「いらっしゃいませ!」
なんと、マスターよりも先にのりこの方がそうやってお客様に声をかけた。のりこはすでにこのカフェ・シェリーの店員になりきっているようだ。マスターは思わず笑ってしまった。
「こんにちは」
現れたお客様は背が高くてメガネを掛けている。笑顔がとても素敵な男性だ。このとき、マスターはお客様に声をかけようとしたがあえてやめてみた。男性客はさっと店内を見回して、カウンター席へと向かった。
「じゃぁ、私が注文を聞いてくるから。のりこさんは私と一緒にカウンターに来てください」
「はい、わかりました」
その様子をじっとうかがう男性客。なにやら事情を察したようだ。
「マスター、ここの一番のコーヒーをお願いします」
男性客がそう言うと、それに答えたのはなんとのりこだった。
「それなら、シェリー・ブレンドがおすすめですよ。このコーヒーには魔法がかかっているんです。ぜひそれを体験してみてください」
「へぇ、魔法がかかっているんだ。それはおもしろそうだね。じゃぁ、それを一つお願いします」
「かしこまりました」
マスターは笑いをこらえながらコーヒーを淹れる準備を始めた。のりこと男性客は、マスターをじっと眺める。
〜おしらせ〜
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