襟足から後頭部の毛を刈り上げられたが、自分からは見えないし、病院内では特別なことではないので人目を気にする必要もない。
夕食の時間まで読書する。モーリス・ルヴェル「麻酔剤」は麻酔に失敗する話。半分余読んであったジャン=ジャック・ルソー『サヴォワ助任司祭の信仰告白』は読了。ルソーという思想家は人間が生まれつき持っている善性を信じているのだと改めて納得。『フランケンシュタイン』に影響を与えているのではないか。フランケンシュタインの怪物は最初から残虐な復讐魔ではなかった。島木赤彦の「諏訪湖畔冬の生活」を読むと、標高900メートル近い諏訪湖畔の冬の寒さがどれほど厳しかったかが偲ばれる。湖畔の村人たちは分厚く凍った氷を切り出したり、氷上で漁をしたり、凍てつく寒さの中で懸命に働いていた。この土地の人々は勤勉だったという、今は知らないが。湖も昔のように凍結しなくなったのではないか。
明日執刀するK医師が様子を見にきてくれた。小柄な、しかし頑丈そうな医師だ。ぼくの後頭部をチェックしていた。
不安は感じていないが眠れるだろうか。看護師は眠れなければ睡眠薬を出すといってくれたが。家にいるときのように朗読を聞きながら眠ろうか。そのためにクラウドに朗読が多数保存してある。