第120話 マスター その28 | 【小説】Cafe Shelly next

【小説】Cafe Shelly next

喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

 ここで私なら「その答えをシェリー・ブレンドに聞いてみては?」と問いかけるところだろう。だが靖雄さんは少し違った。

 

「まぁ、まずはサンドイッチでも食べてお腹を満たしてみてください。そうすると脳に血流が流れて、いいアイデアが湧いてきますよ」

 

 なるほど、私とはまた違うアプローチのやり方だ。ゆうちゃんはその言葉に従って、サンドイッチを口にする。すると、自然にコーヒーに手が伸びる。

 

「あ、そうか。なぁんだ、悩むほどのことじゃないじゃない」

 

 シェリー・ブレンドを飲んだとき、ゆうちゃんは明るい声でそう言った。

 

「何かひらめきましたか?」

 

「はい、めぼしい人を見つけたら、いっしょにやらないって声をかければいいんだ。あはは、簡単なことじゃない。ありがとうございます!」

 

 ゆうちゃんが口にしたこと、それはなんてことはないことだ。けれど悩んでいる本人にとっては大きな衝撃だったようだ。

 

「それはよかった。ぜひ自分がこの人と一緒にやってみたいと思ったら、そうやって声をかけてみてください。私もマスターから声をかけられたからこそ、今こうやってここに立っているんですから」

 

 ゆうちゃんも靖雄さんの言葉に納得したようだ。笑顔になっている。