No.12「意志あるところに道は開ける」挑戦内容:Amebaブログ連載 | 挑戦記インタビュープロジェクト

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キャンサーペアレンツ会員たちの挑戦記をご紹介していきます。



名前:山梨 富美さん
年齢:43歳
仕事:会社員(ダイバーシティ推進)
家族構成:夫、長女(5)、長男(2)の4人家族
疾病:乳がん
罹患時年齢:39歳
概要:2014年に長女を出産後、1回目の乳がんが発覚し左右両胸を全摘、再建手術を実施。しかし、全摘手術からわずか1年半後の2017年8月、再び胸骨にしこりを発見。検査の結果、新たな乳がんが見つかり、さらに肝臓にも転移。ステージ4の宣告を受ける。合計34回の抗がん剤治療でがん細胞は消滅。2020年2月に骨盤への骨転移が発覚。


◆がん宣告前後◆
Q・がん宣告前後の状況を聞かせてください。
2014年に乳がん(ステージ0【右】)とステージ1【左】)が発覚したのですが、その際、将来のリスクを最低限にするため左右両胸の全摘をしていましたし、リンパ節転移もなかったので、その後治療は行っていませんでした。

そんな中、約1年半後、乳がんの再発と肝臓への転移で、ステージ4であることを告げられました……。


Q・そのときの心境はいかがでしたか?
さすがにショックを受けましたね。宣告後からしばらくは、気力をすべて奪われてしまったような精神状態が続きました。

ちょうど同じ年の6月に小林麻央さんの訃報を聞いていたのですが、私も同じように「乳がんステージ4」と宣告されてしまったわけですから。

しかも、当時、第二子を妊娠していて、すでに妊娠9カ月という状況でした。「パニック」という言葉はまさにこのようなときに使う言葉なのだと思いましたね。


Q・そこからどのように頭を切り替えていったのですか?
検査などの結果、妊娠中でも抗がん剤を使って治療を行うことができると主治医から伝えられました。また、治療をしながら出産も諦めずにできるということも分かりました。

「もしかしたらどちらかを諦めなければならないのかも……」と不安を感じていたので、希望が見えた瞬間でしたね。

それからはとにかくできるだけ余計なことを考えないよう、目の前のこと一つひとつに集中するよう心がけました。



◆挑戦について◆
Q・現在、どんな挑戦をされているのですか?
2017年の再発の前後に始め、今も続けている「Amebaブログ」です。もともと別のブログで、ランチで食べたものや旅行先の出来事なんかを日記程度に書いていたんです。なので、書くこと自体は嫌いではなかったんですよね。

そんな私の趣味を知っていた友人が、「せっかくなら、ひっそりとやるんじゃなくて、同じような経験をしている人や、これから同じような経験をする人に役立つよう、Amebaブログをやってみたら?」と勧めてくれたんです。

さすがに再発の宣告を受けた直後は、そんな気力は起きなかったのですが、治療を始めて少しずつ自分を取り戻していくにつれ、「友人も応援してくれているし、やってみようかな」と書き始めるようになりました。


Q・なぜその挑戦を始めようと思ったのですか?
書くことが嫌いではなかったということももちろんありますが、やはり友人の言葉に後押ししてもらったという部分はありますね。

妊娠中にがん宣告を受け、抗がん剤を投与した経験を持っている方というのはそれほど多くないでしょうし、さらにはそれを公に発信している人というのは、当時私の調べた限りほとんどいませんでした。もちろん、その状況になると、「生むのを諦めたほうが良いのでは…」とか「治療がうまくいかないのでは…」などと、通常のがん治療以上の悩みも出てきます。

また、私の場合は、生まれてきてくれた長男がダウン症候群という個性を持っていたということもありました。

当然、「なんで自分ばかり……」と落ち込みましたよ。でも、逆に言えば、こうした経験は誰もができることではないし、それを発信しようという人も限られている。であれば、そういった等身大の自分を伝えることで、何かしら人の役に立てるんじゃないかと考えられるようになりました。

あとは、やっぱり、「書いて発信することで前向きになれる」ということもありますね。自分自身を客観的に見つめられるようになったり、今の状況を受け入れられるようになったりもします。

私、隠し事が苦手なんです。だったら、書いちゃえ!って感じなんですよね。そして、書いていく度に、応援してくれたり、コメントをしてくれたりする人も増えてきて、そうしたつながりも生きる力になっていますね。


Q・その挑戦は山梨さんにとってどんな意味を持っていますか?
ステージ4の乳がんになったとき、「ステージ4 乳がん 長生き」といったワードで手あたり次第検索しました。でもなかなか希望が抱けるようなブログには出会えませんでした。実際には、元気に回復している方もいらっしゃるとは思うのですが、そういう方は年齢的にもなかなかブログとかは書かないでしょうしね。であれば、自分がそういう希望になりたい、と。自分にとってはもちろん、読者の方にとっても、このブログが少しでも「生きる希望」になってくれればうれしいですね。



◆皆様へメッセージ◆
Q・これから何かに挑戦しようとしている方に、挑戦することの重要性を伝えてください。
今でこそ、こうして病気のことや育児のことを多くの方に伝えられるようになりましたが、がんに罹患する前は、「自分って本当は何がやりたいんだろう?」ともがいていたんです。それが、病気や再発がきっかけで、こうした挑戦ができるようになりました。今では2万人を超えるフォロワーの方がいらっしゃいますが、気負わずにありのままを綴っていこうと思っています。

そういう意味では、病気になったことは私にとって転機になりましたね。今年に入って骨盤にさらに転移が見つかったりと大変なこともまだまだ多いですが、できるだけ自分が前向きに楽しく生きていくためにも、行動し続けていきたいと思っています。

私の座右の銘は、リンカーンの「意志あるところに道は開ける」なんです。読者の皆様も、「何かやりたい!」という意志があれば、きっと道は開けるはず。これからもお互い、自分の信じる道を歩んでいきましょう!

……山梨さん、本日はありがとうございました!

(了)

【取材日:2020年6月24日】

【山梨さんのAmebaブログ】「第2子妊娠中に2度目の乳癌。ステージ0.1で両側全摘したのに、いきなり肝転移からのスタート。誕生した息子はダウン症!人生いろいろ!」