「私は子どもを強い子に育てたい。けれど、妻はどうだったんだろう。そしてヒロトはどう思っているんだろう…」
「それを確かめることも必要ではないでしょうか。ひょっとしたら元奥様は、あなたが考えている方向とは違うように育てたいのかもしれない。可哀想なのはその間にいるお子さんですよ」
「そうですね。父親の一方的な思いで育てるのは危険かもしれませんね。でも、どうやってそれを確かめればいいのか…」
「その答えを、シェリー・ブレンドに聞いてみるといいですよ」
「えっ、このコーヒーに?」
「はい、シェリー・ブレンドは飲んだ人が今欲しがっているものを味として伝えてくれます。もうその答えはあなたの中にありますから。それに気づかせてくれるのか、このシェリー・ブレンドの魔法なんです」
私は少し覚めてしまったコーヒーカップを、再び両手で包み込んだ。このコーヒーが私を救ってくれるかもしれない。その期待を込めて、両手で包み込んだままコーヒーを口元へと運んだ。
さっきよりも冷めてしまったコーヒー。だが、先ほどの男らしい味わいよりも、さらに深いコクが感じられる。深み、か。もっと相手の心の奥の、深いところを知らないと話は進まないな。