第118話 父と子と その16 | 【小説】Cafe Shelly next

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喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

「でも、奥さんとはうまくいっているんでしょう?どうすればそうなれるんですか?」

 

 これは素朴な疑問だ。性格が正反対な上に、年齢差まであるわけだから。

 

「同じ志があるから、かな」

 

「同じ志?どんな志なんですか?」

 

「それは、このお店を通じて人の笑顔をつくり出すというものです。私はシェリー・ブレンドを通して。妻は自分の焼いたクッキーを通して。このお店に来た人をどうやって笑顔にしていくのかを常に考えています」

 

 なるほど、それで納得できた。この人と話をしていると、なんだか気持ちが軽くなる感じがしていた。それはこの人が常に笑顔で接してくれているから。だから私も次第に笑顔になれるんだ。

 

「我が家には同じ志というのがなかった。私は私、妻は妻、そんな感じで生きてきたから、こうなっちゃったんですね」

 

「おそらく、多くのご家庭がそうじゃないかと思います。けれど、お子さんがいらっしゃれば、お子さんを通じて志を一つにすることができる場合も多いんじゃないでしょうか。子どもをどのように育てたいか、これが同じ志になっていく場合も多いですよね」

 

 そう言われるとそうだな。けれど、そこを十分に元妻と話し合わなかったことが私の問題点なのだ。