Cafe Shelly next 第1話 独りじゃない その15 | 【小説】Cafe Shelly next

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喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

「なんだか懐かしい、ふるさとの味がする」

 

 女性の方がそんな感想をもらした。

 

「ふるさとの味、ですか。失礼ですが、ふるさとはどちらなのですか?」

 

「はい、私は東北の出身で。一人っ子なものですから、学校を出たらやっぱり両親のもとに帰らなきゃなって思っているんです。でも…」

 

 そう言うと、女性はちらりと男性の方を見る。やはり、この二人は恋人同士。離れたくないという気持ちも強いのだろう。すると、男性の方がこんなことを言い出した。

 

「ボクはこのコーヒーを飲んだ時、一瞬すごい苦味を感じたんです。でも、そのあとに強い甘みを感じました。なんか、苦味を突破したあとの甘みって感じでした。これってどういう意味なんでしょうか?」

 

「なるほど、苦味を突破した後の甘み、ですか。あらためて何か思いつくことはありますか?」

 

「うぅん、パッと思いついたのは、苦味が困難でそれを乗り越えたら甘み、つまり幸せが待っているってことかな」

 

「困難を乗り越えた後の幸せ、これがあなたが望んでいることなんですね」

 

「そういうことになるかな。で、言いながら思ったんですけど。ちはるちゃん、三年待ってくれないか。三年経ったら自分の仕事に目処がたつと思うんだ」

 

〜おしらせ〜
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