No.5「音楽も心の支えに」挑戦内容:バンド活動と個人の演奏活動 | 挑戦記インタビュープロジェクト

挑戦記インタビュープロジェクト

キャンサーペアレンツ会員たちの挑戦記をご紹介していきます。



名前:大場 司さん
年齢:50歳
仕事:小学校教員
家族構成:妻、長男
疾病:直腸神経内分泌腫瘍
罹患時年齢:48歳
概要:2017年4月尿路結石の検査の際、直腸に腫瘍が見つかる。リンパへの浸潤もありステージ3。摘出手術と仮ストーマ増設。手術から半年後、肝臓への多発転移が見つかりステージ4へ。延命治療と言われセカンドオピニオン。2018年7月、転院先で肝臓の腫瘍摘出手術。術後化学療法で抗がん剤を続けたが、2019年3月肝臓再発と骨転移が見つかる。手術不可で抗がん剤に入る。


◆がん宣告前後◆
Q・がん宣告前後の状況を聞かせてください。
痛みや便秘、出血等の自覚症状はありませんでした。ただ、数年前から仕事上のストレスをかかえ、体のだるさは続いていましたね。

Q・そのときの心境はいかがでしたか?
内視鏡検査で、「まちがいなく腫瘍だろう」という映像を目撃してから告知までの2週間は気分の落ち込みが激しかったです。さらに告知で「進行している」、「おそらく肛門を失うことになる」などと言われ、教員の仕事はもうできないなと感じました。

Q・そこからどのように頭を切り替えていったのですか?
肛門温存手術をしてくれる病院を求め、間を置かずに動きました。病気休暇に入り治療に専念できたこと、自分が望む肛門温存手術が決まったことで落ち着きを取り戻しました。

肝臓転移、そして延命治療を告げられたときも、「今動かないと後悔する」と感じ、主治医と何度もけんかしながらも、セカンドオピニオンを受けに行きました。

本気で私と関わり、最後は快く送り出してくれた元主治医にも感謝しています。

このときも結果的に自分が望んだ手術に向かえたわけですが、自分が治療に納得できているかどうかが、自分にとっては重要であり覚悟も決まるものなんだと気づきましたね。



◆挑戦について◆
Q・現在、どんな挑戦をされているのですか?
バンド活動と個人の演奏活動です。

Q・なぜその挑戦を始めようと思ったのですか?
私は、宮城の沿岸部で東日本大震災を体験し、今日と同じ日がずっと続くとは限らないと実感しました。

さらに、がんになったことで、今望むこと、したいことは先送りせずに実行に移そうという思いが強くなりました。それで、整骨院の先生とバンドを組み、演奏会にエントリーするようになったのです。

▲2019.3.10イオン利府店での演奏(左側が大場さん)

また、キャンサーペアレンツの仲間の所にギターを持って赴き、弾き語りを通した交流も行うようになりました。

そして、昨年の11月、東京で行われたキャンサーペアレンツのオフ会(もんじゃ会)の中で弾き語りをした際、「音楽で繋がれたら楽しいね」、「音楽でキャンサーペアレンツのみなさんの役に立つ方法はないかな」という話が出まして、志賀さん(No.4の記事掲載の志賀俊彦さん)がリーダーとなって「みゅーじっく同好会」が発足したんです。

課題曲を決めて練習したり、集まりがあった時に音を合わせる目標をもったりすることで、モチベーションも高まってきています。

その場に参加できない方にはインターネットを介して演奏の雰囲気を届けることで、何人かの方に実際に喜んでいただけたことは嬉しかったですね。

さらには、今年1月のえほんプロジェクトの感謝パーティーでも演奏を披露することができました。

開会前の短時間で音あわせをしたり、ダンスのリハーサルをしたりと慌ただしかったですが、アンパンマンの登場もあり、会場に笑顔が溢れていたので、はじめての余興としては十分うまくいったのではないかなあと感じています。


▲2019.1.19えほんプロジェクトの出版感謝パーティーにて。


Q・その挑戦は大場さんにとってどんな意味を持っていますか?
だれかに必要とされているという喜びを感じます。また、自分(たち)の演奏がたった一人でもいいから癒しや希望につながってくれたらうれしいですね。

また、練習や演奏会の演奏に没頭することで、不安から解放され、「今この時」にフォーカスすることもできるんです。

▲2018.6.1 とっておきの音楽祭in仙台


皆様へメッセージ◆
Q・これから何かに挑戦しようとしている方に、挑戦することの重要性を伝えてください。
私は50歳を前にしてバンド活動を始めました。何かを始めるのに遅いということは決してなく、仲間が増え、見たことのない景色の中に立てることがわかりました。

また、演奏に呼んでいただくなど、人に必要とされ何らかの役に立てることは自分にとって何よりの幸せです。

この病気にならなかったら、バンド活動はしていなかったかもしれません。弾き語りをしている時間は、過去に捕らわれることなく、未来を憂えることのない時間を楽しめます。

演奏活動を始めてよかったなあと心から感じています。

(了)

【取材日:2019年5月2日】