男性の言葉に、のりこの方が驚いた。
「のりこさん、どうして味を尋ねるのをそれだけ待っていたんですか?」
マスターものりこがじっくりと待ったことに対して、その理由を聞いてみたいと思ったようである。
「だって、さっきマスターがあちらのお二人に味を聞く時、二人の表情が変化するまで待っていたじゃないですか。だからそうしただけなんですけど」
「なるほど、ボクの表情の変化を待っていたんだ。それはすごい。マスターよりも、いやボクよりも相手を観察する力を持っている。うん、マスター、いい店員さんを雇いましたね」
「いや、こちらののりこさんは店員じゃなくてお客さんなんですよ。さきほどシェリー・ブレンドを飲んで、私みたいになりたいっていう願望に気づいたんです。それならってことで、次に来たお客様にシェリー・ブレンドを出して味の感想を聞いてみてはと提案したんですよ」
「えっ、そうだったんですか。マスターがそろそろ誰か雇わないとっていうことを言っていたから、ボクはてっきり新しく雇ったんだとばかり思っていましたよ。いやぁ、もったいない。この方がお店にいてくれると、ここも華やかになるのになぁ」
「私もそう思うんですけどね」
〜おしらせ〜
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