薄曇りの穏やかな朝。気温は20度で陽がささないので少し涼しい。
午後仕事で1時に家を出ればよいので、午までは読書を楽しむことにする。若山牧水の「樹木とその葉」の「34 地震日記」、「35 火山をめぐる温泉」、「36 自然の息自然の声」を読む。これでこの連載は読み終えるが、牧水の文章はいつも心に沁みる。
「地震日記」は関東大震災の個人的記録である。牧水は伊豆半島西海岸に滞在していたときに地震に遭遇、寡聞にして、被害が伊豆半島や、牧水の住まいのある沼津にも及んでいたことは知らなかった。「火山をめぐる温泉」は上高地や飛騨の温泉を紹介しているが、牧水の頃はほとんどの温泉が秘湯である。「自然の息自然の声」には
一寸にも足らぬ一本の草が芽を出し、伸び、咲き、稔り、枯れ、やがて朽ちて地上から影を消す。そしてまた暖い春が來ると其處に青やかな生命の芽を見する。いつの間にか一本は二本になり三本になつてゐる。
砂糖の壜に何やら黒いものが動いてゐる。
『オヽ、もう蟻が出たか!』
といふあの心持。
私はあれを、骨身の痛むまでに感じながらに一生を送つて行きたいと願つてゐる。それは一面、自然界のもろ/\のあらはれが自分の身を通して現はれて來る意にもならうかと思はるゝ。
という一節があったが、この牧水の「心持」が牧水の文章の肝だろう。
仕事へ行く車中では、夢野久作の「いなか・の・じけん(抄)」を読む。気持ちが悪い、おっかない話だ。帰途の車中では川端康成、阿刀田高を読む。
今日は疲れて文章が書けない。