「それでさっき、コーチングって言葉に反応したんですね。でも、羽賀さんをご存知なのにさっきまで気づかなかったんですか?」
「だって、あのときはスーツ姿でビシッときめていたから。今はジャージでとてもラフな格好されているし、それ以前にシェリー・ブレンドの味を尋ねなきゃって思ってとても緊張していたから、お客様の顔なんてしっかりと見れませんでした」
「あはは、そうだったんですね。でもそんなにボクにあこがれてくれていたなんて光栄です。シェリー・ブレンドの味を尋ねた時の言葉なんて完璧ですよ。ね、マスター」
「はい、間違いなく私より上手だなって思いました」
「じゃぁ私、このお店で働いてもいいんですよね?」
「えっ、そ、そうですね…」
マスターは嬉しい反面、責任重大だと感じている。なにしろフリーのライター時代からずっと一人で仕事をしてきたから。人を雇うという経験は始めてである。
「マスター、ここは観念してのりこさんを雇ってくださいよ。これは常連客としてのお願いでもあります。マスターだって助かるでしょ」
「羽賀さんにそこまで言われたら、のりこさんを雇わずにはいられなくなっちゃいますね。よし、わかりました。そうしましょう」
〜おしらせ〜
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