ここで私なら「その答えをシェリー・ブレンドに聞いてみては?」と問いかけるところだろう。だが靖雄さんは少し違った。
「まぁ、まずはサンドイッチでも食べてお腹を満たしてみてください。そうすると脳に血流が流れて、いいアイデアが湧いてきますよ」
なるほど、私とはまた違うアプローチのやり方だ。ゆうちゃんはその言葉に従って、サンドイッチを口にする。すると、自然にコーヒーに手が伸びる。
「あ、そうか。なぁんだ、悩むほどのことじゃないじゃない」
シェリー・ブレンドを飲んだとき、ゆうちゃんは明るい声でそう言った。
「何かひらめきましたか?」
「はい、めぼしい人を見つけたら、いっしょにやらないって声をかければいいんだ。あはは、簡単なことじゃない。ありがとうございます!」
ゆうちゃんが口にしたこと、それはなんてことはないことだ。けれど悩んでいる本人にとっては大きな衝撃だったようだ。
「それはよかった。ぜひ自分がこの人と一緒にやってみたいと思ったら、そうやって声をかけてみてください。私もマスターから声をかけられたからこそ、今こうやってここに立っているんですから」
ゆうちゃんも靖雄さんの言葉に納得したようだ。笑顔になっている。