAYA GENERATION + groupにとって、初の1日オンラインイベントが開催されます。


名称:AYAまつり
日時:2020年12月5日(土)9時〜17時
内容:
小児・AYAがん経験者さん、そしてその後40歳以上となったプラス世代のがん経験者さんをメイン対象としたオンラインイベントです。

「がん」や「AYA世代」について知りたい方、どなたでもご参加いただけます。*交流会など一部を除く。

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