No.4「大切なのは、参加すること、続けること」挑戦内容:水泳のジャパンマスターズ連続参加 | 挑戦記インタビュープロジェクト

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キャンサーペアレンツ会員たちの挑戦記をご紹介していきます。



名前:志賀俊彦さん
年齢:43歳
職業:会社員(建設業/営業)
家族構成:嫁、娘(小6)、息子(小1)
疾病:肝がん
罹患時年齢:25歳
概要:2001年25歳の時に肝がん(ステージ4)発症。抗がん剤、外科手術等の治療を行う。2002年再発。当時治験である陽子線治療を行う。現在は経過観察中で病後17年を迎える。


◆がん宣告前後◆
Q・がん宣告前後の状況を聞かせてください。
当時社会人3年目で旅行代理店の営業として働いており、大きな仕事を受注したり、プロジェクトを任せられたりするようになり、仕事が楽しく感じるようになっていました。

平日は終電まで仕事をして土日は添乗員として日本中飛び回っていたので、今思えば結構疲れ気味ではあったかもしれませんね。

ある日残業中に激しい腹痛に襲われ、翌朝地元の病院に行ったところ即入院と言われました。

私自身は胃潰瘍かなにかと思ったのですが、肝臓の病気であることを告げられ入院生活へ。

10日後、大学病院に転院しました。そこでの治療で自分の病名が「肝臓がん」であることを知らされたのです。

ちなみに、私の両親は、最初の病院ですでに説明を受けていたのですが、本人には伏せてほしいという要望を出したため、私は自分の病気を知らず入院生活を送っていました。

宣告の際も主治医からは「悪性の可能性が高いかなぁ」と言われていたものの、『悪性腫瘍とがんは別物である』という私の勝手な思い込みのため会話がちぐはぐだったのを覚えています。


Q・そのときの心境はいかがでしたか?
家族(特に両親)に対し申し訳ないことをしたと思いましたね。親より先に死ぬことは最大の親不孝であると感じていましたから。
正直、「人生終わった」とも思いました。



Q・そこからどのように頭を切り替えていったのですか?
告知された時は頭が真っ白になり、どのように病室に戻ったかすら覚えていません。

その晩は一晩中徹夜で泣きました。泣きながら、「自分はどうなりたいか」を突き詰めて考え、「なったものは仕方ない。どうすれば治るか」というシンプルな考えにたどりつきました。

翌朝にはすっかり気持ちを切り替えることができ、それ以降は医師や看護師など医療関係者に様々な質問をしたりコミュニケーションを積極的にとるようにしました。

今思えば、医療関係者の方たちにとっては、うっとうしい存在だったかもしれませんね(笑)。


◆挑戦について◆
Q・現在、どんな挑戦をされているのですか?
リハビリがてら始めた水泳です。娘が小学校に入学するのと同時にスイミングクラブに入るというので、私も一緒に入会したのがきっかけです。

もともと自分も小学校の時3年間だけ水泳を習っており、陸上の運動がからっきし苦手な私にとっては水泳が一番継続できるスポーツでもありました。

とはいえ、がん治療の後のチャレンジですから、苦しいこともありました。

一番は練習についていけなかったことですね。

一度の泳ぐ距離が50メートルくらいの短距離ならば、普通に泳げるのですが、100メートルを超えるいわゆるロングスイムになると体力がなく、スピードがガクッと落ちました。後ろから70過ぎのおばあさんとかに煽られたりして、最初の頃は必死でした。

さすがに今はそういうことはありませんが(笑)。

現在はチームに所属し、大会にも出場しています。年1回開催されるジャパンマスターズ大会は全国から水泳の猛者が集まるのですが、私は記録より参加することに意義があると思って参加しています。

この大会でメダルを取ることが私の目標なんです。年代ごとで8位以内に入賞するとメダルがもらえるのですが、この大会でメダルを取る人はオリンピック経験者や生まれてから実業団まで水泳三昧で生きていた人ばかり。

リハビリで始めた人間が上位に食い込むのはまず無理。しかしこの大会は10年連続出場もしくは20回以上の出場でもメダルがもらえるんです。

そこを狙っていきたいと考えています。ちなみに今年で5年連続5回目の出場になり、ちょうど折り返しになります。時期の問題や費用の問題などあるものの、なんとか達成したいと考えています。



Q・なぜその挑戦を始めようと思ったのですか?。
もともとスポーツなどやるタイプではなかったのですが、水泳を始めたことで体つきが変わり、水泳仲間ができ、試合は全国各地で行うので、家族旅行も兼ねており、自分にとっては一石何鳥にもなっているんです。さらに今のところは泳げば泳ぐほどベストタイムを更新し続けているので、とても楽しいですね。


Q・その挑戦は志賀さんにとってどんな意味を持っていますか?
タイムを目標に挑戦するという方法もありますが、いつか体力的な問題できつくなるので、参加回数という長くゆるくできることを目標にしています。このマスターズでは100歳以上の方も参加しており、自分も生きている間は生涯スポーツとして楽しみたいと考えています。

私は運動が得意ではなかったので、がんになる前は一切運動していませんでした。がんになっていなければ、きっと今頃中年太りしたメタボおじさんだったと思います。

がんになったからこそ、健康的な生活が送ることができたのかもしれませんね。




◆皆様へメッセージ◆
Q・これから何かに挑戦しようとしている方に、挑戦することの重要性を伝えてください。
挑戦することは生きることへの張り合いになると思います。成功や失敗にはこだわらずその過程を楽しめればいいですよね。

「挑戦」というと一見熱そうに見えますが、「自分がやりたければやる。やりたくなければやらない。」でいいと思うし、ゆるく続けることが大事なのではないでしょうか。

それが、がん罹患から18年の時が経った私なりに今大切にしていることです。

(了)

▼本業や水泳の傍ら、がん教育の推進にも取り組んでいらっしゃる志賀さん。

【取材日:2019年4月23日】