第118話 父と子と その23 | 【小説】Cafe Shelly next

【小説】Cafe Shelly next

喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

 私の勢いに負けたのか、元妻は電話をし始めた。当然、相手は再婚しようとする相手だろう。その間、私はヒロトと一緒にソファに座り、話を始めた。

 

「ヒロト、お前は将来どんな大人になりたいと思っているかな?」

 

「ボク、パパみたいな大人になりたい。マラソンが早くて、お仕事もできて、そしてやさしくて」

 

 なんだか泣けてくる。こんな私でも憧れてくれるのか。今までの人生、ヒロトと向き合う時間というのはそんなには多くなかった。その時間の中で私の良い面しか見えていないんだろう。私もヒロトの前では、良い父親しか演じていなかったからな。

 

「いいか、ヒロトには大きな役目があるんだ」

 

「どんな?」

 

「それはね、ママを守ってもらうという役目だ。残念ながらそれはもうパパにはできない。だから、パパの代わりになってママを守って欲しい。わかるか?」

 

 だが、その言葉でヒロトは下を向いてしまった。

 

「どうした?」

 

「だって、ママはボクのこといらないって」

 

「えっ!?」

 

 その言葉には驚いた。ひょっとしてあいつ、そんなことをヒロトに言ったのか?

 

「そんなことはないだろう。ママがそんなこと言ったのか?」

 

 黙り込むヒロト。一体なにがあったんだ?とても気になる。