「あら、まあ、仲良くなったのね」
「うるさいよ」
手を繋いで散歩している所をおば様に
見られて類は顔を赤くしながら
膨れっ面しておば様を軽く睨む。
「母さん、つくしのことこの家から
追い出したりしないでね」
類が私を名前で呼ぶのを聞いて
揶揄うような表情になる。
「あら?この前までアンタだったのに
いきなり名前で呼び捨て?」
「うるさいな、いいじゃん」
煩そうに不貞腐れる類。
小さな子供みたいな反応に
クスッと笑いが込み上げる。
「何笑ってんだよぅ」
「アハハ、類ちっちゃな子供みたい」
そうやって揶揄うと類は悔しそうに
反撃に出てくる。
……あまり怖くないし感情がとにかく
ストレートな分可愛さ倍増。
……なんて言ったら怒るだろうなぁ
「陽が陰らないうちに部屋に
帰ってくるのよ?午後は雨予報だから
バイオリンは防音室を使いなさい?
整備しておくように言っておくわ?」
よく見れば少しだけ空は曇ってきていた。
この風は雨降るんだろうなと
言うのが分かる。
「はい、分かりました」
私は返事をして軽く会釈する。
まだ文句言い足りなさそうな
類を見て笑いを堪えながら
おば様から離れた。
「笑いすぎ」
ブスッと仏頂面の類の顔。
「だって、かわいー」
「……つくしのばか」
「どれですか?人の悪口を言う
悪いお口は」
私はむうっと前に突き出された
唇を指先でギュムッと抓る。
「いひゃい」
抓られて涙目で私を見る。
あまりにもその顔が可愛らしいから
涙目のその顔にキスをお見舞いする。
突き出た唇に唇を軽く合わせる。
「もっかい、今のして?」
キスのお代わりにぷっと吹き出す。
ほんと、こういうとこ可愛すぎ。
「良いよ」
もう一度唇を重ねると類は
嬉しそうに笑った。
毎朝の散歩のお陰で類は
リハビリを嫌がらなくなった。
素直に理学療法士さんのリハビリも
受けてくれるようになった。
お庭を一周するとお爺様が整えてくれた
私専用の花壇に立ち寄る。
サッと草取りをしてお水をあげると
その日のお世話はおしまい。
「部屋に帰ろうか?」
「うん」
私達はまた手を繋いで
お屋敷の中に戻った。
家の中に入るとにわかに騒がしい。
「ねえ、なにかあるの?」
「お祖母様が旦那様と帰国なさいます」
それを聞いて類の表情が曇る。
どうしたんだろう?
なぜそんな顔するの?
繋いだ手がギュッと握りしめられる。
「俺、あの人、キライ」
急に曇った笑顔に私も不安になる。
顔を顰めての嫌い発言も気になる。
どうしてそんな顔になるの?
「お母さんを虐めるから……
つくしのことも気に入らないと
虐めるんだろうなって」
「え?」
「俺のお嫁さん虐めて欲しくないから
会わせたくない」
「大丈夫よ、久しぶりに類もお祖母様に
お会いするんでしょう?きちんと
ご挨拶しましょう?」
「……うん」
強張った表情のまま類は頷いた。
何、どうしてそんな反応するの?