マスターはのりこの表情をうかがうように覗き込んでいたとき
カラン・コロン・カラン
カウベルの音が鳴り響いた。お客様の来店だ。
マスターはとっさにのりこから離れて、一度カウンターへと戻る。
「いらっしゃいませ」
訪れたのは若い男女のカップル。
「あのー、ここにおもしろいコーヒーがあるって聞いてきたんですけど」
「シェリー・ブレンドのことですね。よろしければ真ん中の丸テーブル席へどうぞ」
マスターはのりこが気になりながらも、新しいお客様に対しての接客を行わなければならなかった。やはりもう一人雇わないと、せっかくシェリー・ブレンドを飲んだお客様の気づきを引き出すことができないな。マスターはそのことを実感しつつも、シェリー・ブレンドを淹れる準備を始めていた。
しばらくは新しいお客様二人の話し声が店内に響き渡る。どうやら大学生のようで、就職について迷っているようである。特に女性の方は、県外に行くのか、それとも男性と一緒にこの土地で就職するのかについて悩んでいるようだ。
「お待たせしました。シェリー・ブレンドです。飲んだらどのような味がしたのか、ぜひ教えて下さい」
マスターはカップルの様子をそばで黙ってみている。
〜おしらせ〜
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