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Lover's Concerto

花より男子の二次創作ブログです。
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防音室でのバイオリンのレッスン。 

類はやっぱり様子が変だった。

表情を歪めてお祖母様に対しての
感情を見せた類。

おば様を虐めたってどういう意味?

もしかして類の小さい頃のことに
関係があるのかしら?

「類、どうしたの?」

こっちにおいでと呼び寄せると
黙って私にしがみついてきた。

ギュッと身体にしがみつき
身体を小さく丸める類。

やっぱり何かあるのね。

私は類の子供の頃のことは知らない。

だから余計にどういうことなのか
気になるのだけど……

無理に訊けない。

私にくっついてただ震える類を
宥めるように優しく背中を
擦ることしかできない。

もしかして幼少期の類に厳しく
躾けたというのはご両親ではなくて
お祖母様なのかもしれない。

「類?大丈夫?」

「うん」

「私がいるよ?絶対類から離れないから」

「ホント?」

頼りなげな表情で庇護欲をそそられる。

可愛い顔を見せられてキュンとする

「練習、する」

どうにか立ち直ってくれて
彼も楽器を構えた。

息を合わせてひとつの曲を奏でる。

こんな状態でも類のバイオリンの
腕は衰えていない

さっきまでの不調が嘘みたいに
回復して正反対になった。

「つくし、上手になったね?」

「まだまだだよ?でも私がバイオリン
楽しいと思えるのは類のおかげだよ?
ありがとう、一緒に弾いてくれて」

少し前なら考えられなかったことに
つい涙ぐんでしまう。

「泣かないで!」

類は泡食ったように私を
抱きしめて肩を抱く。

生きててくれて私の名前を呼んでくれる。
記憶がなくても私の存在を受け入れて
傍に置いてくれるだけで今はいいと思った。




2時間ほど音を合わせてすこし
休憩することにした。

類が腕を痛そうにしてたから。

まだ怪我が全快したわけじゃない。
無理をしたら全治が遠のく。

「今日のレッスンはここまでにして
お茶にしましょう?」

類はコクリと頷くと楽器を
肩から下ろした。

やっぱり元気がない。

いつもより大人しい類に心配になる。

「類、疲れたんじゃない?
お夕飯までまだ少し時間があるわ
起こしてあげるから少し横になったら?」

「一緒に寝てくれる?」

身体を寄せ合うと私の体型が
バレちゃうかもしれない。

妊娠中期に入ってほんの少し
身体に肉が付いて丸くなってきた。

すごく太ったという訳でもなく
お医者様からはもっと太りなさいと
叱責される始末だ。
 
「わかった、いいよ」

私は同衾を受けいれた。

同じベッドに入って横になる。
抱きしめて手を繋ぐだけ。

こうやって一緒の布団に入ると
毎日一緒に寝ていたことを思い出す。

「つくし」

手を繋いだ類が私の肩を引き寄せる。

ちゅっと顔にやさしいキスが落ちてくる。

「おやすみ」

そういうと彼はあっという間に
眠ってしまった。

繋がれた手がいつもと違って
少し暖かい。

黙って顔を寄せるとそのまま類の
身体にくっついて眠りについた





夕方、俄に邸内が騒がしくなる。

お手伝いさん達が慌ただしく
行き交い落ち着きがない雰囲気。

私は邪魔にならないよう呼ばれるまで
近付かないことにした。

類はまだ寝ている。

起きたとき傍にいないと機嫌が
急降下するからそっと部屋に
戻ることにした。

部屋に戻ると類はまだ寝ていて
部屋の中は静まり返っていた。

ホッと胸を撫で下ろす。

あどけない可愛い寝顔に癒される。

「つくし?」

「なぁに?起きたの?」

「うん」

目を覚ました類は恥ずかしそうに
ポッと頬を染める。

「俺の……寝顔、見てたの?」

「うん、見てた、相変わらす可愛いね」

「可愛いって言うなっ」

ぷくっと膨れて膨れっ面をする類。

「だってつくしは俺のお嫁さんに
なるからか可愛いのに俺に
可愛いって言うから」

何だその理由。

訳が分からなくて吹いてしまう。

「……類は私のこと可愛いって
思ってくれてるの?」

「そうだよっ」

ちょっとだけ怒り口調の類。
こういう時の類は揶揄うと面白い。

「ありがとね」

そう言ってお礼のキスをすると
見る間に真っ赤に熟れる。

「もっかい唇にもして?」

キスのおかわりはいつもの事。

笑いながら唇にもキスをする。

軽く啄んでからしっかりと重ねた。






しばらくするとお手伝いさんが
部屋に私達を呼びに来た。

また急に類の身体は強張り
私の手を掴んでギュッと握り締める。

大丈夫だからと握り締められた
手を握り返す。

「行こ?待たせたら申し訳ないわ」

そういうと類はうんと頷いて
私の手を引いて部屋を出た。



「あら、まあ、仲良くなったのね」

「うるさいよ」

手を繋いで散歩している所をおば様に
見られて類は顔を赤くしながら
膨れっ面しておば様を軽く睨む。

「母さん、つくしのことこの家から
追い出したりしないでね」

