第120話 マスター その13 | 【小説】Cafe Shelly next

【小説】Cafe Shelly next

喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

 そうやって悩んでいる時に、一人のお客様がカフェ・シェリーへと足を運んでくれた。

 

「こんにちは、今日はマスターを尋ねてきました」
 

「それは光栄ですね。ありがとうございます」

 

 一瞬ドキッとした。私を尋ねてきた、ということで私が小説「マスター」の作者だとバレてやってきたのかと思ってしまった。しかしそれは杞憂であった。

 

「実は私、西脇さんのところによく通っていまして。そこでマスターのコーヒーのことを聞いてきたんです。なんでもすごい味を出すとか。でも、具体的にどんな味なのか教えてくれないんですよ。飲んでからのお楽しみということで。それで今日ここにやってきたんです」

 

 なるほど、私のコーヒーの師匠でもある西脇さんからシェリー・ブレンドのことを聞いてきたのか。

 

「ははは、西脇さんも意地悪な人だな。でも、たしかに西脇さんの焙煎した豆で淹れるコーヒー、シェリー・ブレンドは一言では言えない味だとは思います」

 

「じゃぁ、早速そのシェリー・ブレンドをいただけますか?」
 

「かしこまりました」

 

 私はいつものようにシェリー・ブレンドを淹れる。

 

「おまたせしました。シェリー・ブレンドです」

 

 さて、この人はどんな味を体験するのだろう。