私がバックヤードに向かったのは、パソコンを取ってくるためである。バックヤードには書きかけの、というか二行しか描いていない書き下ろしの原稿を開いたパソコンがある。それをそのまま靖雄さんに見せてみることにしたのだ。
「私、今こんなことをやっているんです」
靖雄さんに向けてパソコンの画面を見せる。すると靖雄さん、さすがライターだけあってすぐに私の正体を理解してくれたようだ。
「そうだったんですか。いやいや、恐れ入りました。それは確かに、この道に進んでも誰も文句は言わないでしょう。いや、それどころかマスターがその道に進んでくれることを望んでいる人の方が多いと思います」
「ははは、そんなに期待されているものですかね。自分ではよくわからないのですが」
私ってそんなに期待されているのか。まぁ、おかげさまでこうやって書き下ろしの作品をつくるまでになったのだから。物書きでお金をいただける身分というのは、私が憧れていたものだったし。
「どうして私にマスターの正体を明かしてくれたのですか?」」
問題はそこだ。このことを靖雄さんに伝えなければいけない。当然、靖雄さんがシェリー・ブレンドの魔法を使えることが一番の要因だ。