第120話 マスター その14 | 【小説】Cafe Shelly next

【小説】Cafe Shelly next

喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

「お味はいかがでしたか?」

 

「いや、不思議な味ですね。これ、西脇さんの所の豆を使っているのでしょう?何度もこの豆でコーヒーを味わったのに、こんなに味に変化が出るなんて」
 

「どんな変化だったのですか?」

 

「最初はいつもの西脇さんのコーヒーと同じ味だったんです。ところが突然、まったく違うコーヒーを飲んでいる感覚に襲われました。その味がまた、私にぴったりの味だったんです。今を上回る味、それが私に心地よさを与えてくれました」

 

 そこから話がはずんだ。今回のお客様、靖雄さんはフリーのルポライター。しかし、別の生き方を探っていることに気づいたようだ。靖雄さんは私を「神の手を持つ人」と言ってくれた。神の手なんて言われると気恥ずかしいが、シェリー・ブレンドの魔法は私でなければ使えないのは確かである。

 

 話の流れで、私自身にシェリー・ブレンドの魔法が効かないことを伝えた。ここで一つ、賭けをしてみたいとひらめいた。

 

「そういえば靖雄さんは西脇さんのところに通っているっておっしゃっていましたよね。ということはかなりのコーヒー通だとお見受けしましたが」

 

「まぁ、コーヒーについてはかなりこだわりを持っているのは確かです」