第120話 マスター その15 | 【小説】Cafe Shelly next

【小説】Cafe Shelly next

喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

「もしよろしければ、一度シェリー・ブレンドを淹れてみませんか?」

 

 私の賭けとは、この靖雄さんにシェリー・ブレンドの魔法が使えるかどうかを試してみることである。これは単なる直感。私は今まで人に明け渡したことがないこのカウンターの内側を彼に譲る。

 

 靖雄さん、コーヒー通だけあってなかなか手際の良いしぐさでコーヒーを淹れていく。そうしてシェリー・ブレンドができあがった。

 

「おまたせしました。シェリー・ブレンドです」

 

 なかなか様になっているな。どれどれ、早速その香りを楽しむ。ん、いつも私が淹れているものとは少し違う気がする。これは期待できるかも。しっかりと味を確認する。私が自分で淹れたものとは少し風味が違う気がする。おいしい、けれど何かが足りない。残念ながら魔法というものを体験するほどの味ではない。

 

 これは西脇さんが淹れたものと同じような味だ。やはりあの人のところに通っているだけはあるな。

 

「うん、おいしい。さすが、西脇さんのところに通っているだけありますね。あの人と同じような味がします」

 

「やはりダメでしたか。私はマスターのような神の手を持っていないってことか」

 

 靖雄さん、落胆の表情を浮かべている。