「この人と何か関係あるの?」
「うん、ちょっとね。なんとなくまた会いたいなって思って」
あらためて名刺を見る。マイさんっていうんだ。でも、どうしてあのおねえさんに惹かれたんだろう。なんか不思議な感じがする。
そうして放課後、咲良と一緒に街へと出かけた。
「確かこの通りだ」
「あ、私この通り好きなのよ」
咲良は隣ではしゃいでいる。でも、その気持ちもよく分かる。カフェ・シェリーのある通りは街なかと駅の間にある路地を入ったところ。パステル色のタイルで敷き詰められ、両側にはいろんなお店が並んでいる。なんとなく気持ちが弾む場所だな。
「あ、あったあった。これでしょ」
咲良が先にお店を見つけてくれた。というより、お店の看板を見つけてくれた。黒板の看板にはメニュー以外にこんな言葉が書かれてあった。
「明るい望みを持てば明るい人生が訪れますよ」
明るい望みかぁ。思えば私には暗い人生しかない。そもそも双子のかなえの存在が、私の人生を暗くしているんだ。美人で才能があって成績優秀で。みんなかなえの方ばかり見ているんだから。私には誰も振り向いてなんかくれない。
「早く行こっ」
咲良は軽い足取りでビルの二階へと上がっていった。