類が私を名前で呼ぶのを聞いて
揶揄うような表情になる。

「あら?この前までアンタだったのに
いきなり名前で呼び捨て?」

「うるさいな、いいじゃん」

煩そうに不貞腐れる類。

小さな子供みたいな反応に
クスッと笑いが込み上げる。

「何笑ってんだよぅ」

「アハハ、類ちっちゃな子供みたい」

そうやって揶揄うと類は悔しそうに
反撃に出てくる。

……あまり怖くないし感情がとにかく
ストレートな分可愛さ倍増。

……なんて言ったら怒るだろうなぁ
 
「陽が陰らないうちに部屋に
帰ってくるのよ?午後は雨予報だから
バイオリンは防音室を使いなさい?
整備しておくように言っておくわ?」

よく見れば少しだけ空は曇ってきていた。

この風は雨降るんだろうなと
言うのが分かる。

「はい、分かりました」

私は返事をして軽く会釈する。

まだ文句言い足りなさそうな
類を見て笑いを堪えながら
おば様から離れた。






「笑いすぎ」

ブスッと仏頂面の類の顔。

「だって、かわいー」

「……つくしのばか」

「どれですか?人の悪口を言う
悪いお口は」

私はむうっと前に突き出された
唇を指先でギュムッと抓る。

「いひゃい」

抓られて涙目で私を見る。

あまりにもその顔が可愛らしいから
涙目のその顔にキスをお見舞いする。

突き出た唇に唇を軽く合わせる。

 「もっかい、今のして?」

キスのお代わりにぷっと吹き出す。

ほんと、こういうとこ可愛すぎ。

「良いよ」  

もう一度唇を重ねると類は
嬉しそうに笑った。

毎朝の散歩のお陰で類は
リハビリを嫌がらなくなった。

素直に理学療法士さんのリハビリも
受けてくれるようになった。

お庭を一周するとお爺様が整えてくれた
私専用の花壇に立ち寄る。

サッと草取りをしてお水をあげると
その日のお世話はおしまい。

「部屋に帰ろうか?」

「うん」

私達はまた手を繋いで
お屋敷の中に戻った。


家の中に入るとにわかに騒がしい。

「ねえ、なにかあるの?」

「お祖母様が旦那様と帰国なさいます」

それを聞いて類の表情が曇る。

どうしたんだろう?
なぜそんな顔するの?

繋いだ手がギュッと握りしめられる。

「俺、あの人、キライ」

急に曇った笑顔に私も不安になる。

顔を顰めての嫌い発言も気になる。

どうしてそんな顔になるの?

「お母さんを虐めるから……
つくしのことも気に入らないと
虐めるんだろうなって」

「え?」

「俺のお嫁さん虐めて欲しくないから
会わせたくない」

「大丈夫よ、久しぶりに類もお祖母様に
お会いするんでしょう?きちんと
ご挨拶しましょう?」

「……うん」

強張った表情のまま類は頷いた。

何、どうしてそんな反応するの?





「類!お散歩行こ」


「ヤダ、もっと寝る」


被りを振って駄々を捏ねる類。


「あ!約束破る気だ、リハビリ

ちゃんとするって約束したのに」


昨日も同じこと言って

リハビリから逃げた類。


サボるならもう付き合わないよ?


そういうと渋々ベッドから

起き上がって着替え始めた。


初めからそうしたらいいのに。


私のバイオリン練習に

観客が増えた。


お爺様と類。


たまにおば様。


バイオリンを持って類と手を

繋いでお庭を散歩する。


「いいお天気だね。気持ちいい」


「うん」


類は陽気の良さに気持ちよさそうに

空を仰いで目を細める。


「こんな陽気だと眠くなる」


類らしい言葉にプッと吹き出す。


「もう!寝てばかりちゃんと

リハビリしなさい!」


後ろから類がついてくるのを

手を引いて歩く。


大きな猫を散歩させてる気分だけど

気まぐれな類がその気になってくれて

今日は助かった、


態度を改めると宣言した通り

類の私に対する態度は大分

穏やかになった。


前のように元通りとは行かなくても

穏やかに時が流れる。




「ここにしよっと」


いい場所を見つけてその場所で

バイオリンケースを開く。


「ここで弾くの?」


「うん、いつもこら辺で弾くよ?」


「気持ち良さそう」


今度俺も楽器持ってこよっと。


彼はそう言って目を瞑った。


私は調弦を済ませ、楽器を構える。


「そのバイオリン……」


「これはね、類が私に弾いてみなって

くれたものなんだよ?」


「俺が?」


「そう、私の宝物なの」


頑張って微笑って見せる。


目の前で楽器にキスをしてみせると

類はちょっぴり赤い顔して私を見る。


そういうと私の頬にキスをした。


「ちょっ……何、勝手に」


「キスするならさ……俺にしねよ」


そういうと今度は自然な動きで

類は私の唇にキスを落とした。


揶揄うような笑みは健在で私は

その笑みに心を持ってかれる。


「ちょっと……何する……」


慌てて抗議するけど類が赤いから

何だか怒れなかった。


一瞬時が戻ったかのような

感覚がして恥ずかしくなった。


「……俺こんなキスアンタと何回も

した記憶がある」


もう1回していい?と訊かれ

私は黙って頷いた。


陽だまりの中で私達はもう一度

始まりのキスを交わした。