「たすけてだれか」と夜中に手紙を描いて
恥ずかしくなるからウサギは出さずに食べた。
誰にも見せなきゃ静かに生きていられよう。
痛みと涙は静かにノートにしまおう。
生きてきた証をののしり自ら笑おう。
けれどもある日野良猫を見つけた。
似たような、ボロボロのノートを大切に抱える野良猫を。
あわてて逃げたそのしっぽを、見えなくなるまで眼で追ったのを
なぜかウサギは今でもよく覚えている。
とおいとおい幼い日の、それだけの話。
◆
思い切って大暴れして抵抗するほどでもないような、
ほどほどに強く首をしめられるような苦しみが
ゆるやかに人を狂わせていくのかもしれないなあ
そんなことをタラタラ思いながら
月が綺麗だと聞いたので外に出た僕は
セブンイレブンに洗剤を買いに行ったはずがパンと紅茶を買って帰ってきて、
歩いていったのに自転車の鍵を握っていることに気付き
月を見忘れて部屋に戻った。
それでもパンと紅茶が美味しかった。
そんな日々を過ごしている。
いつかやってみたかった事が最近ぽつぽつと出来そうになっていて
下書きのままでやりかけの未来や約束がちらほらあって
いつも生きているのにああ生きていると思う時がある事を思い出す。
たのしい。
ペッコリとケムポ第九話「星に残ったウサギの回想」
色鉛筆とボールペンの短編集、アート大賞に参加中。
http://sugimotoshortstory.tumblr.com/