定期テストも校則もない公立中学校として

最近メディアでも話題の
世田谷区の
桜丘中学校視察会に先日いってきました。



桜丘中学校は全14クラス、540名。

区域外からも86名通学している。

毎月転校生もいる。

どんどん増えていて、

現在1年生は定員ギリギリの42名クラス。

来年はさらに1クラス増える予定だという。



大人気!

私だって、もし世田谷に引っ越すならここに行きたい

(夫実家は世田谷だったりしますが)





校門前にある、生徒が飾り付けたツリーがお出迎え



視察を終えて


「本当にここは日本の学校?」

を頭の中で連発。

自由で多様な学校生活が

ここでは保障されている。


一緒に視察に行った

おはなしワクチンの蓑田さんが

視察で学校の説明を聞いたときに

「フィンランドの教育に似ている」

と話していた。

 

実際に世田谷区では

フィンランド視察に

年に数人の教師が派遣されているのだそうだが

 

西郷校長先生が最初から

フィンランドに倣っていた

という訳ではないけれど

自立した幸せな教育を突き詰めると

そうなるのだと思った。




制服も自由、髪型も自由。

制服を可愛くカスタマイズしている子もいたし、
私服の子もいる。



教室を見学すると、明るくスッキリとした印象。

ユニバーサルデザイン化された教室は

前方には掲示物は一切ない。

掲示物があることが集中力の妨げになってしまう子もいるため、

配慮がなされている。

聴覚過敏の子のために

イヤホンも常備されている。

当たり前のように

インクルーシブ教育の環境が整っているのだ。




教室前方には、掲示物は一切なし
合理的配慮がしっかりされている




掲示物は教室後方に

「令和 E和」 笑
ナイスなコピー!





最初に見たのは社会の授業。

物語を伝えるかのように歴史を話す先生。

そこに時々入る先生からの質問。

生徒たちはまるでなぞなぞを解くように

楽しそうに答えている。





私は学校で介助員をしていて

授業も見る機会が多いのだけれど

以前

凄くいい授業をする先生がいて、

その先生の授業風景に似ていると思った。



大学生の長男曰く、

その先生は塾の講師レベルに教えるのが上手。

けれど

「自分の授業は生徒が騒がしいと言われてしまう」

と先生は悩んでいた。



私から見たら騒がしいのではなく

生徒が積極的に授業に参加している。



それを騒がしいと捉えられてしまう風潮が

悲しかったけれど、

 

ここでは違った。



桜丘中学校では、先生の目も輝いていた。

誇りを持って、そして自分も楽しんで

授業をされていることが伝わって来た。



隣の授業が気になれば受けていい。

料理の実習に、隣のクラスの料理好きな子が参加しても

誰も

「自分のクラスに戻りなよ」

なんて言わないのだそうだ。




授業中トイレに行くのも自由。

スマホも自由。

(でも授業中に使っている子は、ほぼいなかった)

図書室もいつも利用可。

(例えば帰国子女で英語の授業が退屈なら、
図書室で本を読んでいてもいい)



視察時に、授業中図書室には一人の生徒がいた
居心地良さそうに本を読んでいた




洋書も充実!!
日本の漫画の英語版もたくさんあった



要するに、授業がつまらないのは

教師側の問題というスタンスなのだと思う。





以前ブログに書いた

「悩みどころと逃げどころ」で

プロゲーマーの梅原大吾さんが言っていたことを思い出した。

https://ameblo.jp/cafetanpoposhonan/entry-12432774484.html

「必要性も感じられず興味も持てない授業を
45分50分も我慢して聞かされるのは完全に罰ゲーム」




校庭には、隣の幼稚園が遊びに来ている。

校庭が空いていれば、どうぞ使ってください。

地域のコミュニティが出来上がっている。





体育をしているスペースの奥では

保育園の子どもたちが楽しそうに遊んでいた





職員室前のヘルプデスクのコーナーでは、

自習する子、ゲームをする子、話を楽しむ子、様々だ。

机は半円で、学校くささがないデザイン。

クリスマスの飾りが置いてある机もあった。

日体大や、農大の学生も

ヘルプで手伝いに来てくれるのだそうだ。





ツリーが光るヘルプデスク




ここにいた一人の生徒とおしゃべりした。



このコーナーがなくなるという噂を聞いたそうで、

「ここ無くなっちゃったら本当に困りますよ〜!

