第120話 マスター その19 | 【小説】Cafe Shelly next

【小説】Cafe Shelly next

喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

 なんだかワクワクしてきた。胸が高まる。その胸の高まりが私の目の前に見えた光をさらに大きくしていく。まるでトンネルを抜け出るような、そんな感覚だ。

 

 あの光はなんだ?そう思った瞬間、私の目の前には作家として活動をしている自分の姿が見えてきた。さらにその先には、私の作品を読んで喜びを感じている多くの人達の姿が。

 

 そうか、私は多くの人に喜びや希望を与えていきたいんだ。それが私の喜びであり、私の成功の姿なんだ。これが私が目指す道、なりたい未来、進むべき道なんだ。

 

「味はどうだったでしょうか?」

 

 この言葉で我に返った。そうか、これがシェリー・ブレンドの魔法なんだ。私のコーヒーを飲んだ人たちは、こんな体験をしていたんだな。

 

 目を開けると、思わず笑みがこぼれた。

 

「これが、これがシェリー・ブレンドの魔法なんですね」

 

 初めての体験。まだ胸が高まっている。

 

「ど、どんな味がしたんですか?」

 

 私は今体験したことを素直に言葉にしてみた。私が今見た光のことを伝えながら、もう一つある想いが湧いてきた。これは靖雄さんに素直に話すべきだろう。

 

「これはどうしようかな、言うべきかな」

 

 少しもったいぶりながら、バックヤードへと向かう。