Cafe Shelly next 第5話 貯金はいかほど? その16 | 【小説】Cafe Shelly next

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喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

 そう思った瞬間、私の舌を、いや全身を優しい光が包み込んだ。味、というよりもそういう感覚になった。

 

 その光は何でも受け止めてくれる。他のあらゆる光をも包み込み、そこにあった黒い影をどんどん吸収していく。まるで神様か仏様に浄化されていくような、そんな感じ。

 

 そして思った。そういう人になりたいって。

 

 じゃぁ、今の私はどうなの?ふと頭でそう思った瞬間、真っ黒い影が襲ってきた。今まであった光を全て吸い込むような、そんな黒い影。

 

「やめて!」

 

 心の中でそう叫んだ。その時、さっきの優しい光が、その真っ黒い影すら包み込んでくれているのがわかった。

 

 このとき、頭に浮かんだのがボスママ、飯山さんの存在。飯山さん、今まで私に対して愚痴や文句を言うことなく、全てを受け止めてくれていたことに気づいた。

 

 先日の子供会での私の意見に対しても、私の意見を「そうよね、そういう心配もあるよね」と受け止めてくれていたことを思い出した。これがあの光なのか。私のような真っ黒い影をも包み込む、優しい光。そんな存在になってみたい。それが私の願望。

 

「お味はいかがでしたか?」

 

 店員さんの言葉で、ハッと我に返った。そうだ、私は今喫茶店にいるんだった。

 

~おしらせ~
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