このお客さん、モーニングの存在を知らなかったようで、なにか思うことがあってシェリー・ブレンドを飲みに来た。マスターとの会話で大箱はそのことが把握できた。
「ところで昨日はあれから唐沢さんとはうまくいきましたか?」
「はい、お陰さまで。でも宿題ももらったのでそれをどう解決しようかと思って今日はやってきたんです」「宿題、というと?」
「実は、オンライン講座のためのスライド資料を作らないといけなくなってしまって」
スライド資料、この言葉で大箱の聞き耳はさらに大きくなった。
「実はオレ、そういう資料作りは今まで後輩にまかせていたから。だから作り方もよくわからないし、センスなんてないんですよね。唐沢さんからはどんな道筋で作ればいいのかっていうのは教えてもらったんですけど」
きたっ!待ち構えていたお客さんだ。大箱の心の中は急に踊り始めた。
そうして隣の男性客はシェリー・ブレンドを注文。マスターはコーヒーを淹れる準備を始める。このとき、大箱の方を向いてニコリと笑った。マスターもわかっているようだ。この人が大箱の待ち構えていた人だということを。
「はい、シェリー・ブレンドです。どんなお味がしたのか、ぜひ教えて下さい」
〜おしらせ〜
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