これが作家のスランプというやつか。今までそんなこと感じたこともなかったのに。急に不安が襲ってきた。さらに、書けない日が続いたせいで、そのノルマが徐々に増えてくる。こんなことが半月も続いてしまった。
「マスター、なんか最近元気が無いようだけど。なにかあったの?」
常連客の加藤さんからそんなことを言われるまでになってしまった。加藤さんだけではない、羽賀さんや他の常連客からも同じような言葉をかけられる。まさか、小説の新作が書けないからとは言えない。いや、もうここで実は私があの小説「マスター」の作者だとばらしてしまおうかとも考えた。
けれど、今のこの生活を壊すことになりかねない。私はこの喫茶店カフェ・シェリーはお客様がゆっくりと過ごすための空間としておきたいという気持ちがある。もし私が小説「マスター」の作者だとわかると、私を目的として訪れるお客さんが増えてしまうだろう。そうすると、せっかく安らぎを求めてきたお客様の邪魔をしてしまうことになる。
こんなとき、シェリー・ブレンドの魔法が私にも効果があれば。だれか、私以外の人がこの魔法を使えないものか。
やはり、一人で解決するしかないのか。さて、どうするかな。