第99話 望みのままに その14 | 【小説】Cafe Shelly next

【小説】Cafe Shelly next

喫茶店、Cafe Shelly。
ここで出される魔法のコーヒー、シェリー・ブレンド。
このコーヒーを飲んだ人は、今自分が欲しいと思っているものの味がする。
このコーヒーを飲むことにより、人生の転機が訪れる人がたくさんいる。

「この人と何か関係あるの?」

 

「うん、ちょっとね。なんとなくまた会いたいなって思って」

 

 あらためて名刺を見る。マイさんっていうんだ。でも、どうしてあのおねえさんに惹かれたんだろう。なんか不思議な感じがする。

 

 そうして放課後、咲良と一緒に街へと出かけた。

 

「確かこの通りだ」

 

「あ、私この通り好きなのよ」

 

 咲良は隣ではしゃいでいる。でも、その気持ちもよく分かる。カフェ・シェリーのある通りは街なかと駅の間にある路地を入ったところ。パステル色のタイルで敷き詰められ、両側にはいろんなお店が並んでいる。なんとなく気持ちが弾む場所だな。

 

「あ、あったあった。これでしょ」

 

 咲良が先にお店を見つけてくれた。というより、お店の看板を見つけてくれた。黒板の看板にはメニュー以外にこんな言葉が書かれてあった。

 

「明るい望みを持てば明るい人生が訪れますよ」

 

 明るい望みかぁ。思えば私には暗い人生しかない。そもそも双子のかなえの存在が、私の人生を暗くしているんだ。美人で才能があって成績優秀で。みんなかなえの方ばかり見ているんだから。私には誰も振り向いてなんかくれない。

 

「早く行こっ」

 

 咲良は軽い足取りでビルの二階へと上がっていった。