前回のつづき
春が逝く
無断転用禁止
初めてこのブログにお越しくだされた衆もお出でのようじゃから何度も同じ話を繰り返させていただくのじゃが、状況をご承知の衆は適当に飛ばしてお読みくだされや。
これは半月ほど前のことじゃ。
池に散った桜の花びらの様子を撮りに行ったのじゃがのう。
その際、夜間撮影のピント合わせに使用するヘッドランプを忘れてしまったためにピントがうまく合わず、早々に退散して来てしまったのじゃ。
しかしどのみちその日はまだ時期尚早で、池の中には花びらがあまり散っていなかったのが救いといえば救いだったわい。
しかしこのまま泣き寝入りするのもシャクじゃからのう。
もう一度チャレンジしてやろうとチャンスを窺っていたのじゃ。(前回までのあらすじ)
さて、それから4、5日が経ったある日の午後—。
そろそろ桜も散り始めたころじゃろうから、今度こそ先日のリベンジを果たしてやろうと意気込んで出かけて行ったのじゃ。
池の傍のお寺の境内には枝垂れ桜があって、毎年この時季にライトアップされるのじゃがのう。
そのライトアップの明かりを利用して池の中を流れる花びらの様子を撮ろうというのがワシの魂胆なのじゃ。
しかも今夜はライトアップの最終日。
今夜を逃すとまた一年待たなければならぬわい。
ワシもこんな歳になったからにはこれから先の一年はどうなるか分かったものではない。
是が非でも今日撮っておかぬと、後悔したままあの世行きかもしれぬからのう。
それではいざ出陣じゃ~。
ワシの住処から30分ほど掛けてやって来たのじゃが…
花はまだかなり残っているのう。
もうちょいと後日の方がよいかもしれぬが、ライトアップは今夜が最終日じゃからもう後がないわい。
しかしよく見ると花の中央部が赤くなっている。
これは花が最盛期を過ぎた証拠じゃ。
この分なら池の中にはかなりの量が散っているかもしれぬぞえ。
と、わくわくしながら池を覗いてみた。
ほほう!
前回とは雲泥の差じゃ。
花筏で有名な青森の弘前城とは比べるべくもないが、こんな小さな池じゃからこれで満足しなければのう。
コウホネの葉っぱも前回より増えているわい。
前回からわずか4、5日のことでこの変わりようじゃ。
これなら夜の光景も期待できそうじゃ。
落椿一輪。
この彩りがあるとなしでは大違いじゃのう。
いつものようにスローシャッターで撮ってみた。
花びらが増えた分だけ前回より賑やかになったわい。
コウホネの間を縫って、かなりの量の花びらが流れて行く。
こんな光景を夜のライトアップの中で撮りたかったのじゃ。
いよいよわしの想いが今夜は実現しそうじゃわい。
水の注ぎ口の辺りはちょいとだけ流れが速い。
渦を巻いているわい。
画像では相当のスピードで回っているように見えるが、実際には何とか動いている程度のスピードじゃ。
この辺りは流れが止まっているが…
ちょいと位置を移動するだけで様子がかなり違ってくるわい。
枯蓮を横目で見ながら(?)花びらが通り過ぎて行く。
まるで動かない個所もあるのう。
よく見ると油が浮いているわい。
こちらもちょいと一休み。
こちらでも。
そろそろ黄昏て来たのう。
夕照に輝く散り桜。
艶やかな花びらねえさんが寄り添ってくれて、枯蓮じいさんも満足そうじゃ。
お天道様が徐々に低くなって行くに従ってコウホネも黄昏色に染まってきたわい。
夕照に輝くコウホネの間を縫って春が逝く。
黄金色に輝いて来たわい。
なかなかいい光景じゃ。
このあとお天道様がさらに地表に近づいて行くと、池の中はもっと紅色に染まって来るかもしれぬぞえ。
―などとわくわくしながらチャンスを窺っていたのじゃ。
ところがしばらくすると、上空にはにわかに真っ黒い雲が湧き出てきて、お天道様をすっぽり隠してしまったのじゃよ。
途端に池の中の黄金色は消えてしまい、あっという間に宵闇に包まれてしまったのじゃわい。
何と言うことじゃ!
あと数分でクライマックスがやって来たというのにのう。
いつものことながら自然はわしの言うことをちっとも聞いてくれぬわい。
いっぺんに疲れが出てきてしまったではないかえ。
仕方がない。
それではまた車へ戻り、今年最後のライトアップが始まるまでひと休みするか。
幸いなことに今日は大量の花びらが散っているし、コウホネの葉も増えているからのう。
この後のライトアップですばらしい大傑作をモノにできるかもしれぬぞえ。
わくわく
つづく
無断転用禁止


























