私の勢いに負けたのか、元妻は電話をし始めた。当然、相手は再婚しようとする相手だろう。その間、私はヒロトと一緒にソファに座り、話を始めた。
「ヒロト、お前は将来どんな大人になりたいと思っているかな?」
「ボク、パパみたいな大人になりたい。マラソンが早くて、お仕事もできて、そしてやさしくて」
なんだか泣けてくる。こんな私でも憧れてくれるのか。今までの人生、ヒロトと向き合う時間というのはそんなには多くなかった。その時間の中で私の良い面しか見えていないんだろう。私もヒロトの前では、良い父親しか演じていなかったからな。
「いいか、ヒロトには大きな役目があるんだ」
「どんな?」
「それはね、ママを守ってもらうという役目だ。残念ながらそれはもうパパにはできない。だから、パパの代わりになってママを守って欲しい。わかるか?」
だが、その言葉でヒロトは下を向いてしまった。
「どうした?」
「だって、ママはボクのこといらないって」
「えっ!?」
その言葉には驚いた。ひょっとしてあいつ、そんなことをヒロトに言ったのか?
「そんなことはないだろう。ママがそんなこと言ったのか?」
黙り込むヒロト。一体なにがあったんだ?とても気になる。