「その方は今、どうなっているんですか?お子さんとは会えていないのですか?」
「はい、残念ながら。どうやら向こう側になんらかの出来事があったのでしょう。元奥さんの実家に連絡をしてもつながらない状況だということです。結局何があったか分からずじまいで」
そ、そんな。もしヒロトにそんな事が起きたら。私は後悔しかできなくなるかもしれない。そんなのは嫌だ。
「でも、こちらから連絡をするのは…」
「調停で禁じられているのですか?」
「そういうわけではないのですが。なんだか気が引けてしまって。でも、行動を起こさないと何も始まりませんよね」
「そう思います」
善は急げ。私はスマホを取り出し、元妻に電話をかけようとした。その時、信じられないことが起きた。
「電話だ。あいつからだ…」
なんと、元妻の名前がそこに表示されている。電話は呼び出し音を鳴らしている。カウンターにいる彼を見る。彼は黙ってうなずく。意を決して電話に出る。
「もしもし」
「あ、私。今日は突然ごめんなさい。今ちょっといいかしら?」
「なんだい?」
「実はヒロトがどうしてもあなたに会いたいってごねてるの。それで暴れだしちゃって、手に負えなくなったのよ。助けてくれる?」