そもそも私は、元妻の気持ちをわかってあげようとしていただろうか。そして息子のヒロトの気持ち、これを汲み取ってあげようとしているだろうか。
力強い男に育ってほしい。これは父親のエゴかもしれない。自分の思いを押し付けるのではなく、相手の言葉をしっかりと聴く。今度ヒロトと面会をしたときには、これをやらないといけないな。
「今度はいかがでしたか?」
その言葉で我に返った。
「はい、おかげさまで自分に足りないところに気づきました。私は今まで一方的に父親としての思いを押し付けすぎていました。もっと奥の深い思い、これをしっかり聴くことをしないといけない。今度息子と面会をしたときに、それをやろうと思います」
「本当に今度でいいのですか?」
「えっ、どういうことですか?」
「その、今度というときがいつ来るのか。確実に来るのか。ひょっとしたら永遠に来ないかもしれませんよ」
「そ、そんな。脅さないでくださいよ」
「いえ、実はこれは脅しじゃないんです。私の知っている人にあなたと似たような境遇の方がいまして。毎月お子さんと面会をするはずだったのが、相手の都合で延び延びにされてしまい、ついには連絡すら来なくなってしまったんです」