「もしよろしければ、一度シェリー・ブレンドを淹れてみませんか?」
私の賭けとは、この靖雄さんにシェリー・ブレンドの魔法が使えるかどうかを試してみることである。これは単なる直感。私は今まで人に明け渡したことがないこのカウンターの内側を彼に譲る。
靖雄さん、コーヒー通だけあってなかなか手際の良いしぐさでコーヒーを淹れていく。そうしてシェリー・ブレンドができあがった。
「おまたせしました。シェリー・ブレンドです」
なかなか様になっているな。どれどれ、早速その香りを楽しむ。ん、いつも私が淹れているものとは少し違う気がする。これは期待できるかも。しっかりと味を確認する。私が自分で淹れたものとは少し風味が違う気がする。おいしい、けれど何かが足りない。残念ながら魔法というものを体験するほどの味ではない。
これは西脇さんが淹れたものと同じような味だ。やはりあの人のところに通っているだけはあるな。
「うん、おいしい。さすが、西脇さんのところに通っているだけありますね。あの人と同じような味がします」
「やはりダメでしたか。私はマスターのような神の手を持っていないってことか」
靖雄さん、落胆の表情を浮かべている。