学校来たくなくなっちゃうかも。なくならないように言ってください!」



先生方、このブログでお伝えします。

なくならないよう、よろしくおねがいいたします!




噂のハンモックでは、少年がゲームをしていた。





私も乗りたい。笑





勉強が苦手な子や不登校の子も

このヘルプデスクコーナーで

いつでもフォローができる体制が整っている。



外国からの転校生も多いそうだが

このヘルプデスクがあるから

学校に来られるという子も多いのだそうだ。

自分の出られる授業に出ればいい。

給食だけ食べに来るのでもいい。

ヘルプデスクで、自分のペースで過ごせる。



教室に入れない、黒板が読めない(LDなど)

ギフテッド、絵が上手い子、IT系にとても強い子、

そんな個性あふれる子達が

ヘルプデスクに来ている。



ともかく個性に合った教育を尊重しているのだ。



ところどころに貼ってある生徒の作品は

時には眼を見張るような秀逸な作品があった。



書道では、これが中学生かと思えるような

力強く美しい文字が半紙に広がっていた。

色紙には、芸大で見るかのような

創造性豊かな絵が描かれているものや、

とてもユニークな言葉を載せているものもあった。



個性を伸ばすことを大切にしている桜丘中学校の

底力を見たような気がした。



「場の力」というものがあるけれど

この学校は

発芽したタネが太陽に向かって

 

ぐんぐん伸びて行くような

そんなエネルギーに満ちているように感じた。





世田谷区では2020年度から

「髪型」や「下着の色」などの

人権侵害にも当たるような校則を区をあげて廃止すると

発表があったけれど、桜丘中学校では、

 

「校則」ゼロ



制服はあるけれど、着るのも自由。

髪型も自由。スマホの規制もない。

それでも、みんな自律した学校生活を送っているようだった。




桜丘中学校には、校則はないけれども

ただ3つだけ、心得があるとのこと。



 ・礼儀を大切にする

 ・出会いを大切にする

 ・自分を大切にする




どれも生きていく上で人間として大切なこと。



桜丘中学校は、昔は荒れていて、

怒鳴り声も良く聞こえる学校だった。



西郷校長先生曰く

「本当に怒鳴ることは必要なのか?

命に危険がない限り、怒鳴ることはいらない。

シャツのボタンを一つ外しているからといって、

怒鳴る必要があるだろうか?」



こういった桜丘中の取り組み一つ一つが、

教師として至極腑に落ちるものだった

案内をしてくれた先生が、そうおっしゃっていました。



赴任してきて、カルチャーショックだった。


他の先生もそうおっしゃていた。

今までの学校とは逆の指導が、桜丘では行われている。



それで荒れるかと言えば、その逆だ。

強制しないから、反発しない



校則がないということは、

生徒を信頼していなければできないことだし

信頼されていない環境で

生徒が教師を信頼するかといえば、NOだ。



例えば会社で上司から、ネクタイの色からシャツの色まで
厳しく管理されていたとしたら、どう思うだろうか。

自分は信頼されていると思えるだろうか。



失敗しても、見守って任せてくれる方が

力を発揮できるのではないだろうか。

命の危険に関係のない校則というのは

私は人権侵害だと思っている。



実際、授業を色々見せていただいて

生徒と先生との関係性が良さそうだと感じた。

授業が無意味にシーンと静まり返っているなんていうものは、
見学の時には見かけなかった。



見学時にはどうやらインフルが流行しだしていたらしく
次の授業の先生が体調不良で来られない

というシーンに出くわした。



私たちを案内してくれていた先生に生徒が

「えー!次自習ですか?なら先生が授業してください~!」

と、教科が全く違う先生にお願いするという

自由な会話が弾んでいた。



臨機応変。

自立した人間にできること。



桜丘中には定期テストはなくて、単元ごとの小テストがある。

スモールステップが大切だから

再テストも個人の自由で受けられる。

(期限はあるけれど)



