Cafe Shelly next 第5話 貯金はいかほど? その17 | 【小説】Cafe Shelly next

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喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

「え、えぇ、なんだか変な体験をしちゃった気がする」

 

「どんな体験だったの?」

 

 それを言おうか、一瞬迷った。だって、コーヒーを飲んでこんな体験をするだなんて、普通は考えられないから。けれど、これも頭で考えるよりも先に口のほうが動き始めた。

 

「優しい光が全てを包み込んでくれるの。どんな暗闇だって、その光が照らしてくれて。そして浄化されるの。まるで…」

 

 このとき、頭の中でまるで菩薩観音のようなある人の顔が浮かんだ。この人の名前を出したくない、そう思っている心とは裏腹に、これもまた口が勝手に動いてしまった。

 

「まるで、飯山さんみたいに」

 

「さくらさんも、やっぱり飯山さんみたいな人になりたいって思っているんだ。ようやくわかってくれたんだ」

 

 さゆりさん、すごく安心した顔をしている。

 

「私、あの人みたいになりたい。みんなから信頼されるような存在になりたい。ねぇ、どうすればなれるの?」

 

「その答えはすでに知っているはずですよ」

 

 店員さんが優しく私に言ってくれる。

 

「知っているはず…さっきまでそのことをさゆりさんは私に言ってくれていたんだから。まずは相手の話をきちんと聴くこと。そして自分ができる仕事を率先して引き受けること」

 

~おしらせ~
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