No.13「つながりが私に生きる力をくれたから……」挑戦内容:「CP友の会」の立ち上げ | 挑戦記インタビュープロジェクト

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キャンサーペアレンツ会員たちの挑戦記をご紹介していきます。




名前:西脇博美さん
年齢:46歳
仕事:パート
家族構成:夫、長女、長男
疾病:乳がん
罹患時年齢:43歳
概要:
2016年12月中旬、何気なく触っていた時にシコリに気づいて受診。生検を経て2週間後告知。手術目前の2017年1月、腎盂腎炎で緊急入院。引き続き右胸全摘手術。3月初旬から6月下旬まで抗がん剤(ドセタキセル、エンドキサン)を6回投与。現在はタモキシフェンを服用中(ホルモン療法)。


◆がん宣告前後◆
Q・がん宣告前後の状況を聞かせてください。
すべての始まりは、休日に何気なく首の辺りを触っていたときにシコリに気づいたことでした。その後、生検を受け、結果として「乳がん」であることを告げられました。

告知された時は、子どもも2人いるし、パートの仕事やPTAの役員もやっているのに、と大きな戸惑いがありました。2017年1月に手術、3月から抗がん剤、7月からはホルモン療法を行い、現在に至っています。


Q・そのときの心境はいかがでしたか?
がん宣告され、治療方法を提示されたとき、一番気がかりだったのは、「脱毛」でした。抗がん剤の投与が治療計画に組み込まれていたので、そうなればいずれ髪の毛が抜けていくんだと。吐き気や倦怠感といった苦しさはもちろん、外見の変化に強い恐怖感を抱いていたことが忘れられません。「自分の何が悪かったのだろう」「なぜ、自分が?」「家族に申し訳ない」という気持ちでした。1人になると、ネットで病気の事ばかり検索していました。


Q・そこからどのように頭を切り替えていったのですか?
まず、何といっても主治医の先生に救われましたね。最初は、「病院の先生は忙しいだろうから、なかなかゆっくり話を聴いてはもらえないだろうな」と思っていたんです。でも、その先生にお会いして、先入観が吹き飛びました。

子どもにどうやって病気のことを伝えるか悩んでいることを相談したら、「私からお子さんたちに伝える時間を取りましょうか」と手を差し伸べてくれたり、ネット情報の渦に巻き込まれている私に対して、「知りたい情報があるなら、私に直接聞いてもらって大丈夫ですよ」と声を掛けてくれたり。

そういって寄り添ってくれる先生の存在が、当時の私にとってどれだけ有り難かったか。
今では、些細なことも先生にご相談します。
幸い、抗がん剤の副作用で心配だった、吐き気や嘔吐がなく、パートの仕事も再開できました。
仕事をすることが、気分転換にもなったと思います。

もう一つ、2017年3月に開始した抗がん剤治療の直前に入会したキャンサーペアレンツ(以下、CP)の存在にも救われましたね。

当時は確かまだ会員が700名程度だったと思います。がん種などを問わず、子どもを持つがん罹患者だけで構成されているそのSNSサイトが、私に居場所を与えてくれました。

CPのサイトには、「日記」コーナーという、会員が自由に書き込みをしたり、閲覧して返信したりできる機能があるのですが、そこで自分と同じように闘病している方のコメントを読んだり、やりとりをさせてもらったりしているうちに、「あー、一人で闘っているんじゃないんだ」と思えるようになっていったんです。他のSNSサイトなどに比べて、炎上したりする事が少ないのも魅力ですね。皆さん近しい体験をしていて、読み手のことも考えてコメントを書いていますし、私自身も、「ここならもう少し自分の状況や悩みを打ち明けても大丈夫そうだな」という安心感をもってコミュニケーションができています。



◆挑戦について◆
Q・現在、どんな挑戦をされているのですか?
2020年6月に「CP友の会」を立ち上げ、現在はサポーターが30名弱を数えるまでになりました。もちろん、今後もサポーターを継続的に募集していきます。

