のりこは「コーチング」という言葉に反応した。なにやら一人で納得したようである。
「マスター、私にもそれ、できるかな?」
「それ、というと?」
「マスターと同じように、シェリー・ブレンドを飲んだ人と会話をして、その人が気づいたことを引き出してあげるの。これ、私もやってみたいんです。いや、ぜひやらせてください!」
「やらせてくださいって…」
マスターはのりこの勢いに負けて、たじろいでいる。いきなりそんなことを言われて、どう答えればいいのか迷ってしまった。反面、のりこはマスターの目をじっと見つめて、絶対にやるんだという勢いを持っている。
「わかりました。じゃぁ、次のお客様が来られたときに、その方と会話をしてみますか?」
「ぜひお願いします!」
「でも、このままだと不自然ですから。そうですね、次のお客様が来られてシェリー・ブレンドを注文されたら、その方にコーヒーを持っていってください」
「はい、わかりました!」
のりこは急に元気になった。こういうのを水を得た魚、というのかな。マスターはのりこの様子を見て、なんだか微笑ましくなった。そのときである。
カラン・コロン・カラン
カウベルの音が鳴り響く。お客様の来店である。
〜おしらせ〜
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