「真綾、よくそんなの覚えてたね」
「うん。その直前まで、私って紗綾の真似をしていたのをなんとなく覚えてる。双子だから、やること全部そっくりだねってよく言われてたから、そうしなきゃいけないんだって幼いなりに感じてたんだ」
「じゃぁ、どうして髪を切っちゃったの?」
「それがね、突然思ったの。私は紗綾と違うって。だから違う人って見てもらいたい。そう思ったから、まずは見た目を変えようと思って髪を切ったの」
「幼いながらも自我が芽生えたのですね。おそらくですが、周りは双子だから同じなのが当然と思っていたのでしょう。双子でもそれぞれ個性は違いますからね」
マスターがそう言うと、真綾は大きくうなずいた。
「でも、私はそんなこと思いもしなかった。どうしてだろう?」
「それもまた個性ですよ。それにまだ幼稚園生くらいでそのような自我が芽生えるなんていうのは、かなり早いほうだと思います。気がついたら髪型が違う双子になっていた。今度はそれが当たり前になって今まで生きてきたのでしょうから」
マスターの言葉に、二人は納得していた。
「でも、真綾のおかげでお父さんもお母さんも、私達にまったく同じような格好をさせなかったよね」
〜おしらせ〜
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