新たに入会された方や、「相談、質問」を投稿された方たちの日記やプロフィールを読んで、「ありがとう」「応援します」と返信をする。また、相談や質問に答えることができる場合はコメントするなど、双方向のコミュニケーションが一層進むといいなというのが立ち上げの想いです。


Q・なぜその挑戦を始めようと思ったのですか?
現在CPは会員が3700名を超え、日記の投稿数も日に日に多くなっています。そのこと自体は喜ばしいことだと思うものの、一方で、一つひとつの投稿がともすると埋もれてしまうことが残念だと感じ始めていて。また、投稿数が増えると、当然その内容も多様化してきます。自分の経験だけで答えるのが難しいような質問や相談もあります。だから、少なくとも一つひとつのコメントが埋もれたり、スルーされてしまったりすることがないよう、サポーターが力を合わせて、関わり続けていければと思ったんです。

SNSとかもそうですけど、やっぱり投稿したのに反応がないのって寂しいじゃないですか。それが例えば、「ウィッグって、どこで、どういうものを選べばいいのでしょうか?」みたいな質問だとしたら、できる限り持ちうる知識や経験で答えたい。もし私が気づかなかったとしても、他のサポーターからでもいいんです。

そして、こうしたやりとりは、発信した側だけではなく、回答した側にとっても「自分にもできることがある」という充実感を感じることにつながると信じています。


Q・その挑戦は西脇さんにとってどんな意味を持っていますか?
2020年5月に惜しまれつつお亡くなりになられたキャンサーペアレンツ代表のぐっち(西口洋平)さんが亡くなる直前、開催されたオンラインイベントでこうおっしゃっていました。

「これからはみんなでキャンサーペアレンツを作っていってください」と。

この言葉を聞いたとき、「あー、これまでは運営の方々に頼っている自分がいたな」と、ハッと気づかされました。こんな自分にも何かできることがあるんじゃないかと。

自分自身、キャンサーペアレンツ入会後、数ヶ月間は日記を投稿したり、コメントすることができず、ひたすら閲覧するだけの日々でした。誰かと関わりを持ってしまったら、お別れが辛くなると思ったからです。閲覧するだけでも十分力をもらえましたが、やはり勇気をもって具体的に行動(投稿)を起こすようになってから、悩みや想いが少しずつ解決に向かっていった記憶が残っています。

日記(特に相談事や悩み事)を投稿したとき、何らかの反応があると心強いですよね。なので、新たに入会した方や、以前からの会員の方でも、悩みを思い切って相談された方が「入会して良かった」「自分も日記を投稿してみよう」「誰かとつながってみよう」「相談(質問)して良かった」と思える仲間を目指しています。

もちろん読むだけでも十分ですが、日記を投稿したり、コメントを書いたり、つながり申請をすることで、より多くの人とつながって、それがお互いの生きるチカラになるはず。

いつかは全員がサポーターになって、「もう友の会いらないんじゃない?」と言われるくらいになればいいなぁと思っています。




◆皆様へメッセージ◆
Q・これから何かに挑戦しようとしている方に、挑戦することの重要性を伝えてください
今も私に寄り添ってくれている先生とキャンサーペアレンツ。この両者の存在なくして、私はこんな前向きな気持ちになれなかったでしょう。そんな感謝の気持ちを抱き続けていますので、私自身も、誰か辛かったり助けを求めたりしている方の、少しでも力になりたいと思っています。

「挑戦」というとちょっと難しい印象を持たれるかもしれませんが、誰かのために勇気をもってひと声掛ける。それも一つの挑戦なのではないでしょうか。

「つながりは生きる力になる」。生前、ぐっちさんがおっしゃっていたこの言葉を胸に、これからもキャンサーペアレンツを作っていきたいです。

……西脇さん、本日はありがとうございました!

(了)

【取材日:2020年7月13日】


【参考】西脇さんの日記記事
「みんなで作るCP〜 『CP友の会』サポーター募集」