この小テストも、成績をつけるためではなく、

到達度を理解するためのものだという。



「生徒の出来」ではなく、

教えかたを見直すためのものだ。



プロだ。

プロってかっこいい。

ボキャ貧で申し訳ないが、素直にそう感じた。



ここの先生たちには

肩肘張らないプロ意識があるから

かっこいいと感じるのだろう。



桜丘中には宿題もない。

忙しい今の子どもたちにとって、

宿題は負担でしかない。

部活、塾、学校の宿題で疲弊して、

学校で寝ているのなら、意味がないと考えるからだ。





ー 宿題、テストがなくて、どうなっているか?学力は落ちないか?



そんな質問が出た。



さあ、気になるアンサーは?!







落ちていない。

特に英語は世田谷でNo.1なのだそう。

地域柄、7~8割の子が塾に行っているから

その関係性は否めないかもしれないが

そういう世田谷でNo.1になっているというのは

学校の寄与が大きいように私は感じた。



まだこのスタイルに慣れない1年生では

学級崩壊もあるそうだ。

何か問題があれば

たとえ途中でも担任を変えるし

生徒のクラスが変わることもある。

授業も必要なら主幹だろうと校長だろうと

できる人がやる。



そして、桜丘中では
いじめや犯罪にも毅然とした態度を取っている。



世間で犯罪と呼ばれることは、学校でも犯罪。

(例えばガラスを故意に割ったなど)

そういう時は警察を呼ぶし、現場検証ももちろんある。

学校だからといって防御壁は作らない。



人として間違った時は

責任を取る必要があると

理解することはとても大切だ。



いじめは大小に関わらず、即刻教育委員会に報告する。

本人がいじめと思ったら、それはいじめだ。



こういった毅然とした行動が

抑止力にもつながっているため、

大きな事案にはならないのだそうだ。





もう一つ桜丘中の取り組みで紹介しておきたいのが、

「夜の勉強教室」だ。



月に1回、17時~20時まで

地域の人が協力して開催しているのだそうだ。

コンビニ弁当を食べている子もいる時代に

夜の教室では、100円で夕飯も振舞っている。

子ども食堂の役割も担っているのだ。





冒頭に伝えたように、保育園も自由に出入りできて

地域の人が協力して夜の教室を運営し

地元の大学生が手伝いに来る。



インフラが整っている。



最初に桜丘中についての説明をしてくれていた先生が

エミールに原点があるように思う

そう言っていた。


「エミール」は、

18世紀に活躍したフランスの思想家、
ジャン=ジャック・ルソーの有名な著書。
真に自由な人間を育てるために必要なことは何か、
自立した人間のあり方を問う、教育論・人間論が書かれている本。
私がエミールを読んだのはもう何十年も昔のことだけど

ものすごく腑に落ちた。
頭の中に爽やかな風が吹き、クリアになる感覚。



今まで何十冊、何百冊と
教育や生きることについての本を読んできたけれど

エミールには全てがあった。

もう一度、ゆっくり読んでみようと思った。



校則やテスト、宿題など、
なぜ大人の要求を子どもに強いるのか


桜丘中学校は、それを世の中に投げかけている。

揺り戻しがあるのか、それとも増えていくのか。




少なくとも私は

湘南の地で

増やしていきたいと思っている。


生徒の明るい表情や先生たちの
充実した表情が生み出す学校の空気に触れて、
とても心地よい余韻に浸ることができた視察だった。


視察を受け入れてくださった
桜丘中学校の先生、生徒の皆さん、
本当にありがとうございました!




追記:

視察時は

来訪者にお茶を振舞ってくださるホスピタリティ。

きっと年間で

たくさんたくさん視察を受け入れていらっしゃるから

手間もひとしおであろうと思われるのに

心配りを忘れないところにも、

学校の「心」を大切にする志を感じました。

 

心から、ありがとうございました。


NPO法人 自由創造ラボたんぽぽ
米澤美法
https://labotanpopo.wixsite.com/labotanpopo

 

 

 

 

 

 

 

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