そのことに気づいたのりこは、さっき飲んだシェリー・ブレンドの味を思い出していた。
「そうか、このことだったのか。だからさっき、あんな味がしたんだ」
そして、のりこはマスターに向かって目で合図をした。自分の話を聞いて欲しい、そんな欲求が高まったのだ。
マスターはのりこが目で何かを訴えているのをすぐに悟った。というよりも、マスターはカウンターにいながらものりこのことが気になっていたので、出ていくタイミングをうかがっていたというほうが正しい。なので、のりこの合図はまさに絶好のタイミングだった。
「さきほどの続きをまだうかがっていなかったですね」
ニコリと笑って、マスターはのりこの元へ。のりこもマスターの笑顔につられるように、にこりと笑う。
「はい、さっき飲んだシェリー・ブレンドの味を聞いてもらいたくて。私、わかったんです。今のあの二人とマスターのやり取りを見て」
「どんなことがわかったんですか?」
「実は、さっき飲んだ味って私には今ひとつ理解できなかったんです。だって、飲んだ瞬間にマスターの顔が浮かんできたんですもの」
ふふっと笑ってのりこはそう答えた。マスターとしては自分の顔が浮かんだのは嬉しいことである。
〜おしらせ〜
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